2025年9月21日から25日にかけて行なわれた、『わたSHIGA輝く国スポ・障スポ 2025』自転車競技会。
結果やレポートについては別記事にてお伝えしたが、5日間にわたり、熱いレースが展開された。
そもそも「国スポ」とは、どのような大会であり、どのような意味を持つなのだろうか?
会場にて、宮崎県代表の監督としてチームを率いた大庭伸也監督に話を伺ったところ、ほかの競技会とは異なる「国スポ」ならではのさまざまな意義を聞くことができた。
国スポとは何か?
「県の代表として出る大会なので、やはりインターハイとかとは違いますよね。県民に応援されて迎える大会なのかなという気はします」
さらにその裏側では、競技力強化に直結する要素もあるという。
「また、“県の強化費”を決める上でも、国体の成績が関わってきます。県の競技強化の根幹といえる大会でもあると思います」
世代を越えたチームが生む成長
国スポは、男子A/男子B/女子という3つのカテゴリで種目が行われ、各種目の上位者にポイントが付与される形式で争われる。
各カテゴリごと出場選手は3人までという制限があるなかで、ポイント比重の大きい団体種目(チームスプリント・チームパシュート)では、エリート/ジュニアの選手がチームを組み出走する。
事前合宿が行われることも多く、そのスペシャルなチーム編成も、競技強化において大きな役割を持つという。
「特に高校生は、エリートの選手に引っ張られてすごく成長してくれます。僕らが常々言ってる*のと同じことを彼ら(エリート選手)が言うことによって、信憑性も増します。これは、県として強化においてすごく大きいと思います」
※大庭監督は、宮崎農業高校でも指導を行なっている
2年後に国スポの開催を控える宮崎県としては、若手選手の育成というのは特に大きな意味を持つ。今回の宮崎代表男子Aには山本哲央選手、岡本勝哉選手が選出されており、男子B・成合悠斗選手も「1kmTTの走り方からDHバーの握り方まで、学ぶことがたくさんありました。本当に良い経験ができていると思います」と語っていた。
山本哲央「高校生たちにアウトプットしなくては」
“生きた教材”である山本哲央選手は、その役割をしっかりと認識したうえでこの大会に臨んでいることも語る。
「自分が高校生だった時、国体で一緒になったプロの選手から教えてもらって、すごく有意義な体験ができました。今回は、自分が高校生たちにアウトプットしていかなくてはいけない立場だ、と考えています。
特に今は、トレーニングにしても走り方にしても、とにかくたくさんの情報がある。その中で、ナショナルチームに入ってる人間やプロの選手がしっかりと発信して伝えていくことで、その県にとっても、そして日本の自転車競技自体の発展にもつながっていくと思います」
世代を越えた交流が、選手個々の成長だけでなく県全体の競技力向上へとつながっていく。
もちろん、競技で結果を残すことも重要。「競技の方では自分はポイントを得られず、チームのみんなには本当に申し訳ないです……」と悔しそうな表情を浮かべている山本選手の姿も印象的であった。
レガシーを築く大会
また大庭監督は、国スポは選手育成だけでなく「レガシー(遺産)」も残していく大会だと語る
「宮崎県としては、選手だけじゃなく、審判員の育成にも力をいれています。国体を開催するには運営力が必要。大会運営ができるような人材を育てることで、将来の全国大会誘致にもつながっていきます。また、自転車競技場の建設(ひなたベロドローム宮崎)も建設中。これらは、国体を開催するというタイミングだからこそできることだと思います」
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「もちろん、開催時には多くの方に訪れていただけることになるので、宮崎の魅力を知ってもらえるというチャンスでもある。そういう意味でも、県民全体で大会を盛り上げる動きができるのが、国体の特徴であり意義だといえると思います」
「未来を引き上げる大会」として
選手、審判、施設、そして地域に住む人々。そのすべてをつなぎながら前進を続けていく。
大庭監督の言葉から浮かび上がるのは、国スポが単なる競技会ではなく、未来を引き上げる大会であるということ。
これは自転車競技に限らず、多くの競技に共通していえることだろう。
2026年は青森県(『青の煌めきあおもり国スポ・障スポ』)、2027年は宮崎県(『日本のひなた宮崎国スポ・障スポ』)で開催を予定。
競技の結果だけでなく、未来へつながっていくストーリーにも注目していきたい。