コンチネンタル・サイクリング・センター・修善寺(CCC修善寺)にて、2024年5月29日(水)~6月9日(日)の11日間にわたって『2024 CCC修善寺 第1回トレーニングキャンプ』が開催。
本年度の1回目となる今回は、日本選手のほかにも台湾と香港の選手を合わせて総勢21人の選手が参加し、寝食を共にしながらトレーニングを行った。

CCC修善寺では以前より、アジア地域の選手やコーチを受け入れたトレーニングキャンプを長年実施しており、アジアにおけるトラック競技の普及・振興に貢献してきた。元世界チャンピオンのリー・ワイジー(李慧詩:香港)などもユース時代にCCC修善寺のトレーニングキャンプに参加している

編集部では昨年11月にこのキャンプへ潜入取材を行っている。
本キャンプと『トラックサイクリングキャンプ』との違いやCCC修善寺の基本的な情報はそちらの記事を参照いただきたい。

【更なる高みへ!】日本のトラック競技を成長させる1つのルートとは/上級者向け「CCC修善寺トレーニングキャンプ」潜入レポート

取材日はキャンプの2日目、まだ打ち解けていないような雰囲気がある中、トレーニングはワットバイクによる出力テスト。そして400mバンクを利用したスタンディングスタートの講習が行われた。

一斉にGO GO GO!

画面を見ずに踏んで下さい

鬼教官(野田尚宏講師)と台湾から来た選手の構図

午前のワットバイクテストでは、6秒の出力と30秒の出力をチェック。それぞれのMAXパワーや平均値を確認する。大事なのは1kg毎の出力値。

自分の結果を見ながらどの程度の出力を出せたのか、自分の現在地を知りキャンプに臨む。

午前の計測が済むと昼食を挟んで午後のスタンディングスタート講習へ。

メニューも全て英語

スタートする時の大事な要素を丁寧に英語で伝えていく野田講師。途中で日本語を挟むことなく、英語で講習を実施していることがこのキャンプの醍醐味でもある。練習が始まると、淡々と時は過ぎていく。

最後に行ったタイム測定では、参加者のほぼ全員が自己ベストを更新するなど、目に見える成長を見せた選手たち。このCCC修善寺トレーニングキャンプがいかに効果的なのかが数字で分かる結果となった。

ここからは講師を務める野田尚宏コーチに本キャンプの意義をあらためて語ってもらったほか、
さまざまな背景や思いを胸に集まったキャンプ参加者の声を掲載する。

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野田尚宏講師:将来、国際大会で活躍できる土台作りと国際交流

Q:今回のキャンプの目的、狙いは?

野田:日本人を含むアジア地域の若い選手たちの育成が最大の目的です。将来的に国際大会で活躍できるような、しっかりとした基礎・土台を作って、各国のナショナルチームなど次のレベルに受け渡す。それからもうひとつ、同年代の選手たちが寝食をともにしながらトレーニングができる場なので、国際交流という狙いもあります。

Q:参加選手はどのようにして募りましたか?

まずはアジア各国のNF(自転車競技連盟)に対して募集を行いました。加えて、WCCディレクターであるジャック・ランドリーから、アジアの各連盟の会長宛に案内をしてもらいました。

日本人選手は、CCCのホームページやSNS、静岡県車連(静岡県自転車競技連盟)などを通じてWeb上で募集をしました。

また、3月に実施したJ-STARプロジェクト(※)で発掘した選手たちも参加しています。

※2017年度より、スポーツ庁・日本スポーツ協会(JSPO)・日本スポーツ振興センター(JSC)・日本オリンピック委員会(JOC)・日本パラスポーツ協会日本パラリンピック委員会(JPSA/JPC)が中央競技団体と連携して、全国から将来性豊かなアスリートを発掘するために発足したプロジェクト。

Q:国際交流という狙いもあるんですね。

はい。日本人選手向けの募集ページには、「他のアジアの参加選手たちと積極的に交流できる」ということも参加資格に記載していました。まだ日程の序盤ではありますが、お昼休みには大合唱したり、だいぶ打ち解けてきてますね。

(※取材は合宿2日目に実施)

Q:CCCのあるべき姿ですよね。今後はもっといろんな国から参加してほしいですよね?

そうですね。以前の開催時は5か国の選手が集まったこともありますし、国際交流やアジア全体のレベルアップという意味でも、なるべく多くの国から来てほしいと考えています。

このキャンプは年に2回、次回は11月の半ばに予定していますが、今後は、海外でのトレーニングキャンプも実施したいなという思いもあります。

参加者:筒井楓 選手

左が筒井選手、右が前野選手

Q:なぜこのキャンプに参加をしたのですか?

笛吹高校(山梨県)の自転車部に入っているのですが、6月の半ばから始まる関東大会に向けて、トラックの強化のために参加しました。

Q:自転車競技を始めた理由はなんでしょう?

元々はトライアスロンをやっていたんですが、自転車レースに出た時にチームの監督さんに声をかけていただいて、そこから本格的に始めました。もちろんトライアスロンでも自転車には乗っていたんですが、0.1秒を競うようなものではなかったし、ドラフティングも禁止されていたので、全然違いますね。

Q:海外の選手も参加しているこのキャンプへ参加してみてどうですか?

数年前にもこのキャンプに参加していて、今回が2回目の参加なんです。前回はまだトラックを初めて1年くらいでわからないことも多かったのですが、とにかく初めてベロドロームで走ることができて楽しかったです。今回は外国の選手とコミュニケーションを取ったり一緒に練習したりできる貴重な機会なので、すごく新鮮です。楽しいですね。

Q:憧れの選手はいますか?

垣田真穂選手です。垣田選手のように、オリンピックに出場して、世界で戦える選手になりたいです。

前野束咲 選手

Q:自転車競技を始めたきっかけは?

元々は陸上をやっていたのですが、病気になってしまって、陸上を続けられなくなってしまったんです。人工関節が入っていて走れなくなってしまって。でもスポーツはやりたかったので、パラ競技を探していくなかで『トラックサイクリングキャンプ』に参加したのがきっかけです。

Q:数あるパラ競技のなかで、なぜ自転車を?

自分の足で漕いでスピードを感じる、という部分で陸上と通じるものを感じました。
『トラックサイクリングキャンプ』では自分よりも速い人ばっかりで、そういう人たちから刺激を受けたこともあります。

Q:今は高校生?

高校3年生で、自転車部に所属しています。この前、選抜に行ってきました。

Q:ロードではなくトラック競技をやっている?

はい。病気の関係で肺が少し弱くて、病院の人からも短距離・瞬発系の競技を勧められました。

Q:目指しているところは?

競輪が好きで、ガールズケイリンの選手を目指しているので、今年は養成所の試験を受ける予定です。
ガールズケイリンの動画をみて、私も走る側になりたいなって。

Q:憧れの選手は?

私と同じ埼玉出身の太田りゆ選手です。
ガールズキャンプでお会いして話を聞いていただいたりもしていて、尊敬しています。

Q:台湾や香港といったアジア圏の選手が参加している本キャンプに参加してみてどうですか?

留学経験もあって、もともと海外の人との触れ合いが好きなので、とてもいい刺激もらえたなと思います。
食事の時に海外選手とも少し話せたんですが、まだ少し壁がある気もするので(笑)もっと自分から積極的にコミュニケーションを取りたいです。

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中川楓汰朗 選手

Q:中学生にしてこのキャンプに参加。学校や勉強は大丈夫ですか?

勉強道具も持ってきているので、大丈夫です。自転車の強豪校である松山学院への進学を希望していて、中学の先生もこのキャンプへの参加を応援してくれました。

Q:キャリアプランは?

競輪選手になって、KEIRINグランプリ優勝とオリンピックのスプリントで金メダル獲得を目指しています。
そのために、まずはJOCジュニアオリンピックカップで優勝して、松山学院へ特待生として入ること。
高校では体力作りとダッシュ、筋肥大をして、選手になってからもトレーニングを続けていきたいです。

Q:なぜ競輪選手?

お金です(笑)自転車に乗ることが好きというのはありますが、やっぱりお金を稼げる、という部分で競輪選手はすごく夢がありますよね。

Q:今回の合宿での目標は?

最後に行われる記録会で、1000m 1分12秒台を出すことです。
今のベストは1分15秒台なので、3秒更新が目標ですね。

中道穂香 選手

Q:CCCとの合同での合宿となりますが、いかがですか?

去年もCCCと一緒に合宿に参加させてもらってすごくいい刺激をもらえたんですが、今回は海外選手もいるので、より楽しいですね。
トレーニングだけでなく、海外選手と積極的にコミュニケーションを取ることにも力を入れています。

Q:英語を喋れますか?

いえ、そんなに得意ではないのですが、自分が知ってる言葉の中で、頑張って会話を組み立てています。

Q:今回のキャンプに参加した目的は?

7月にパラの全日本があるので、まずは自分の現在地を確認することです。
以前は練習環境が整っていなかったのですが、去年の12月くらいからしっかりとした練習ができているので、その成果を確かめたいですね。

NG Po Li選手(香港)

Q:2024アジア選手権ジュニアに出場したと聞きました。インドでの開催でしたが、インドはどうでしたか?

初めてのインドでしたので、全てが新鮮でした。外国に行くのはインドが初となりましたが、道はぐちゃぐちゃ、人でごった返しており、空気も悪く、虫も凄かったです。でも人々はすごく良くしてくれましたよ!

Q:では日本ですが、初めての来日ですね?

はい。とても明るくて、綺麗で、人々も良くて、とても良い場所です。

Q:ここでの練習はどうでしょう?

まだ2日目ですが、香港では重いギアでの練習ばかりです。一方こちらは軽いギアでケイデンスが上がります。なかなか難しいと思います。

Q:どうして自転車を始めたのですか?

スタートしたのは2年前。学校に新たな先生として元香港代表の先生が来たんです。彼が自転車に乗る機会を作ってくれて、今考えると信じられないことですが、最初はTシャツとスニーカーでロード練習にいきました。でも楽しかったので、それから続けています。

自転車に乗って他の人と競ったり、どんな考えで走るか、どういったラインで走れば勝てるのか、そんなことを考えながら走るのが好きです。

Q:このキャンプのことはどうして知ったのですか?

コーチからの勧めがありました。

Q:香港といえば李慧詩(リー・ワイジー)さんが有名ですが、ここに参加したことがあると知っていますか?

知りませんでした。本当ですか?野田さんに当時のことを聞いてみます!僕の今のコーチも2016年にここで学んだ人なんです!

Q:誰か憧れの選手は?

李慧詩はもちろん、アジズルハスニ・アワン、そして日本人ならば太田海也ですね!香港のネーションズカップでの勝利はめっちゃカッコ良かったです。

Q:将来の夢は?

オリンピックに出場することです!