2025年7月から8月にかけて中国5県で開催される『全国高等学校総合体育大会 中国総体 2025』、通称インターハイ。
自転車競技は、トラック競技が7月31日(木曜日)~8月2日(土)に鳥取県倉吉市で、ロードレースが8月3日(日)に鳥取県北栄町にて行われる。
“高校生活の集大成”ともいえるこの大会。見どころや楽しみ方を、自身もこの大会で活躍し、現在はトラック競技ナショナルチーム ジュニアコーチを務める上野みなみ氏に話を聞いた。
「一番の目標」であるインターハイ
Q:ご自身の経験も踏まえて、高校生にとってインターハイとはどういう意味を持つ大会だと思いますか?
一言で言えば、「一番の目標」とされている大会、だと思います。高校生活の集大成であり、先生方もいちばん力を入れてくる大会ですね。
それから、進路が大きく関わってくる大会でもあります。3月に『選抜(全国高等学校選抜自転車競技大会)』も行われますが、進路に関していえば選抜大会と同じくらい重要な大会です。大学の監督たちも見に来ますし、選手もアピールできる場ですね。
Q:このインターハイという大会の存在が、選手の飛躍や進化のきっかけになることもあるのでしょうか?
そうですね。ジュニア世代の選手たちは、どのタイミングで伸びるか分かりません。去年は目立たなかった選手が1年で一気に伸びたり、選抜からの約5ヶ月で急成長することもあります。体の成長期と競技力の伸びが重なる時期なので、インターハイはそういった変化を見られる大会でもありますね。
Q:近年で、選手のレベルの変化を感じる部分はありますか?
私がしっかりと携わらせてもらうようになってから3年ほどですが、例えばハロン(助走ありの200mタイムトライアル)に関しては、全体的にタイムは上がってきているように感じます。
ただ、より強く感じるのは、上位の選手たちのレベルの高さ。インターハイという最高峰のレベルであっても大きな差があって、全体が底上げされたというよりは、目立つ選手がより高いレベルで走れている、という印象が強いかもしれません。
“金の卵”の見つけ方
Q:ナショナルチームのジュニアコーチという立場の目線でいうと、ジュニア選手を見極める際はどのような点に注目されていますか?
まだ私自身も経験は浅いので手探りではありますが、体つきやフィジカルに加えペダリングの綺麗さはよく見ます。自転車の進み方も重要です。ナショナルチームの中距離コーチであるダニエル(・ギジガー)も、ペダリングにフォーカスして見ているように感じますね。
それから、特に上位の選手においては勝敗ではなく、考えてレースを走っているかの部分は重要視しています。たとえば現・ジュニア強化指定の久貝一心選手(沖縄・北中城高等学校)は、去年のインターハイでは2位(男子ケイリン)でした。でも、走りを見ていてすごく考えて動いてるなと感じたので、声をかけました。
Q:“原石”という意味では、「走り方がムチャクチャなのに強い」選手のほうが伸びしろを感じるのではないかとも思いますが、そういうわけではないのですね。
難しいところではあって、本能的に動けている選手に技術的なサポートや考える力が加わることでさらに強くなる、という可能性ももちろんあります。ただ、私自身もどちらかというと本能で走るタイプだったと思っているのですが、「考える力があるかどうか」というのは重要だと思います。それはその選手と話をして、どういう性格か、どういうタイプかを見極める必要があるのかなと思います。
Q:インターハイで、ナショナルチームのコーチから声をかけられる。漫画みたいな話ですよね。
そうですね(笑)。本人はそんなことを考えて走っているわけではないと思うので、「えっ」てなると思います。大人に振り回されてしまうような形も本意ではないので、「ごめんね、急に話しかけて」ってひっそりと声をかけに行きます(笑)。