4月にマレーシア・ニライで開催された『2026ワールドカップ第3戦』では、オムニアムで金メダルを獲得。その後、5月に行われた『2026ジャパントラックカップⅠ/Ⅱ』でも出場した全種目で表彰台に上るなど、競輪養成所を卒業してから勢いが止まらない兒島直樹。目前に控える『2026全日本選手権トラック』でも活躍が期待される。

10月の『世界選手権』や2028年の『ロサンゼルスオリンピック』を狙い、国内での出場枠争いが徐々に激しくなる中、兒島はいま何を思うのか。『2026ワールドカップ第3戦』金メダル獲得後に実施したインタビューをお届けする。

自身初のオムニアム金メダル

Q:『ワールドカップ第3戦』でオムニアム優勝。自身初となるワールドカップでのオムニアム金メダル獲得、おめでとうございます。今村駿介は第1戦で金、窪木一茂は第2戦で銀と、世界トップで戦うオムニアムの選手層が厚くなってきましたね。

ありがとうございます。個人的にはオムニアムが1番出たいと思っている種目ですし、オリンピックでも出場を目指しているので嬉しかったです。

Q:現地で見ていて、もっと喜んだリアクションをしても良いのでは?と思ってしまいました。

とても嬉しかったのですが、そんなに顔に出てなかったですか?(笑)
何というか……「優勝した現実味がない」ってみんながよく言う気持ちが少し分かった気がします。

メダルをもらったけど「本当に自分が優勝したのかな?」といった感覚です。信じきれていないから、喜びきれない部分があったのかもしれないです。今になってだんだんと実感がわいてきました。

Q:レースの動画は、ご自身で見返しましたか?(※本インタビュー時は、2026ワールドカップ第3戦の開催中に実施)

まだですね。昨日(レースの1日後)は早く寝たかったこともあり、午前中はロードに行って、昼からは洗濯して会場に来る予定だったので、全く時間がありませんでした。帰って時間があれば、見返すかもしれないです。

Q:家族に連絡はされましたか?

家族のLINEグループでは、ちょっと盛り上がっていましたね。でも「獲ったぞー!」というほどの盛り上がりではなかったです(笑)。

競輪選手養成所で得た余裕

Q:3月までの約10カ月間を養成所でトレーニングしたことで、競技の走りにも変化は感じていますか?

ポイントレース最後の3周目でも、あれだけもがけるという点で身体の変化を感じています。

おそらく自分のトップスピードが上がったからだと思うのですが、周りを見る余裕が生まれて、周りのスピードが少し遅くなったと感じるようになりました。

Q:では中距離選手として、競輪選手養成所を経て再び中距離選手を続けるという道は、兒島選手の中では結構おすすめですか?

僕の場合は、ずっとエンデュランス(持久力)を重視して上げてきて、でもそこからさらに上を目指すとなると必要になるのはトルク(物体を回転させる力、すなわち回転軸にかかる力のモーメント(ねじりの強さ)のこと)だと思いました。

トレーニングの理論を考えても、有酸素能力を上げるためには、短距離的な無酸素の能力も上げていかないと、さらに高めるのは難しい。交互にやっていく必要があります。

タイミング的に今は短距離的なトレーニングを積めば、さらに上の有酸素的なエンデュランスが身につくのかなと思って、このタイミングで養成所に入ったのもありました。

Q:同じ中長距離で活躍する選手の中には、養成所同期の松田祥位選手もいます。松田選手は養成所に入って、とても身体が大きくなったように思いますが、兒島選手はそこまで見た目は変わらなかった印象です。

去年の10月に世界選手権を控えていたこともあって、それまでの期間は長距離的な練習に重点を置いて、ウエイトトレーニングなどもある程度のレベルに抑えてやっていました。

その後は、養成所期間も半分を切ったので、競輪選手になるためのトレーニングをしようと気持ちも切り替えて、自主トレでもウエイトをやり始めました。その結果、競走訓練でも少しずつ勝てるようになりました。

世界選手権以降は、しっかり養成所のカリキュラムに沿ってトレーニングしたことが、最終的に卒業してからの結果に表れたのではないかなと思っています。

(松田)祥位さんの場合は、最初からずっとウエイトなどをやり続けていたので、重量も上げられるようになったし、身体も大きくなったんだと思います。僕の場合は、そこを切り替えるタイミングが遅かったので、身体のサイズにはあまり影響しなかったかもしれません。

Q:ではこれから、もっと身体を大きくしていきたいとは思っているのでしょうか?

身体を大きくしたいというよりは、より重いウエイトを扱えるようにはなりたいと思っています。そうすれば、最終的にエンデュランスの方に活きてくると感じているので。

ロードでも対応できるように

Q:養成所で短距離的な能力を伸ばした分、中長距離では昔よりも疲れやすくなるといったことはないですか?

あまり感じませんでした。有酸素系も以前と同じくらいの能力はキープできていると思います。でもロードレースなど、より長距離になると変わってくるかもしれません。

Q:マディソンだと交代で休みながら走れたりしますしね。50㎞くらいだとギリギリ耐えられるという感覚でしょうか?

自分でも走れているのが不思議に思えるんです(笑)。

でも養成所に入っていたから、長距離は走れないという言い訳はしたくなかったです。ここに来るまでしっかりとエンデュランスの能力を上げる努力を積んできたので、その成果が出たのかと思います。あとは競技時間が1時間以内に収まっていることも大きいですね。

Q:ワールドカップ後は国内ロードレースも控えていますよね。

帰って1週間後にはもう『ツール・ド・熊野』です。そこに向けてしっかり調整していきたいと思います。

※インタビュー後に開催されたツール・ド・熊野で、兒島は無事完走

最終的に狙うのはオムニアム

Q:今後、『全日本選手権トラック』『愛知・名古屋アジア競技大会』や『世界選手権』も控えています。昨年の世界選手権で4位に終わったポイントレース、ワールドカップ第3戦で優勝したオムニアム、どの種目で出場を狙っていきますか?

もちろん両方出たいと思っているんですけれど、オムニアムは窪木さんや今村さんもいるので、絶対に出たいかと言われると今年じゃなくても、とは思っています。

2026年は、オムニアム以外の種目で選ばれたら、その種目でパフォーマンスを発揮したいですし、もしオムニアムで選ばれたらオムニアムで頑張りたいです。

僕の中では『ロサンゼルス2028オリンピック』に向けて、2027年からが1番勝負の年だと思っています。そこに向けてどんどん力を上げていきたいと思っています。

Q:そこを見据えたタイミングで、競輪選手になったのもありますもんね。

そうですね。1年単位で見るのではなくて、オリンピックまでの長い道のりで考えて取り組んでいきたいです。

僕が狙っているのはオムニアムです。今のナショナルチームは世界のトップを狙える選手の層が厚く、ハイレベルな出場枠争いになりそうですが、これからもコンスタントに結果を出し続けられるよう頑張りたいと思います。

全日本トラックでの活躍もお見逃しなく

主要大会で素晴らしい結果を出しているなかでも、自分自身と向き合いながら、目標達成のためにいま何をするべきなのかを冷静に判断できているのが兒島直樹の強さの根幹なのかもしれない。

6月12日(金)〜15日(月)の4日間、伊豆ベロドロームで行われる『2026全日本自転車競技選手権大会トラック』で、兒島は1kmTT、個人パシュート、ポイントレース、エリミネーション、マディソン、オムニアム、チームパシュートと多くの種目に出場予定。中長距離のなかで最も成長著しいその走りをぜひ現地で観戦いただきたい。

終盤まで大接戦となったオムニアムを制したのは兒島直樹/『ジャパントラックカップⅠ』

兒島直樹 自身初となるオムニアム金獲得/『2026ワールドカップ第3戦』マレーシア・ニライ