デンマークで開催されていた『2024世界選手権トラック』。
日本がアルカンシェル3枚の快挙を成し遂げた今大会の前にも、日本選手がトラック競技の「世界No.1」に輝いた大会があった。
その名も『2024マスターズ世界選手権トラック』。35歳以上のマスターズカテゴリーの選手による、トラック競技の世界選手権だ。
日本から伊藤信、伊藤成紀、市本隆司、案浦攻の4選手が出場した本大会。4選手のリザルトをご紹介していく。
「マスターズ」とは?
自転車競技において「マスターズ」とは、「エリート」や「ジュニア」などのように、年齢別に分けられる1つのカテゴリーに付けられた名称。UCIでは35歳以上のカテゴリーを「マスターズ」として定めており、通常5歳ごとにクラス分けしている。
「マスターズカテゴリー」について詳しくは、以下の記事をご覧いただきたい。
『2024マスターズ世界選手権トラック』
この投稿をInstagramで見る
2024年10月5日〜12日にかけてフランス・ルーベで開催。最高齢クラスは「80歳以上」と幅広いカテゴリーで、世界一を目指す選手たちが鎬を削った。
実施されたのは、以下の7種目だ。
スプリント、タイムトライアル*、チームスプリント
スクラッチ、ポイントレース、個人パシュート、チームパシュート
※タイムトライアルは、男子1km、女子500mで実施されるエリートと異なり、マスターズではクラスごとに異なる距離で実施。最長は1km。
伊藤信(男子40-44歳クラス)
大阪・92期、42歳の伊藤信は現役の競輪選手。『2022全日本選手権トラック』などにも出場しておりトラック競技の経験は豊富だ。2022年のマスターズ世界選手権ではスプリントでアルカンシェルを獲得している。
今大会でも伊藤信はスプリントに出場。
イギリスのデイビッド・ヘラルド(HEALD David)選手との決勝を2本続けて制し、見事2年ぶりのアルカンシェルを勝ち取った。
ちなみに伊藤信のホルダー(スタート時に自転車を支える人)を務めたのは、短期登録選手として日本の競輪も走りケイリンの世界チャンピオン(2019年)にも輝いたマティエス・ブフリ(オランダ)。意外な舞台で、元世界チャンピオン同士の共演が実現した。
ブフリ コーチと。優勝おめでとう! pic.twitter.com/mpYLajBBuT
— 案浦攻 (@KohAnnoura) October 8, 2024
レースによっては、同じく日本選手として出場した案浦がホルダーを担っている。エリートカテゴリーの世界選手権とは違い、チームスタッフなどの随行が必ずしもある訳ではない本大会。選手同士の支え合いも必要となる。
この投稿をInstagramで見る
↑4枚目に伊藤信・案裏攻の写真あり
伊藤信 リザルト
種目 | 順位 | タイム | リザルトPDF |
スプリント | 優勝 | 10.420(予選200FTT・2位) | 最終結果 予選 |
伊藤成紀(男子40-44歳クラス)
大阪・90期、42歳の現役競輪選手である伊藤成紀。
750mTTとスプリントに出場するも、入賞とはならなかった。
伊藤成紀 リザルト
種目 | 順位 | タイム | リザルトPDF |
750mTT | 14位 | 52.249 | 最終結果 |
スプリント | 15位 | 11.523(予選200FTT・15位) | 最終結果 予選 |
市本隆司(男子50-54歳クラス)
市本隆司がスプリント銀メダル、伊藤信がスプリント金メダル。さすが👍俺はスプリント予選2位。1/8決勝は楽勝。1/4決勝は2対1で勝って、明日に向けて首が繋がった。予選タイム拮抗。 pic.twitter.com/FMHbEDbIQK
— 案浦攻 (@KohAnnoura) October 8, 2024
広島・72期、53歳の市本隆司も現役の競輪選手。
2022年大会では伊藤信らとともにスプリントでアルカンシェルを獲得していた市本。2023年大会でもスプリントに出場したものの、惜しくも銅メダルに終わっていた。
リベンジを果たすべく出場した今大会では、21人が出場したスプリントのトーナメントを勝ち抜き決勝へ進出。しかし昨年の世界チャンピオンであるドイツのマルセル・ローレンツ(LAURENZ Marcel)選手と対戦した市本は、惜しくも敗れ銀メダル獲得となった。
なお500mTTでは5位入賞を果たしている。
市本隆司 リザルト
種目 | 順位 | タイム | リザルトPDF |
500mTT | 5位 | 34.893 | 最終結果 |
スプリント | 2位 | 10.723(予選200FTT・3位) | 最終結果 予選 |
案浦攻(男子55-59歳クラス)
55〜59歳、予選1、2位のちっちゃなオジサン同士で決勝。伊藤信コーチからダメ出しが出ない良いレース運びが出来たと思いますが、オーストラリアChris Murray選手に歯が立ちませんでした。まあ、今シーズンの仕上がり具合から言って今回ここまでの成績が出せて満足。 pic.twitter.com/XvGLEpsaVA
— 案浦攻 (@KohAnnoura) October 10, 2024
福岡・65期、57歳の案浦は元競輪選手。
2007年の競輪選手引退後はアメリカに拠点を移し、レースへの出場や日本人選手の支援など、様々な活動を行っている。More CADENCEでも過去にインタビューを実施したことがある選手だ。
伊藤信・市本と出場した2022年大会では、同じく55〜59歳クラスのスプリントで優勝。アルカンシェル獲得経験のある案浦は、2022年大会と同じく、日本人最年長としてこの大会に挑んだ。
この投稿をInstagramで見る
↑3枚目に伊藤信・案裏攻の写真あり
出場したスプリントでは相手選手との接触で自転車ごと1回転してしまうアクシデントに遭うも、22人がエントリーした本種目の決勝に進出。
2023年大会の500mTTを制したオーストラリアのクリス・マリー(MURRAY Chris)選手との決戦には惜しくも敗れたが、見事銀メダル獲得を果たした。
案浦攻 リザルト
種目 | 順位 | タイム | リザルトPDF |
スプリント | 2位 | 11.067(予選200FTT・2位) | 最終結果 予選 |
いつでも挑戦できる「マスターズ」の魅力
本記事では『2024マスターズ世界選手権トラック』に出場した日本人選手のリザルトをお届けしてきた。
自身の身体能力のピークを過ぎても、あるいは競輪選手を引退しても、同じ年齢層の選手たちと競走することができるカテゴリー、「マスターズ」。
全日本選手権*なども実施されており、本格的な競技経験のないアマチュア選手でもJCFの競技者登録をすれば出場が可能となっている。
自転車競技への参加に興味のある方は、挑戦してみてはいかがだろうか。
※『全日本選手権トラック』では出場対象年齢を男子35歳以上・女子30歳以上としている。
趣味として、職業として。「トラックサイクリング」の始め方とは?ゼロから始めるステップとさまざまな選手たちの「きっかけ」を紹介