2月21日の開幕から、マレーシア・ニライで連日熱戦が繰り広げられている『アジア選手権トラック2025』。
4日目・2月24日には“短距離の全て”が詰まっている(能力、スピード、苦しみ、演出など)男子1kmタイムトライアル(以下1kmTTと記載)が行なわれ、市田龍生都が出走。自身が得意とする種目で金メダルを獲得した。
男子1kmTT
トラック4周、1kmを最も速く走った選手が優勝する1kmTT。
およそ1分に込められるレースには短距離種目に必要な加速力、トップスピード、持久力、そして何より自分の全てを出し切る力、全ての要素が求められる。自らの身体を犠牲にしてトップを目指すこの種目は、トラック競技ならではの苦しみが生じるサディスティックな種目でもある。しばしば倒れこみ、動けなくなる選手も……。
2024年のアジア選手権トラック 1kmTTで銀メダルを獲得した中石湊
今大会は予選⇒決勝と2走を行い勝者を決める。
日本からは、2024全日本トラックの覇者であり、1kmTTに並々ならぬこだわりを持つ市田龍生都が出場。国際大会デビューを飾った。日本チームがアジアのチャンピオンになったのは、2022年の小原佑太が最後。
3年ぶりのアジアチャンピオン奪取へ、市田龍生都の挑戦が始まった。
アジア記録&日本記録:59秒796(2022世界選手権・小原佑太)
予選 まだまだいけそうな市田
予選はスプリント種目の予選でも好タイムを出したリュウ・シ(中国)が唯一の1分切りとなる59秒901を記録。市田はスタート直後に少しスリップするような形だったが、1分0秒421をマークし、自己ベストを更新する。このタイムは予選で2位となり、市田が予選突破を決めた。
予選トップ3
1位:リュウ・シ(中国:59秒901)
2位:市田龍生都(日本:1分0秒421)
3位:ムハンマド・ゾニス(マレーシア:1分0秒812)
市田は予選後に苦しむ様子も見せず、決勝へのタイムと順位に期待が高まる結果となった。
決勝 苦しみの中での逆転劇
予選8位から1位の順で行われる決勝。出走の順番上、タイムが更新される可能性が高く盛り上がっていくのがこの種目の特徴となる。
市田の前、6番目の走者のムハンマド・ゾニスが1分00秒896と予選より僅かにタイムを落としてレースを終えると、暫定トップは予選4位のキリル・クルディディ(カザフスタン:1分00秒666)。市田はこのタイムを上回れば銀メダル以上が確定する。
レースに入る前は集中する姿を見せ、池田瑞紀解説員が見守る中(※後日別記事にしてお届けします)トラックに上がっていく市田。
目標とする1分切りに向けてスタートを切ると、1周、2周、3周とそれまでの暫定タイムを全て更新しながら走る市田。
注目は1分を切るのかどうかとなった。4周を終えて、市田の記録したタイムは1分00秒057。再びわずかに1分切りに届かなかったものの、暫定トップタイムを記録した。
直後には最終走者のリュウ・シ(中国)。予選タイムは出場選手中唯一の59秒台を記録している優勝候補。
市田はリュウの走りを横目で見つつ、結果を待つ。
リュウの1周目、市田のタイムを僅かに更新して2周目へ。そして2周目、更に市田のタイムを更新し、2本目の決勝も1分を切るタイムで走っていく。3周目、ここでも市田のタイムを更新し、最終周回へ。
2本という1kmタイムトライルの厳しさ そして歓喜の瞬間が
日本チームの関係者も「もうダメだ」と思った最終周回。
リュウが快速を見せていたと思いきや、一気にペースが落ちていく。
苦しみながらフィニッシュラインを迎えると、電光掲示板には「2」の順位が表示される。フィニッシュタイムは1分00秒164。
最終周回で大きくペースを落とした結果、リュウは予選よりタイムを落とすことになり、市田龍生都が決勝でのトップタイムとなった。
市田はエリートクラスで初出場となる1㎞TTの王者に輝き、この種目で2025世界選手権に出場する権利を勝ち取った。
順位 | 選手名 | 所属 | 決勝タイム | |
1位 | 市田龍生都 | 日本 | 1:00.057 | |
2位 | リュウ・シ | Liu Qi | 中国 | 1:00.164 |
3位 | キリル・クルディディ | Kirill Kurdidi | カザフスタン | 1:00.666 |