2025年2月21日〜27日の期間に開催された『2025アジア選手権トラック』。日本選手のメダルラッシュに沸いたこの大会の結果が反映されたUCIランキングが、2025年3月4日に発表された。
本記事ではUCIランキングに関するざっくりとした説明とともに、10月に開催予定の『2025世界選手権トラック』に向けた日本チームの「現在地」をお届けする。
UCIランキングって何?

UCI(国際自転車競技連合)の公式戦で成績を残すと、出場選手や出場国には成績に応じた「UCIポイント」が与えられる(成績上位ほどポイントは高い)。「UCIランキング」とは、1年間*に積み上げた「UCIポイント」を選手個人や国別にランキング化したものだ。
※獲得した各UCIポイントの有効期限は1年間。シーズン・年初めに全てがリセットされる訳ではない。

『UCI世界選手権トラック』をはじめとする大きな大会では、このUCIランキングの上位者から出場枠が割り当てられていく。
競技に取り組む選手たちが目標とする世界選手権への出場、そしてその先のアルカンシェルを目指す上で、各選手・各国が常に気にしておかなければならないランキングと言える。
生まれ変わったUCIランキング

世界選手権などを目指す上で重要なUCIランキングは、2025年からその算出方法・活用方法に変更が加えられている。
算出方法の変更点
従来は世界選手権で実施される各種目ごとにUCIランキングが算出されていたが、2025年からは一部の個人種目が「短距離ランキング」・「中長距離ランキング」という新しいランキングに統合されるようになった。
2025年以降のランキングは以下の全5種類。
・短距離ランキング(スプリント・ケイリン)
・チームスプリントランキング
※短距離ランキング:正式には「Sprint Ranking」だが個人種目のスプリントとの混同を防ぐためMore CADENCEでは「短距離ランキング」と記載する。
※1kmTTはランキング廃止に。
・中長距離ランキング(オムニアム・スクラッチ・エリミネーション・ポイントレース)
・チームパシュートランキング
・マディソンランキング
※中長距離ランキング:正式には「Endurance Ranking」だが、「短距離ランキング」同様に、分かりやすくするためMore CADENCEでは「中長距離ランキング」と記載する。
※個人パシュートはランキング廃止に。
個人種目が統合された新しいランキング制度では、対象種目での最高成績が合算されていく仕組み。すなわち、より多くの対象種目でより良い成績を積み上げれば「ランキングUP」に繋がるということ。

例えば「短距離ランキング」において、大陸選手権前に同位の「選手A」と「選手B」がいたとする。
「選手A」は大陸選手権でスプリントのみに出場し優勝。⇒600ポイント獲得
「選手B」はスプリント・ケイリン両種目に出場しどちらも8位でフィニッシュ。⇒660ポイント獲得
この場合、大陸選手権後のランキングで上位になるのは、「選手B」ということになる。
大陸選手権で獲得できるUCIポイント(スプリント・ケイリンの場合)
1位 | 600ポイント |
2位 | 540ポイント |
3位 | 480ポイント |
4位 | 450ポイント |
5位 | 420ポイント |
6位 | 390ポイント |
7位 | 360ポイント |
8位 | 330ポイント |
活用方法の変更点
個人種目の成績が合算された「短距離ランキング」と「中長距離ランキング」。
世界選手権において従来は、スプリントは「スプリントランキング」、ケイリンは「ケイリンランキング」をもとに出場枠が分配されていたが、2025年からはスプリント・ケイリン両種目の出場枠はどちらも「短距離ランキング」をもとに分配されるようになる。
これは「中長距離ランキング」においても同様だ。
参照:UCI CYCLING REGULATIONS / JCF EDITIOIN 2025「PART 3 TRACK RACES, UCI TRACK RANKINGS(3.3.001)」
UCI CYCLING REGULATIONS / JCF EDITIOIN 2025「PART 9 WORLD CHAMPIONSHIPS, Track(9.2.022)」
求められるのは「経験と多種目強化」

個人種目が「短距離ランキング」「中長距離ランキング」へと統合されたことで、各国・各選手により求められることとなるのは、「経験」と「多種目での強化」。
世界選手権で1つの種目にしか出場しない場合でも、出場枠をより確実なものにするには「短距離ランキング」「中長距離ランキング」の対象となる複数種目で結果を残さなければならない。

1国・1チームから出場できる人数が多く設けられているクラス1・2の大会では複数種目でのポイントを積み上げ、一方で大陸選手権やネーションズカップなど、1国から出場できる人数に限りある大会では得意種目で上位を狙う。
得意種目が増えれば増えるほど有利だが、得意種目を増やすには経験が必要となる。“多数精鋭”で競争力の高い日本ナショナルチームにおいて、それは容易なことではないが、ロサンゼルスを目指す上では「挑むべき試練」と言えるだろう。