パリに向けナショナルチームに一本集中か
チーム数について特に変化が大きかったのがヨーロッパ。7チームが減少している。
あくまで推測だが、登録を継続しなかったチームの要因の1つは、ナショナルチームへの「一本集中化」だと考えられる。
際たる例は、オランダ籍のチーム。マティエス・ブフリやヨエリ・ハビックら4人が所属していた「BEAT Cycling Team」、ヤン ウィレム・ファンシップらが所属していた「ABLOC CT」の2チームが2024シーズンでは登録を継続せず、オランダはUCIトラックチーム不在国となった。
オランダ(男子)はハリー・ラブレイセン率いる短距離メンバーと、ヨエリ・ハビックやヤン ウィレム・ファンシップ(マディソン現世界チャンピオンペア)率いる中長距離メンバーなど、主要大会へ出場する”不動のメンバー”がほぼ確立している状態だ。
少数精鋭の不動メンバーが確立している以上、「パリオリンピックに出場する可能性の高い選手に経験を積ませる」という側面においては、オランダにおけるUCIトラックチームの存在意義が低くなり、ナショナルチーム一本で活動した方が良いと判断されたのかもしれない。
その他の登録を継続しなかったチームには、「メンバーのほとんどがUCIネーションズカップなどの主要大会に出場していない」という共通点がある。オランダ籍のチームと同様、「パリオリンピックに出場する可能性の高い選手に経験を積ませる」という側面においてチームの存在意義が低下したため、登録を継続しなかったと予想できる。
このナショナルチームへの「一本集中化」は、各国の主要選手がある程度確立されたオリンピックイヤー特有の現象なのかもしれない。
代表争い激化の「ナショナル型」は登録継続
一方2024年シーズンも登録を継続したチームを見ると、UCIネーションズカップなどの主要大会にも出場している「国を代表する選手」でメンバーが構成されているチームが多い。イギリス「Team Inspired」やカナダの「National Cycling Insitute Milton」などが挙げられ、2023年シーズンから新設傾向があった。
これらのチームを仮に「ナショナル型」と呼称するが、ナショナル型チームがある国では「主要選手数が多い」傾向がある。
不動のメンバーが確立しているオランダとは逆に、ナショナル型チームがあるイギリスとカナダの2カ国では、「パリオリンピックに出場する可能性の高い選手に経験を積ませる」という側面において、UCIトラックチームの存在意義が高いと推察できる。
2つのナショナル型チームと主要な所属選手
チーム | 所属選手数 | 主要な選手 |
Team Inspired | 42人 | ジャック・カーリン エマ・フィヌカン ネア・エバンス ウィリアム・ティドボール オリバー・ウッド |
National Cycling Insitute Milton | 8人 | ケルシー・ミシェル ローリン・ジェネスト ニック・ワメス |
日本の2チームも「ナショナル型」
「チームブリヂストンサイクリング」と「チーム楽天Kドリームス」も「ナショナル型」と言える。
日本のナショナルチームメンバーは男女合計19人(2023年11月1日更新のエリート強化指定選手)。もし日本にUCIトラックチームがなければ大会に出場できない選手が多数いたが、この2チームがあるおかげで、日本全体での出場枠数を増やすことができている。
「パリオリンピックに出場する可能性の高い選手に経験を積ませる」という側面において、日本にはUCIトラックチームが不可欠である一方、ナショナルチームメンバーにはメンバー同士による代表争いが強いられるのもまた事実だ。
「多国籍チーム」という選択肢
一方で2024年シーズンでは、様々な国籍の選手たちが所属する「多国籍チーム」も登録されている。
7カ国の選手が在籍「CHANEY WINDOWS AND DOORS」
2024年シーズンに登録されている「他国籍チーム」の中から、「CHANEY WINDOWS AND DOORS」を紹介しよう。チームの本拠地はアメリカとなっているが、在籍選手の国籍は全部で7カ国(アメリカ、カナダ、アルゼンチン、デンマーク、スイス、イタリア、ニュージーランド)、3大陸の選手らが所属している。
ナショナルチーム主流の自転車競技と言えるトラック競技。
そんなトラック競技において、「CHANEY WINDOWS AND DOORS」のような多国籍チームが、どんな「UCIトラックチーム」の価値を生み出してくれるのか期待したい。