軽量化に成功した「TCM-3」

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「TCM-4」はゼロからの開発?

Q:先日は、ジェイソン・ニブレット短距離ヘッドコーチが「TCM-3」に実際に乗って確かめるテストが実施されました。なにか課題は見つかりましたでしょうか?

TCM3

間宮:基本的には問題無かったです。ハンドルやホイールなど、「TCM-3」のデビューである今年の世界選手権に向けて改良していきますが、実は我々としては、すでに「TCM-4」を見据えています。

TCM3

Q:??早いですね……

間宮:全然時間がないんです。2027年の世界選手権がオリンピックで使用する機材登録の締め切りと考えているので、あと2年くらいしか時間は残されていない。そう考えると、「TCM-2」を開発した時と同じくらいの状況だと言えます。

神瀬:「TCM-3」開発の過程でいろいろなアイディアが出ましたが、すべてを入れ込めてるわけではないので。それらを盛り込んだものが、「TCM-4」になると思います。

Q:すでに新たな形のイメージができていますか?

神瀬:いえ、全く無いです。開発期間は、多くはないですが2年。その2年間で、できることやアプローチは全然変わってくるはずです。実際、「TCM-1」を作り始めた時に想像していた形は、今の「TCM-3」とは全然違うものでした。「TCM-3」はこれまでのモデルの正統進化版でしたが、「TCM-4」はまったく別系統のものになると思います。

間宮:そうじゃないと面白くないですよね。これまで3つのモデルを作ってきたことで、「絶対にチェーンとギアは左側」と思ってしまったりするのは、最もやってはいけないことだと思っています。本当に自由にやらないと、僕らの存在意義というのはない。ゼロから作り上げる、という気持ちでいます。

“本当のオーダーメイド”とは

Q:具体的に、なにかこうしたいと考えていることはありますか?

間宮:今はテストをする都合上ジェイソンさんに剛性を合わせていますが、それって中長距離女子の選手にとってはすごくオーバースペックだと思うんです。本来的には、そこを選手個々に合わせて作ってあげるのが、本当のオーダーメイドだと思いますね。

Q:たしかに。太田海也選手と女子の中長距離の選手では、求められるものが違いますね。

テストライド中の太田海也

間宮:難しい部分もありますが、短距離用/中距離用といった違いはあるべきだと思っています。そういう意味では、もっと軽くすることはできるはずです。あとは、スキンスーツやヘルメットも開発していきたいですよね。

神瀬:私としては、シートとヤグラ(シートとシートポストを固定する金具)は大きな開発アイテムになるんじゃないかと思っています。背中から流れてきた風と、体で風を受けて股の下から流れてくるところの合流点が、ヤグラが存在してる部分。その部分を改良すれば……

止まることをしらない、開発者たちの想い。
悲願のオリンピックでのメダル獲得までのストーリーは、今後も続いていく。「More CADENCE」では引き続き、このもうひとつの戦いを追っていく予定だ。

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