男子スプリントで太田海也が遂にネーションズカップの頂きへと上り、金メダルを獲得した。
決勝終了後には太田と対戦相手のマシュー・リチャードソンが倒れ込むほどの死闘、そして日本人の出場選手のレースをお伝えする。
男子スプリント
2024トラックネーションズカップ第1戦オーストラリア・アデレード大会最終日となる2月4日には男子スプリントが実施された。この種目には前日のケイリンで日本勢を破って優勝したアジズルハスニ・アワン(マレーシア)、開催国のエース、マシュー・リチャードソン(オーストラリア)、長身スプリンターのミカイル・ヤコフレフ(イスラエル)など37人の選手が出場。
日本からは太田海也、小原佑太、中野慎詞、山﨑賢人の4人がエントリーした。
今大会は予選(トップ4はシードへ)⇒1回戦⇒2回戦⇒準々決勝(ここから2本先取)⇒準決勝⇒決勝の勝ち上がりとなる。
予選200mFTT 太田海也が全体の2位
予選の主な結果は以下の通り:
予選順位 | 選手名 | 所属 | タイム | |
1位 | マシュー・リチャードソン | RICHARDSON Matthew | AUS | 9.499 |
2位 | 太田海也 | RKD | 9.595 | |
3位 | ミカイル・ヤコフレフ | YAKOVLEV Mikhail | ISR | 9.607 |
4位 | アジズルハスニ・アワン | AWANG Mohd Azizulhasni | MAS | 9.656 |
5位 | ジャック・カーリン | CARLIN Jack | GBR | 9.709 |
太田が2位にランクインし、2回戦へとシード権を得た。
1回戦 僅差で勝利の小原 山﨑は強豪マシュー・グレーツァー相手に敗れる
小原 vs サム・デイキン
小原は予選23位のサム・デイキン(ニュージーランド)との対戦。後方からのスタートとなった小原は最終周回でデイキンを差して先着。僅差の勝負となったが2回戦進出を果たした。
山﨑 vs マシュー・グレーツァー
山﨑は予選11位、2018世界チャンピオンのマシュー・グレーツァー(オーストラリア)との対戦。グレーツァーが前、山﨑が後ろとなってレースは進む。グレーツァーが前を一切見ずに後ろの山﨑の動きを注視しながらゆっくりとレースが進んでいく。
残り1周半で駆け始めたのはグレーツァー。その動きを見て山﨑もスピードを上げていき、勝負は最終周回へ。バンクの傾斜を使って加速していくグレーツァーとの距離を山﨑が少しずつ詰めていきながら、最終ストレートで山﨑が更に加速していく。しかし最後には横並びまでいかず、自転車半分分ほどの差でグレーツァーが先着。山﨑の2回戦進出は成らなかった。
中野 vs ルカ・スピーゲル
中野は予選15位のルカ・スピーゲル(ドイツ)との戦い。レースが始まってからの1周はお互い様子見のような形でゆっくりと過ぎていったが、残り2周から中野がバンクの上部に上がって加速していく。対するスピーゲルは中野の斜め前の位置をキープし、中野に直線的な動きしかさせずに動きをコントロールしていく。
最終周回に入り中野を十分に引きつけてダッシュを先に開始したのはスピーゲル。中野は後ろから加速していき、最終ストレートで追い込んでいくが届かず。スピーゲルが2回戦進出を決めた。
2回戦:太田は快勝、小原は接触するが押し切り
太田 vs ルカ・スピーゲル
太田の相手は中野を倒して勝ち上がってきたスピーゲル(ドイツ)。太田は盤石の走りで、残り1周半で前に出ると猛加速でスピーゲルを突き放していく。そのまま相手を寄せ付けることなく太田が先着。上がりタイム(ラスト200mのタイム)は全体を通して唯一9秒台と、調子の良さを見せた。
小原 vs チョウ・ユー
小原の相手はチョウ・ユー(中国)。残り1周になり後方から攻めた小原だったが、外に居たチョウ・ユーが内側に入ってきたため接触する形で両者が失速。しかしペダルを踏み続けた小原が前に出ると、そのまま押し切って先着。
日本人の2人が準々決勝進出を果たした。
準々決勝で太田vs小原 日本人対決
準々決勝からは2本勝負。この時点で日本人同士が対決するカードとなってしまった。
太田 vs 小原 1本目
1本目は前に小原、後ろに太田で進むレース。残り1周を切ると太田が後方でバンク上部に上がり、傾斜を使って一気に加速していく。最終ストレートで小原を捕らえた太田が先着し、1本目を先取した。
太田 vs 小原 2本目
2本目。太田が前、小原が後ろとなってスタートしたレース。3~4車身ほどの差で両者が徐々にスピードを上げていく。残り1周半で小原が加速を始めると、合わせて前の太田も加速していく。
残り1周。太田が前でバンクの高低差を利用して一気に加速して逃げきり体制へと入る。最終コーナーを抜けて後ろからは小原が迫るが、太田が逃げ切り。
太田が日本人対決をストレートで制して準決勝進出を決めた。
準決勝:元世界チャンピオン マシュー・グレーツァーとの戦い
準決勝のカードは太田対2018世界チャンピオンのマシュー・グレーツァー(オーストラリア)となった。
太田 vs マシュー・グレーツァー 1本目
レース1本目は、グレーツァーが前となり、太田の一挙手一投足を目で見ながらレースが進む。大きくレースが動いたのは残り1周半を過ぎてから。一気に加速してグレーツァーとの距離を詰めると、グレーツァーも前で急加速を始めていく。
残り1周。加速し始めたグレーツァーの後ろでバンクを駆け上がり、勢いをつけて太田がグレーツァーを捕らえにいく。残り半周で更にペダルを踏みこんだ太田が最終コーナーでグレーツァーに並び、最後はグレーツァーを半車輪ほどの差で追い込んで先着。
太田 vs マシュー・グレーツァー 2本目
2本目。今度は太田が前になってレースが進む。ゆったりとしたペースの中、両者の距離は3車身ほど離れて睨み合いが続く。レースが動き始めたのは残り1周半。徐々にペースを上げていきながら、距離を保ちつつ太田が先に自分のタイミングで仕掛けていく。
最終周回に入ってもグレーツァーの動きを確認しながらスプリントし、最後は相手を寄せ付けずに太田が先着した。
この結果、元世界王者をストレートで下して太田が決勝進出を決めた。
決勝 マシュー・リチャードソン 太田が初のネーションズカップ金メダルを獲得
決勝は予選トップのマシュー・リチャードソンとの戦い。ここまでストレートで勝ち上がってきた選手同士の戦いとなった。この2人の対戦は初となる。
太田 vs マシュー・リチャードソン 1本目
1本目。太田が前、リチャードソンが後ろになってスタートしたレース。太田は前でリチャードソンの走りを警戒しながらレースを進めるが、相手がスピードを上げたら自分も上げるといったような後手後手のレースを展開してしまう。
最終周回に入り、バンクの上部から傾斜を使ってスピードをつけて仕掛けてきたリチャードソンに対応できず、1本目は大差で2着となった。
太田 vs マシュー・リチャードソン 2本目
2本目。太田が後ろでレースはスタートする。
1周目は両者がじっと睨み合うような形でゆっくりと進んだが、2周目に入り、バンクの最上部を3~4車身程度の距離で走る両者。しかし1本目と異なり先手を仕掛けたのは太田。
一気に加速して外からリチャードソンを追い抜くと、自らのペースで最終周回で逃げ切り体制へ。追うリチャードソンは徐々に距離を詰めてくるが、太田に並ぶことはできずに最終ストレートに入る。
最後に追い上げてきたリチャードソンだったが、太田が半車輪ほどの差で逃げ切って2本目を先着。勝負は3本目で決まることになった。
太田 vs マシュー・リチャードソン 3本目
3本目。勝負は2本目を走ってからおよそ10分後に実施された。お互いに満身創痍の中レースがスタートする(通常はリカバリーに20分程度を費やす)。
太田は後ろからの攻めとなり、まずは歩きと同等のスピードで両者が様子を見ていく。時折スタンディングになるほどスピードを落とすリチャードソンだが、太田は誘いに乗らずに後ろの位置をキープする。
残り2周を切ると、太田とのにらみ合いを諦めたのか、リチャードソンが加速していく。太田は3車身程度の距離を保ちつつリチャードソンを追っていく展開となる。
最終周回。最後の力を振り絞るが如く、リチャードソンがスプリントを始めると、太田も反応して勝負は最後の局面を迎える。
残り半周で後ろから前との距離を詰めていく太田は、最終ストレートでリチャードソンに並び、最後は自転車半分ほど抜け出してフィニッシュ。
リチャードソンとの3本に及ぶ死闘を制し、太田海也が自身初のトラックネーションズカップ金メダルを獲得する結果を残した。
順位 | 選手名 | 所属 | |
1位 | 太田海也 | RKD | |
2位 | マシュー・リチャードソン | RICHARDSON Matthew | AUS |
3位 | マシュー・グレーツァー | GLAETZER Matthew | AUS |
その他の日本選手の最終順位:小原佑太7位、中野慎詞19位、山﨑賢人22位
そしてレース後に喜びよりも痛みを伴った両者は崩れ落ちていった。