2026年5月、マレーシア自転車競技連盟(MNCF/PKBM)は、ニライにあるナショナル・ベロドローム(国立自転車競技場)の名称を「アジズルハスニ・ベロドローム(Velodrom Azizulhasni)」に改称する動議を承認。マレーシアの国営通信社であるベルナマ通信が報じた。

国際レースの常連、ニライのベロドロームが改称へ

マレーシア・ニライのベロドロームは、同国を代表する国立自転車競技場。2026年4月にも『2026ワールドカップ第3戦』が行われたばかりの、国際レースが行われることも多い会場だ。

そして今回、5月3日に開催されたマレーシア自転車競技連盟の年次総会において、このナショナルベロドロームの名称を「アジズルハスニ・ベロドローム(Velodrom Azizulhasni)」に変更することが、加盟メンバーの全会一致で合意された。

アジズルハスニ・アワンとは?

アジズルハスニ・アワンは1988年生まれ、2026年現在38歳の自転車競技選手。2017年の世界選手権ケイリン優勝、『東京2020オリンピック』ケイリン銀メダルの実績を持つ、男子短距離におけるアジアのトップ選手である。言うまでもなくマレーシアを代表するスーパースターだ。

もともと『パリ2024オリンピック』での引退を表明していたものの、2026年のワールドカップシリーズで久しぶりに「トップランクの国際大会」に出場。200mFTT世界記録保持者マシュー・リチャードソンを抑えケイリンで優勝するなど、変わらぬ強さを見せてくれた。2026年5月には伊豆で開催された『ジャパントラックカップ』にも出場している。

ワールドカップの際には「2026年9~10月のアジア競技大会(名古屋)でキャリアを終えるつもりですが、調子が良ければ世界選手権までもあるかもしれません」とコメント。そのキャリアの行方にも注目が集まっている。

クリアしなければならない「2つの問題」

「マレーシアにおいてアワンがどれだけ存在感のある選手か」が感じられる今回のニュースだが、実は改称までには「クリアしなければならない、2つの問題」が立ち塞がっている。

1:実現は2年先かも?行政・手続き上の壁

今回、マレーシア自転車競技連盟での合意は取れたものの、競技場の所有者である政府の承認はこれから得る必要がある。本件は青年スポーツ省に提出されたのち、承認されれば改称が可能となる。

また、建物の名称変更には物流や手続き上の課題が多く、「実現には1年から2年かかる可能性がある」とマレーシア自転車競技連盟会長ダトゥ・アマルジット・シン・ギル氏は述べている。

2:光栄な悩み?すでに同名の施設が存在

これは「愛されているからこそ」の問題となるが、実はアワンの故郷であるマレーシア・トレンガヌ州ドゥングンには、すでにアワンの名を冠したベロドロームが存在する。なお、こちらは屋外競技場だ。

同じ名前の施設が2つあると、「次の大会はアジズルハスニ・ベロドロームで開催です」と案内された選手がどの競技場に行けば良いかわからなくなる……といったことも発生し得る。そのため、このドゥングンのベロドロームの名前を改称する必要がある、と言及されている。

これもまた、いかに「アワンの影響力が大きいか」が感じられるトピックだ。

「アジズルハスニ・アワン」の名を柱に、マレーシア自転車競技の発展へ

More CADENCEでは2024年のアジア選手権の際、アワンを育てた名コーチである、マレーシアのジョーン・ビーズリー氏にインタビューを行なっている。

ジョーン・ビーズリー氏

その際には、このような「マレーシアの現状」が語られた。

「いかにアワンが活躍して、トラック競技をやりたいと思って興味を持っても、やる場所が無いのです。こういった状況を変えるには多大な時間と労力が必要になるため、難しいと言わざるを得ません。

しかし、政府の補助などを受けてロードレースの数を多くしたり、トラック競技の大会を行ったりと努力をしていることは加えておきます」

日本にはアジアをけん引する存在になってもらいたい 世界的名将の言葉/アジア選手権トラック2024

「競輪」というバックボーンがある日本は、屋内自転車競技場こそ少ないものの、全国各地に自転車競技場を行える競輪場がある。そういった点で、マレーシアよりずっと恵まれている環境と言えるだろう。

厳しい環境であるマレーシアの自転車競技界にとって、アワンというスター選手は自転車競技のPR隊長、アイコン的な存在だ。その名を冠する国立競技場ができるということは、今回の改称が単なる「名前の変更」にとどまらず、「ハブ(中心地)としての価値を高め、競技人口を増やすきっかけしたい」という思惑……言ってしまえば「アワンの持つスター性にあやかる」ような側面もあるのではないだろうか。

切磋琢磨しあうアジアの仲間であるマレーシア。その自転車競技界の今後の動向という面でも、「アジズルハスニ・ベロドローム」の誕生を見守っていきたい。

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