自転車トラック競技の2026年シーズン初戦となる『2026ワールドカップ第1戦』が、3月8日に終了した。
オーストラリアで行われた本大会は、出場選手は少なめだったものの(日本からも7選手しか出場していない)、さまざまな切り口から「注目したい選手」が活躍を見せた。
本記事では『2026ワールドカップ第1戦』で表彰台に登った選手から「ぜひ今、知っていただきたい選手」をピックアップして紹介する。
移籍したホープ、グレアム・フリズリー

FRISLIE Graeme Michael
2001年生まれのグレアム・フリズリー。今大会では男子オムニアムで銅メダルを獲得した。
▼レースレポート
生まれはアメリカのモンタナ州だが、育ったのはオーストラリアのビクトリア州。ツール・ド・フランスに触発されてサイクリングクラブに入り、オーストラリアの選手として国際大会に出るまでになった。
2024年には伊豆ベロドロームで開催された『ジャパントラックカップ』に合わせ、来日もしている。

『2024ジャパントラックカップ II』マディソンでのグレアム・フリズリーとカート・イーサー
しかし、2025年ごろからは出身国であるアメリカの選手として活動しているフリズリー。

2025年3月『ネーションズカップ』にアメリカチームとして出場
どのような経緯で移籍が決まったのか不明だが、アメリカにとっては自国開催となる2028年のロサンゼルス・オリンピックが控えている状況。フリズリーの移籍にも、アメリカの「チーム力強化」の意味合いがありそうだ。
2年後に迫ったオリンピックに向け、フリズリーの存在がアメリカにどのような結果をもたらすのか、注目しておきたい。
参考:Graeme Frislie wins men’s AusCycling National Road Series、アメリカ自転車競技連盟選手プロフィールページ、コモンウェルスゲームス選手プロフィールページ
帰ってきた「ポケット・ロケット」アジズルハスニ・アワン

AWANG Mohd Azizulhasni
アジア男子短距離のトップ選手であり「ポケット・ロケットマン」の異名を持つ、マレーシアのアジズルハスニ・アワン。
もともと2024年パリオリンピックでの引退を表明していたものの、本大会で久しぶりに「トップランクの国際大会」に出場。マシュー・リチャードソンを抑えケイリンで優勝するなど、変わらぬ強さを見せてくれた。スプリントでは忍者のような動きで相手を抜き去り銅メダルも獲得している。

われても末にアワンとぞ思ふ
レース後のインタビューでは
「次の大会はアジア選手権。そして香港のワールドカップ第2戦はスキップしてマレーシアのワールドカップ第3戦に出場する予定です。その後にアジア競技大会(名古屋)。そこでキャリアを終えるつもりですが、調子が良ければ世界選手権までもあるかもしれません」
とコメント。
『アジア競技大会』は、4年に1度行われる「アジア版オリンピック」。メイン会場は名古屋だが、自転車トラック競技は会場の都合上、静岡県・伊豆ベロドロームで行われる。
アワンが日本で魅せるレースをぜひ楽しみにしていただきたい。チケットはすでに販売中だ。
ちなみに、アワンのレース後コメントでは、下記のようなことにも言及してくれている。
「日本のスタイルでレースをして佐藤慎太郎さんのように『追い込み』をしました。日本の競輪も走りたいので、ラブコールをいつでも待っていますよ!」
23歳差のチームでメダル獲得、クリスティーン・パーキンス

一番右がクリスティーン・パーキンス(PERKINS Kristine)
開催国・オーストラリアのチームスプリントメンバーとして銅メダルを獲得した、クリスティーン・パーキンス。42歳にして世界トップ大会で活躍する彼女は、フィットネスコーチとしての顔も持つ選手だ。
仕上がっている時はこんなふう↓である。すごい。
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そしてパーキンスだけでなく、オーストラリア女子チームスプリントのメンバー構成にも注目したい。
| 名前 | 生年 | 現年齢 | |
| クリスティーン・パーキンス | PERKINS Kristine | 1983年 | 42歳 |
| リリヤ・タタリノフ | TATARINOFF Liliya | 2006年 | 19歳 |
| ソフィー・ワッツ | WATTS Sophie | 2003年 | 22歳 |
最年少のリリヤ・タタリノフ(19歳)とは、なんと23歳差。
この他にもオーストラリア女子短距離勢としては、22歳のアレシア・マケイグも、ケイリンで金メダルを獲得している。

中央:アレシア・マケイグ(McCAIG Alessia)
経験豊富なパーキンスと、最年少のタタリノフ、ビーチスプリントから転向したソフィー・ワッツに、ケイリン優勝のマケイグ。ベテラン選手と、若く才能があり、多様なバックボーンの選手たちが化学反応を起こすことで、オーストラリアチームはますます強くなっていきそうだ。
そして今大会では、クリスティーン・パーキンスの夫、シェーン・パーキンスがスタッフとして参加したこともトピックのひとつ。

なぜか超真顔。
ケイリンで世界チャンピオンになったこともあるレジェンド選手のシェーン・パーキンスは、2021年に選手を引退。しかし今回は、ケイリン種目の先頭誘導員としてレースをサポートした。
短期登録制度で日本の競輪にも出場していた選手なので、ご存知の日本ファンも多いのではないだろうか。

2017年来日時の様子
顔馴染みの選手の近況を知ることができるのも、国際大会の嬉しいポイントのひとつだろう。そんな、パーキンス夫婦とオーストラリア勢が大いに活躍した『2026ワールドカップ第1戦』だった。
脅威となる、中国女子短距離勢
女子短距離種目として3種目が実施された『2026ワールドカップ第1戦』だが、そのすべてで表彰台に上がっているのが中国チーム。特にユアン・リイン(苑丽颖、YUAN Liying)の活躍には目を見張るものがある。
| 種目 | 中国選手の結果 | |
| スプリント | 優勝 | ユアン・リイン(苑丽颖、YUAN Liying) |
| ケイリン | 銅メダル | ユアン・リイン(苑丽颖、YUAN Liying) |
| チームスプリント | 優勝 | ルオ・シュエハン(LUO Xuehuang) ワン・リーファン(WANG Lijuan) ユアン・リイン(苑丽颖、YUAN Liying) |
ユアン・リインは2005年生まれの20歳(2026年現在)。今年2月にエマ・フィヌカン(イギリス)が更新するまで200mFTTの世界記録を保持していた選手で(女子で初めて9秒台を達成した)、今大会でもニュージーランドのエリース・アンドリュース、ドイツのリー ソフィー・フリードリッヒといった「女王」級の選手を下して優勝を勝ち取っている。
今大会ではユアンと同年生まれのルオ・シュエハンも、チームスプリントメンバーとしてメダルを獲得。彼女は2023年のジュニア世界選手権500mタイムトライアルで優勝・同記録の世界記録保持者でもある。中国「2005年世代」の才能が花開きつつある、という現状だ。
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中国勢の持つポテンシャルや、「アジアの仲間であり、ライバルである」という関係性によってもたらされる「切磋琢磨しあえるという恩恵」については、日本のコーチ陣も認めるところ。
身近にいる強い選手たち。彼ら・彼女らにどのように対抗していくかという「日本チームの動き」も合わせ、注目していきたい。
アジア選手権、そして世界選手権へ
次なる大きな焦点は、3月25日からフィリピンで開催される『アジア選手権』。
今大会で強さを見せたアワン(マレーシア)や、底知れぬポテンシャルを見せつけた中国勢、そして彼らを迎え撃つ日本代表。アジアの頂点を懸けた戦いは、ワールドカップ以上に熱いものになるだろう。
今シーズンのロードマップは、10月に中国で開催される『世界選手権』へと続いていく。ロサンゼルスオリンピックまであと2年。「まだ知らない選手」や「懐かしい名前の再起」に一喜一憂できるのは、長く追いかけているファンだけの特権。
今回ピックアップした選手たちが、2年後に表彰台で笑っているのかも?
そんなことを空想しながら、ロサンゼルスに続く戦いに引き続き注目していただきたい。