2023年11月1日〜12日の期間、静岡県伊豆市の日本サイクルスポーツセンターにて『2023 CCC修善寺 第2回トレーニングキャンプ（CCCキャンプ）』が開催。
編集部は本キャンプ開催中の11月8日にキャンプへ取材を実施。この記事では「CCCキャンプ潜入レポート」をお届けする。
「CCCキャンプ」とは？
自転車をテーマとした遊園地や伊豆ベロドロームなどの自転車競技専門施設を有する「日本サイクルスポーツセンター」は、「CCC修善寺（コンチネンタルサイクリングセンター）」というもう1つの顔を持っている。CCCとはUCI（国際自転車競技連合）が各大陸に設ける自転車競技普及のための拠点だ。
CCC修善寺では以前より、アジア地域の選手やコーチを受け入れたトレーニングキャンプを長年実施しており、アジアにおけるトラック競技の普及・振興に貢献してきた。元世界チャンピオンのリー・ワイジー（香港）などもユース時代にCCC修善寺のトレーニングキャンプに参加している。
リー・ワイジー 李慧詩
2023年2回目の開催となった今回のキャンプには、アジア諸国からの応募がなかったものの、更なる成長を目指す日本の中学生・高校生のトラック競技・パラサイクリングトラック経験者たちが集まった。
さらに川本翔大らのパラサイクリング強化指定選手も本キャンプに参加し、他の参加者と合同でトレーニングを行った。
「トラックサイクリングキャンプ」と何が違うの？
CSC 野田尚宏コーチ（日本サイクルスポーツセンター）
編集部員はこれまで、JKAが主催する「トラックサイクリングキャンプ」に取材を行なってきた。「CCC修善寺トレーニングキャンプ」はCCC修善寺が主催するキャンプだが、2つのトレーニングキャンプの開催趣旨や内容にはどのような違いがあるのか。
トラックサイクリングキャンプでも講師を務めている野田尚宏コーチに話を伺った。
トラック競技を成長させる1つのルート
Q：トラックサイクリングキャンプ（TCC）との違いは？
まずは期間です。TCCの場合は2日間ですが、今回のCCC修善寺トレーニングキャンプ（CCCキャンプ）は12日間で開催しています。
そしてキャンプの主な目的も異なります。TCCはトラック競技を始めたりピストバイクに乗るきっかけを作る場、または人材を発掘する場、要するに「トラック競技へのゲート」です。そのゲートをくぐり、さらなる強化や成長を志す方を募集しているのが今回のようなCCCキャンプです。
2023年のTCCにも複数回参加していた山口成美
元々CCCキャンプは、さらなる成長を目指す競技経験者を国内外から募集し育成する試みとして実施されてきました。現在もそうした側面はありますが、TCCが本格的に実施され始めたことで、ゲートであるTCC、そしてその先にあるCCCキャンプという新しい道筋ができました。個別に存在していた2つのキャンプの点と点が線で繋がったんです。
より時間を掛けたプログラム
Q：12日間に渡って実施されるCCCキャンプの特色はありますか？
はい。CCCキャンプでは「ピリオダイゼーション（Periodization）/ 期分け」という概念を採用しています。ある目標に向けてトレーニングの期間をいくつかの段階に分け、各段階ごとに課題を設定し、体系的にトレーニングを行なっていくことを指す用語です。
トラック競技の場合は、ある大会に向けて2,3ヶ月の期間内で期分けを行い、トレーニングを実践していくことが多いです。
JPCF 沼部早紀子コーチ（日本パラサイクリング連盟）
CCCキャンプでは、最終日に行われる『Challenge The Izu Velodrome』という記録会のようなイベントを最終目標として、主に前後半に期分けされたトレーニングプログラムを実践しています。簡単に言うと、前半に体力や筋肥大などの基礎的なトレーニングを行い、後半はその体力や肥大化した筋力を効率的に出力するトレーニングを行います。前半を「キャパシティトレーニング」、後半を「パワートレーニング」と呼んでいます。
そうした中長期的なトレーニング方法を実践できることが、12日間に渡り開催されるCCCキャンプの特色です。
その他にも、生理学やバイオメカニクスなどの深い知識を時間を掛けてレクチャーできることもCCCキャンプだからこそできることですね。
理論と実践の繰り返し
Q：TCCでも複数回参加することで、専門的な知識を学べると以前お伺いしました。
はい。CCCキャンンプでは実施期間が長い分、学んだ理論やノウハウをより時間を掛けて実践していくことができます。理論と実践を繰り返すことが可能なのです。
今回のキャンプでは、通常2,3ヶ月で行う期分けのトレーニングを12日間に凝縮していますが、「期分け」という新たに学んだ理論を、キャンプ終了後も各自のトレーニングに落とし込むことで、より長い期間でも実践することができます。
重要なのはキャンプで行う練習の目的を理解することです。目的と方法を理解すれば、各自でも計画的にトレーニングを継続していけます。闇雲に追い込むのではなく適切な量と質を意識することで、キャンプ期間中だけの成長にとどまらず、今後も継続して各自で成長していけるようなプログラムを用意しています。
