2023年より7チーム減少

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パリに向けナショナルチームに一本集中か

ヤン ウィレム・ファンシップ van SCHIP Jan Willem, NED, ヴィンセント・ホペザック HOPPEZAK Vincent, BCC, Point race, Men's Omnium, 2022 Track Nations Cup, Milton, Canada

(左)ヴィンセント・ホペザック(右)ヤン ウィレム・ファンシップ

チーム数について特に変化が大きかったのがヨーロッパ。7チームが減少している。

あくまで推測だが、登録を継続しなかったチームの要因の1つは、ナショナルチームへの「一本集中化」だと考えられる。

際たる例は、オランダ籍のチーム。マティエス・ブフリヨエリ・ハビックら4人が所属していた「BEAT Cycling Team」、ヤン ウィレム・ファンシップらが所属していた「ABLOC CT」の2チームが2024シーズンでは登録を継続せず、オランダはUCIトラックチーム不在国となった。

マティエス・ブフリ, Matthijs BÜCHLI, NED, UCI Track Champions League, Round 4 London

マティエス・ブフリ

オランダ(男子)はハリー・ラブレイセン率いる短距離メンバーと、ヨエリ・ハビックやヤン ウィレム・ファンシップ(マディソン現世界チャンピオンペア)率いる中長距離メンバーなど、主要大会へ出場する”不動のメンバー”がほぼ確立している状態だ。

ヤン ウィレム・ファンシップ, van SCHIP Jan Willem, ヨエリ・ハビック, HAVIK Yoeri, NED, 男子マディソン, MEN Elite Madison, 2023世界選手権トラック グラスゴー, 2023 UCI CYCLING WORLD CHAMPIONSHIPS TRACK Glasgow, Great Britain

(左)ヨエリ・ハビック(右)ヤン ウィレム・ファンシップ

少数精鋭の不動メンバーが確立している以上、「パリオリンピックに出場する可能性の高い選手に経験を積ませる」という側面においては、オランダにおけるUCIトラックチームの存在意義が低くなり、ナショナルチーム一本で活動した方が良いと判断されたのかもしれない。

その他の登録を継続しなかったチームには、「メンバーのほとんどがUCIネーションズカップなどの主要大会に出場していない」という共通点がある。オランダ籍のチームと同様、「パリオリンピックに出場する可能性の高い選手に経験を積ませる」という側面においてチームの存在意義が低下したため、登録を継続しなかったと予想できる。

このナショナルチームへの「一本集中化」は、各国の主要選手がある程度確立されたオリンピックイヤー特有の現象なのかもしれない。

代表争い激化の「ナショナル型」は登録継続

ジョセフ・トルーマン, TRUMAN Joseph, GBR, 男子ケイリン1回戦敗者復活戦, MEN'S Keirin 1st Round Repechage, 2023トラックネーションズカップ ジャカルタ, 2023 TRACK NATIONS CUP Jakarta, Indonesia

ジョセフ・トルーマン(Team Inspired)

一方2024年シーズンも登録を継続したチームを見ると、UCIネーションズカップなどの主要大会にも出場している「国を代表する選手」でメンバーが構成されているチームが多い。イギリス「Team Inspired」やカナダの「National Cycling Insitute Milton」などが挙げられ、2023年シーズンから新設傾向があった。

これらのチームを仮に「ナショナル型」と呼称するが、ナショナル型チームがある国では「主要選手数が多い」傾向がある。

不動のメンバーが確立しているオランダとは逆に、ナショナル型チームがあるイギリスとカナダの2カ国では、「パリオリンピックに出場する可能性の高い選手に経験を積ませる」という側面において、UCIトラックチームの存在意義が高いと推察できる。

2つのナショナル型チームと主要な所属選手

チーム 所属選手数 主要な選手
Team Inspired 42人 ジャック・カーリン
エマ・フィヌカン
ネア・エバンス
ウィリアム・ティドボール
オリバー・ウッド
National Cycling Insitute Milton 8人 ケルシー・ミシェル
ローリン・ジェネスト
ニック・ワメス

日本の2チームも「ナショナル型」

窪木一茂, 兒島直樹, (Team Bridgestone Cycling 1), 今村駿介, 岡本勝哉, (Team Bridgestone Cycling 4), 松田祥位, 河野翔輝, (Team Bridgestone Cycling 2), Final, Men Elite Madison, 2023 Japan Track Cup Ⅱ

「チームブリヂストンサイクリング」と「チーム楽天Kドリームス」も「ナショナル型」と言える。

日本のナショナルチームメンバーは男女合計19人(2023年11月1日更新のエリート強化指定選手)。もし日本にUCIトラックチームがなければ大会に出場できない選手が多数いたが、この2チームがあるおかげで、日本全体での出場枠数を増やすことができている。

内野艶和, 垣田真穂, 女子エリミネーション, WOMEN'S Elimination 2023トラックネーションズカップ ジャカルタ, 2023 TRACK NATIONS CUP Jakarta, Indonesia

エリミネーション(2023ネーションズカップ第1戦)に出場する内野艶和・垣田真穂

「パリオリンピックに出場する可能性の高い選手に経験を積ませる」という側面において、日本にはUCIトラックチームが不可欠である一方、ナショナルチームメンバーにはメンバー同士による代表争いが強いられるのもまた事実だ。

「多国籍チーム」という選択肢

ミア・グリフィン, GRIFFIN Mia, IRL, アニータ イボンヌ・ステンバーグ, STENBERG Anita Yvonne, NOR, マリット・ライマーカス, RAAIJMAKERS Marit, NED, アレクサンドラ・マンリー, MANLY Alexandra, AUS, 女子オムニアム ポイントレース, WOMEN'S Omnium Point Race, 2023トラックネーションズカップ ジャカルタ, 2023 TRACK NATIONS CUP Jakarta, Indonesia

一方で2024年シーズンでは、様々な国籍の選手たちが所属する「多国籍チーム」も登録されている。

7カ国の選手が在籍「CHANEY WINDOWS AND DOORS」

2024年シーズンに登録されている「他国籍チーム」の中から、「CHANEY WINDOWS AND DOORS」を紹介しよう。チームの本拠地はアメリカとなっているが、在籍選手の国籍は全部で7カ国(アメリカ、カナダ、アルゼンチン、デンマーク、スイス、イタリア、ニュージーランド)、3大陸の選手らが所属している。

ナショナルチーム主流の自転車競技と言えるトラック競技。

そんなトラック競技において、「CHANEY WINDOWS AND DOORS」のような多国籍チームが、どんな「UCIトラックチーム」の価値を生み出してくれるのか期待したい。