日本勢が大活躍した『世界選手権トラック』だが、圧巻の成績を残したのがオランダが誇る最強スプリンター、ハリー・ラブレイセン。
今大会では、チームスプリント、スプリント、1kmTTの3種目で金メダルを獲得した。

大会初日のチームスプリントに続き、大会3日目の1kmTTで優勝しこの大会2つめの金メダルを獲得したタイミングで、自身のSNSにて以下の投稿がされた。

大会前まで、ハリー・ラブレイセンが世界選手権トラックで獲得した金メダルは13個だったため、“15 WORLD TITLES”とは通算15個目の金メダルを意味する。
キリのいい「15」という数字を祝うもの?
否、これは世界選手権トラックにおける「最多金メダル獲得」を告げるポストであったのだ。

本記事では、世界選手権の徹底検証「番外編」としてこの記録に迫る。

これまでの最多はアルノー・トゥルナン

これまで世界選手権トラックでの金メダル最多記録保持者であったのは、フランスのアルノー・トゥルナン。
97年〜2008年にかけて5連覇をしたチームスプリントで9つのメダルを獲得したほか、通算14個の金メダルを獲得していた。

アルノー・トゥルナン 金メダル獲得歴

種目
1997 チームスプリント
1998 チームスプリント
1998 1kmTT
1999 チームスプリント
1999 1KmTT
2000 チームスプリント
2000 1KmTT
2001 チームスプリント
2001 スプリント
2001 1kmTT
2004 チームスプリント
2006 チームスプリント
2007 チームスプリント
2008 チームスプリント

驚異のペースで記録を塗り替えたハリー・ラブレイセン

前述のとおり、ハリー・ラブレイセンは2024大会のスプリントで最多記録更新となる15個目の金メダルを獲得。さらに、最終日にはスプリントで16個目の金メダルを手に入れた。

ハリー・ラブレイセン 金メダル獲得歴

種目
2018 チームスプリント
2019 チームスプリント
2019 スプリント
2020 チームスプリント
2020 スプリント
2020 ケイリン
2021 チームスプリント
2021 スプリント
2021 ケイリン
2022 チームスプリント
2022 ケイリン
2023 チームスプリント
2023 スプリント
2024 チームスプリント
2024 スプリント
2024 1kmTT

アルノー・トゥルナンが初めて世界選手権で金メダルを獲得した1997年に生まれ、2017年に初めて世界選手権に出場したハリー・ラブレイセン。わずか8年で16個の金メダルを獲得したこととなる。上記のアルノー・トゥルナンが13年かけて14個の金メダルを手にしたことを考えると、その恐るべきスピードがよくわかる。

なおハリー・ラブレイセンは、延べ回数(1種目1回と計算)にするとこれまで世界選手権トラックの舞台で23度走っている。そんな指標は存在しないだろうが、“金メダル獲得率”は6割9分5厘という驚異の数値を残している。

左からジェフリー・ホーフラント、ハリー・ラブレイセン、マテウス・ルディク | 2019年 世界選手権トラック スプリント

ハリー・ラブレイセン、アルノー・トゥルナンに続く金メダル獲得数の3位は、クリス・ホイの11個。同率4位でジェフリー・ホーフラント(オランダ)、フロリアン・ルソー(フランス)、ウース・フローラー(スイス)、そして中野浩一の10個となっている。現在進行形で数を積み上げている選手が2人ランクインしているオランダの凄まじさよ……。

ちなみに女子選手においては、アンナ・メアーズ(オーストラリア)とクリスティーナ・フォーゲル(ドイツ)の11個が最多。今大会には出場がなかったドイツのリー ソフィー・フリードリッヒとエマ・ヒンツェ、そして今大会では金メダル獲得とはならなかったクロエ・ダイガート(アメリカ)らが同率4位の8個で並んでいる。決して簡単ではないが、記録を狙える立場にいると言えるだろう。

クロエ・ダイガート

さらに伸びていく予感

1997年3月生まれのハリー・ラブレイセンはまだ27歳。これまでの獲得ペースから考えても、今後さらに記録を伸ばしていく予感。来年以降、どれほどの数を積み上げていくのかにも注目だ。

参照:
Tissot Timing | World Championships Result
UCI TRACK CYCLING WORLD CHAMPIONSHIPS – PALMARES – ELITE