2024トラックネーションズカップ第1戦の女子スプリントで、佐藤水菜が大躍進での銀メダルを獲得。現世界チャンピオンをジャイアントキリングするなど、パリ2024に向けて大きな一歩となった。この記事では佐藤の活躍と日本人選手のレースを中心にお伝えする。

女子スプリント

2024トラックネーションズカップ第1戦オーストラリア・アデレード大会2日目となる2月3日には女子スプリントが実施された。女子スプリントには40人の選手が出場。

2023世界チャンピオンのエマ・フィヌカン(イギリス)、2022世界チャンピオンのマチルド・グロ(フランス)、2023世界選ケイリン金のエルレス・アンドリュース(ニュージーランド)など、世界トップを争う選手たちがエントリー。

日本からは梅川風子、佐藤水菜、太田りゆの3人が出場した。

今大会は予選(トップ4はシードへ)⇒1回戦⇒2回戦⇒準々決勝(ここから2本先取)⇒準決勝⇒決勝の勝ち上がりとなる。

スプリントのルールはこちら

予選200mFTT

予選は助走をつけて200mのタイムを計る。上位28人が予選を通過し1回戦へ。

事前にジェイソン・ニブレット短距離ヘッドコーチの情報にあったように、タイムが出ないと言われるバンクでの結果は以下の通りとなった。

予選順位 選手名 所属 タイム
1位 エマ・フィヌカン FINUCANE Emma GBR 10.414
2位 マチルド・グロ GROS Mathilde FRA 10.444
3位 エマ・ヒンツェ HINZE Emma GER 10.497
4位 ケイティー・マーシャン MARCHANT Katy TIN 10.503
5位 ローリン・ジェネスト GENEST Lauriane CAN 10.505

8位:佐藤水菜(日本 10秒614)

14位:太田りゆ(日本 10秒827)

19位:梅川風子(日本 10秒921)

上位4人は2回戦からのシードへ。日本人の3人は予選を突破し1回戦進出を決めた。

予選結果PDF

1回戦 梅川vs太田 日本人同士の対決

1回戦では梅川vs太田の日本人対決となってしまった。

レースは梅川が前、太田が後ろでゆっくりと3~4車身ほど開いて進んでいく。残り1周を前に両者がスピードを上げていくと、後ろから仕掛けたのは太田。残り半周を過ぎて梅川の横に並びかけていく。

しかし前を譲らない梅川が粘りを見せて、4コーナーでは少し前に出ていく。そのまま内側で粘った梅川が先着し、2回戦進出を決めた。

佐藤はジュリー・ニコラス(ベルギー)との対戦。このレースは佐藤が終始前を譲らず力の差を見せて先着し、2回戦進出となった。

1回戦結果PDF

2回戦 ドイツの強豪エマ・ヒンツェvs梅川

2回戦では予選3位、2020世界選金メダルのエマ・ヒンツェ(ドイツ)との対戦となった梅川風子。レースは梅川が外側からスタートと同時に前に出てスピードを上げていくが、ヒンツェが梅川を逃がさずに追っていく。

梅川と1車身ほどの差で追っていくヒンツェは最終周回に入って仕掛けると、逃げる梅川を一気に捕えて先着。ヒンツェが準々決勝への切符を手にした。

佐藤はユアン・リイン(中国)との対戦を先行して制し、準々決勝へと進む。

2回戦結果PDF

準々決勝 現世界チャンピオン エマ・フィヌカン(イギリス)を撃破の佐藤

佐藤の準々決勝の相手は予選1位、現世界チャンピオンのエマ・フィヌカン(イギリス)となった。

1本目。イン側よりスタートした佐藤は前でゆっくりと半周進む。バックストレートで止まろうとした佐藤をフィヌカンが追い抜いていき、前後が交代してレースが進む。その後は1車身ほどの差でフィヌカンの後ろで仕掛けどころを狙う佐藤。

残り1周を切って猛加速した佐藤が仕掛けていくと、フィヌカンに並びかけたのは4コーナー。最終ストレートで更に佐藤が加速すると車輪一つ抜け出して佐藤が先着。1本目を佐藤が得た。

2本目。フィヌカンが前、佐藤が後ろでレースがスタート。序盤から早目にペースを上げていくフィヌカンに対して、すぐ後ろでピッタリと相手に付いていく佐藤。

1本目と同様、最終周回から佐藤が全開で攻めていく。最終コーナーでフィヌカンを捕らえた佐藤は、今度は身体一つ抜け出して先着。

なんと現世界チャンピオンをストレートで下すジャイアントキリングで準決勝進出を果たした。

準々決勝結果PDF

今度はケイリン世界王者との戦い、しかし……

準決勝は2023世界選手権ケイリン金メダルのエルレス・アンドリュース(ニュージーランド)との戦い。レースは佐藤が逃げていく展開となるが、最終周回でアンドリュースが仕掛けてくると、後方から佐藤の後輪にぶつかる形でアンドリュースがバランスを崩して落車。そのまま担架で運ばれたため、1本目は佐藤の先着となった。2本目はアンドリュースがスタート出来ずに、佐藤が2本目を得る形で決勝進出が決まった。

もう一組は2022世界チャンピオンのマチルド・グロ(フランス)対2020世界チャンピオンのエマ・ヒンツェ(ドイツ)。この勝負は力の差を示すかのようにヒンツェが圧倒的なスピードでストレート勝ちを遂げた。

準決勝結果PDF

決勝 死闘の末の脚の痛み

決勝戦、1本目は佐藤が前、ヒンツェが後ろとなってスタート。ゆっくりと佐藤が進み、半周を過ぎてバンク上部へと上がっていく。

ヒンツェがこの間に前に出ると、位置関係が変わって両者がスピードを上げていく。

後ろでバンクの上下に動きながら揺さぶっていく佐藤に対してじっと走り続けるヒンツェ。

最終周回で佐藤が仕掛けていく。

残り半周で並びかけた佐藤は最終ストレートで更に加速し、最後は車輪半分ほど前に出て先着。

見事に2020世界チャンピオンから1本目を得ることに成功した。

2本目はヒンツェが前、佐藤が後ろのスタートとなり、位置関係を変えずに1本目と同じように最終周回での勝負となる。ラスト半周では佐藤がヒンツェに並びかけるが、今回はヒンツェが粘って先着。勝負は3本目へと持ち込まれる。

決戦の3本目

金メダルか銀メダルか、どちらかが決まる3本目。佐藤が前でレースがスタートする。

前の2本とは異なり、佐藤が後ろをよく見ながら1周が進む。

しかし残り2周を切ってヒンツェが加速し前に出ると、そのまま両者のスピードが上がっていく。

1車身ほどの差でヒンツェを追う佐藤がフル加速したのは、最終周回2コーナーを抜けてから。

一気に追い上げていく佐藤が最終コーナーで並びかけると、最後はどちらが前か分からないほどの僅差でフィニッシュ。写真判定の結果ヒンツェが先着となり、2024ネーションズカップ開幕戦での女子スプリントチャンピオンの座に輝いた。

佐藤水菜はスプリントでネーションズカップ自己最高位となる銀メダルを獲得。

パリ2024に向けて新たな明るい材料を日本チームにもたらす結果となった。

銅メダルは、アンドリュースが棄権したためマチルド・グロ(フランス)が獲得した。

順位 選手名 所属
1位 エマ・ヒンツェ HINZE Emma GER
2位 佐藤水菜 RKD
3位 マチルド・グロ GROS Mathilde FRA

その他の日本選手の最終順位:梅川風子16位、太田りゆ17位

決勝結果PDF

佐藤水菜インタビュー

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