京産大・秋田監督「すべての走りにストーリーが」
左:川口直己監督(明星大学)、右:秋田謙監督(京都産業大学)
続いて、京都産業大学体育会 自転車競技部の秋田謙監督と、明星大学体育会 自転車競技部の川口直己監督。ちょっとした対談のような形式で話を聞いた。
Q:毎年インターハイを視察されているかと思いますが、特に印象的だった選手はいますか?
川口氏:やっぱり今も活躍している選手、たとえば今村(駿介)選手とか兒島(直樹)選手とかは「違うな」と思いましたね。オーラがあるというか。もちろん当時も注目して見ていましたが、それを上回ってくるような走りをしていたように感じます。
Q:そういった未来のスターを探すのも、インターハイの楽しみ方のひとつですよね。
川口氏:漠然と見るよりは、誰が強いのか、誰がスター候補なのかを少し調べて見ると、より楽しめると思います。そういう選手たちの成長を見ていると、やがてオリンピックに繋がっていったりする。見ている側にもストーリーが生まれると、どんどん“推せる”ようになると思いますね。
秋田氏:言いたいことを全部言ってくれました(笑)。
Q:本当ですか(笑)?
秋田氏:監督として注目選手はもちろん事前にリサーチしているのですが、私はその中でも「いつから自転車をやっているのか」を調べるようにしています。個人的には、高校から自転車競技を始めた、という選手の走りを見るのが好きなんです。
Q:伸び代を感じる、という意味でしょうか?
秋田氏:いえ、自転車競技のルールやペダルの付け方もわからない状態から、たった2年半という短い期間でこんな選手になることができるんだ、と思えるからです。きっと初めてバンクに乗った時は怖かったんだろうなとか、勝手に背景やストーリーを想像して、「人間ってすごいな」って感動しています。
Q:川口監督がおっしゃるストーリー性にも通じる見方ですね。
秋田氏:先生たちの情熱や指導、本人の努力、そういったさまざまなストーリーが詰め込まれた芸術作品だ、と思います。すべての種目が、すべての走りが、2年半のストーリーで生まれた作品。「そりゃ泣くわ」って思います(笑)。
Q:では、監督の立場で「欲しい」と思うのはどんな選手でしょうか?
秋田氏:私は“ゴール後”に注目しています。たとえば、ゴールした直後にわざと選手に聞こえるように拍手をして、そのまま通り過ぎてしまうのか、少し会釈をするのか。そういう人間性みたいな部分は大事だと思いますね。
川口:わかります。自分たちの大学に入ってくれたとして、直接見ることができるのはわずか4年間。その短い期間で伸びるには、素直さだったり、人間性が重要になってくると思います。
秋田:ヘルメットキャップの返し方も、ぽーんと投げて返すのではなく、しっかりと手渡しで返しているか、とかね。私たちの立場は、結果や走りを見る、というのは大前提。それ以外の所作にも、大事な部分が出てくると思います。