2022年8月26日より伊豆ベロドロームにてスタートした『2022全日本選手権トラック』。大会2日目となる27日、わずか3人のメンバーで女子オムニアムが実施され、最後まで展開が動くレースの中、梶原悠未が強さを見せた。
オムニアムのルール
4種目を行いその総合成績を競う、オムニアム。スクラッチ→テンポレース→エリミネーション→ポイントレースの順で実施される。
今回の出場メンバーは3人と人数こそ少ないが、ナショナルチームメンバー同士の鋭い戦いが繰り広げられた。
出場メンバー
梶原悠未 | TEAM Yumi |
内野艶和 | チーム楽天Kドリームス |
古山稀絵 | チーム楽天Kドリームス |
スクラッチ
定められた距離を走り着順を競うスクラッチ。バンクで行われるロードレースとも称される。7.5km、30周回で実施。
先頭交代しながら淡々とレースが進んでいくが、残り4周あたりから3人とも相手の出方を伺うような動きとなる。「いつ誰が出るか?」とピリピリした雰囲気を漂わせつつも加速はしていかない。しかし残り1周から梶原が一気に先頭へ出て、そのまま1着フィニッシュとなった。2着は内野。3着に古山
テンポレース
女子7.5kmで行い、毎周回、フィニッシュラインを1着で通過した選手だけ1ポイントを得ることができるテンポレース。
残り10周までは梶原と内野が交代でポイントを獲得していくような形となる。内野が1〜2ポイント差で梶原に続くが、古山は1ポイントのみの獲得で大きく離されてしまう。最後まで梶原がポイントリーダーとなってこの種目を終えた。
エリミネーション
決められた周回数ごとに最後尾の選手が除外されるサバイバルレース。
出走が3人と少ない中で、スタートと同時にスパートをかけたのは古山。しかしこの逃げは成功せず、最初に除外されてしまう。梶原vs内野となった除外周回では梶原が先に加速して仕掛けて先着。この種目でも梶原が1位を得る結果となった。
ここまで3種目すべてを梶原が1位、内野が2位、古山が3位で通過。最終種目のポイントレースに臨む。
ポイントレース
女子は20kmで行われるポイントレース。それまで3種目で獲得した総合ポイントを持ち点としてスタートし、10周ごとのスプリント周回で、1着に5ポイント、2着に3ポイント、3着に2ポイント、4着に1ポイントが与えられる。レースで得たポイントが持ち点に加算されていき、最終的に総合ポイントが最も高かった選手が勝者となる。
1回目~4回目のポイント周回は梶原が1着・5ポイントを獲得。
残り36周で古山が仕掛けるも、後ろの2人に捕まってしまう。入れ替わるように内野が仕掛けるが、梶原を引き離すまでには至らず。再び古山が仕掛ける残り34周。ここでもまた集団は結局ひとつに戻るが、レースに動きが見られるようになる。
5回目のポイント周回は古山が先行し1着のポイントを獲得、それに内野、梶原と続く。
残り16周から古山がアタックして単独で先頭を走る。そのまま単独で7回目のポイント周回を1着で通過。
この時点で
梶原:149ポイント
内野:134ポイント
古山:129ポイント
そして7回目のポイント周回直後に古山が2人に追いついたため、+1ラップで20ポイントを加算。一気に149ポイントまでポイントを積算し、梶原に並ぶ形になった。
残るは最終ポイント周回のみ。
残り4周からは内野が仕掛けて単独で先行すると、そのまま逃げ切って内野が1着でフィニッシュ。ポイントタイとなり、優勝争いを行う梶原と古山だが、梶原が古山を大きく突き放してフィニッシュ。2着は梶原、3着は古山。
最終的なポイントは以下となり、順位が確定した。
1位 | 梶原悠未 | 155ポイント |
2位 | 古山稀絵 | 153ポイント |
3位 | 内野艶和 | 144ポイント |
選手インタビュー
優勝:梶原悠未
Q:今年もチャンピオンジャージを着ることができました。
はい。2対1のようなレースで、2人が果敢に攻めて来てくれたのですごく楽しかったです。
Q:少人数の特殊なレースだったと思いますが。
私の強みは「戦術」なので、ポイントを計算して巧みなレース運びができるよう意識していました。最後まで攻めきるレースができたと思います。
Q:日本のレースシーンに対してどのようになって欲しいと思いますか?
まずは私自身が世界トップ選手であり続けること、そして日本チーム全体で私に挑んできてもらえれば、チーム全体のレベルが上がると思います。みんなで強豪国になれるよう、切磋琢磨していきたいです。
2位:古山稀絵
Q:すごくワクワクしてレースを見させていただきました。
3人なので、最初の3種目ではあまりポイント差がつきません。最後のポイントレースが勝負だと思っていました。(内野)艶和ちゃんとも「どうにかして梶原選手を苦しめよう」という共通認識みたいなものがあり、2人で死に物狂いのアタックを繰り返して、面白いレース作りをしようと思っていました。その点に関してはとても良かったかなと思います。
でも、梶原選手はさらにその上!全部計算していて、ここは逃して良いとか、ここは取らなければいけないとか、しっかり考えながら走っていたので、その辺りはこれから必要な部分だなと感じます。
Q:自分としての満足度はどうでしょう?
「アタックして面白いレースをする」と考えていても、以前はもっと梶原選手が遠かったんです。今回はちょっと苦しんだ姿を見られて、もうちょっと頭を使えば戦えるのではないかと希望が見えました。自分としては手応えを感じられたと思う一方、体力、スタミナ等々足りない部分も明白にわかるレースでした。もっと鍛えていかなければいけないと感じました。
Q:点が並んだ時は「おお〜!!」と思いました。
自分もあの時は結構興奮しました(笑)でも、梶原選手が上手でしたね。
艶和ちゃん、チームメイトのおかげだったなと思います。「なんとしてでも苦しめよう」という共通した思いがあったからこそ、あのレースになったのかなと思います。3人でも「面白い」と思っていただけるレースができたのは、良かったなと思います。
3位:内野艶和
Q:レースを振り返っていかがですか?
スプリントもそうですが、体力面のベースから「違うなあ〜!」と感じたレースでした。ポイントレースでは、アタックとかあまりやったことがなかったんですが、自分のできることを試してみました。「自分から仕掛けよう」と決めていたので、それができたのはよかったと思います。
アタックを何回かして、自分の脚も削れますけど、相手に対しても効果があったのかなと思います。逃げも視野に入れた走りをしてみたんですが……それでも(梶原選手は)強かったです。
Q:梶原選手に対して、何を強くしていけば勝てると思いますか?
スプリントもそうですけど、持久力、ベース……頭脳も全然足りてないと思います。「あとちょっとなんじゃない?」って思ってくださってる方もいると思うんですけど、最終局面で出る強さは、簡単に行ける領域じゃないと思います。自分も早くレベルアップしたい、早く、早く!という感じで練習に励んでいます。
今は一つ一つ学んで、改善していくしかないのかなと思います。