KEIRINグランプリ2024は「原点回帰」
Q:グランプリに出走する9人を見渡してみていかがですか?年上は2人だけです。
年上なのは平原さんと、岩本俊介ですね。イワシュン(岩本)は同期なんです。同期でいちばん最初に出世した選手ですね。
Q:今回のグランプリ、脇本選手がタイトルをつけるとしたら?
今年は変化を求めすぎたので、「ちゃんとやろう」かな(笑)。
ちなみに、今回でグランプリ6回目なんですけど、過去5回ともバックをとってるんですよ。グランプリでは原点回帰していて、かなり先行屋なんですよね。だから今年もそんな感じになるのかなとは思っています。
Q:原点回帰。むしろそれのほうがタイトルですね(笑)。
いままでやってきたスタイルを発揮するのがグランプリだと思っているんです。それを見せるべきというか、いまの自分を表現する場所だと思っていて。変わったことはしたくないし、それはお客さんに求められているレースではない。
Q:たとえ、それで勝ったとしても。
そう。それは評価されない勝ち方だと思う。だから、よくもわるくも「いつも通り頑張ります」としか言わない。
Q:結局、それがいちばん強いですよね。
いつも通りだからこそ、相手は深読みするはずなんです。「脇本はこうするだろうから、どうしようか」という駆け引きがほかで始まってくれる。それで自分は自分のレースがし易くなると思います。
指導側の脇本雄太
Q:ではここからはグランプリから離れて、ちょっと気になるトピックを聞きたいと思います。競輪を走っていて楽しいですか?それとも職人になってきました?
楽しんでる方だと思いますね。東京オリンピックの時は、競輪を走る本数が限られてるから、そこに対する執着心がすごかった。勝たないと生活できない、くらいの気持ちだったので。でも今はそんなことはないですからね。以前は「勝たないといけない」というプレッシャーしかなかったです。
Q:近畿を背負う立場でもあります。
本来だったら、もう楽をしたいんですけどね。自力で走らないで良くなる時を待っています。
Q:そうなるには、脇本選手を超える人が出てこないといけないですよね。
来年は無理でしょうね。
Q:マインドがコーチっぽくなってきているような?
後世に教える、という役割のほうが増えてきていますからね。それこそ、今回のグランプリの体験談を伝えていったり、ということが求められる。
Q:その体験談が響きそうな後輩は?
弟子くらいかな。
イズムを継承する弟子たち
Q:弟子の選手たちには、“ワッキーイズム”みたいなものは植え付けています?
みんな僕の真似してますからね。彼らはフォームも僕にそっくりなんですよ。別に指示したわけじゃないんですけど、トレーニングの内容に応じて勝手になっていったみたい。寺崎はちょっと違いますけどね。
Q:ナショナルチーム内では、まだまだフォーム改造に取り組んだりしていますが、脇本選手はもうフォームを変えようとは思わないですか?
僕の勝手な想像ですけど、(太田)海也とか(中野)慎詞のフォームって、V-IZUに合わせてるように感じるんです。つまり、鉄フレームにあったフォームではない。だから、真似するべきではないなと思います。
ナショナルチーム、HPCJCで気づいてしまったこと
Q:福井に戻り、トレーニング環境が整っていないと以前は言っていました。ジムが完成してどうですか?
寺崎も来てくれて、あとはバイクだけですね。バイク誘導してくれる人がいない。
Q:高速域でバンクで走れる人がいない?
見つけるのは相当難しいです。僕はできるけど、他の選手でもできる人は少ないですよ。ナショナルチームを経験してる人じゃないと無理だと思います。練習の内容やポイントを、全て理解してる人じゃないとできないですから。これは無理ですよ。
Q:HPCJC内でもバイク誘導のテクニックは重要だと言っていましたね。世界でも、バイク誘導できる人がいないって。
そらそうですよ。あの領域になると、本当に難しいですから。250のバンクでバイクに乗るのは、体を鍛えてないと無理です。体の軸がブレてしまいますから。
Q:そうなると、いよいよ地元の弟子たちの強化みたいなことを脇本選手がやっていく。そういったことを考えないといけないわけですよね。
それもやっていくとは思いますよ。でも、メインのターゲットはジュニアにしたいと思ってるんです。高校生に絞りたい。いまのジムの場所は、母校も近いし、お世話になった自転車屋さんも近いので。早朝とかにジムを開けて、トレーニングをして、学校行ってらっしゃい、みたいな。
Q:ジュニア時代からトレーニングをするのが大事?
めちゃくちゃ大事です。
Q:HPCJCのファブリース・ヴェットレッティ S&Cコーチも、「コアを含めて22歳くらいまでに体を作れていたら一生大丈夫」と言っていました。
一生大丈夫。間違いないです。自分はやってなかったから、もっと早くやっておけばよかったと後悔しています。そういう思いがあるからこそ、ジムを作って、ジュニア時代からジムトレできるようにしたほうが良いと考えているんです。