3月に行われたロードレース大会で、チームメイトの勝利をガッツポーズで祝ったケイデン・グローブスに罰金が課されたことが、Cycling Weeklyなどで報じられた。

Kaden Groves fined, relegated, and yellow carded for celebrating teammate’s victory | Cycling Weekly

このニュースを見て、More CADENCE編集部で思い出された「ちょっとした事件」がある。2024年12月に佐藤水菜が大磯クリテリウムに出場した際の出来事だ。

佐藤水菜, 『大磯クリテリウム』2024-25 第3戦

佐藤水菜

当時の記事を読んでいただいた方はすでにご存知のことだろうが、自転車トラック競技のトップ選手である佐藤がロードレースの一種であるクリテリウムに出場。畑違いの種目ながら見事優勝!……と思われたものの、ゴール時にガッツポーズしたことが理由で優勝が取り消されてしまった事件だ(詳しくは当時の記事をご覧ください!)。

「ポガチャルにはなれなかった……」佐藤水菜がロードバイクで疾走するも、まさかの結末に/『大磯クリテリウム』

 

この2つの出来事は、いずれも「より安全なレースのためのルールである」という共通点でくくることができる。

UCIの新規定

ケイデン・グローブスの罰金の根拠は、2025年1月から施行された、UCIの新規定にある。

“Rider decelerating during a sprint and endangering other riders (knowingly staying within the line of other riders, celebrating in the bunch, talking on the radio or taking hands off handlebars while in the bunch).”

“ライダーがスプリント中に減速し、他のライダーを危険にさらす(他のライダーのライン内に故意に留まる、集団内で祝う、集団内で無線で話す、またはハンドルから手を離す)”

……といった動きをしてしまった場合、選手には罰金や降格などが課せられる。つまり「まだ周りに走ってる人がいるのにガッツポーズとかしたら危ないでしょ、ルールで規制しようね」ということだ。

2.12.007 Table of race incidents relating to road events | UCI CYCLING REGULATIONS, PART 2 ROAD RACES Version on 01.01.2025

大磯クリテリウムはこの新ルールの施行前の2024年12月に開催、そして大会独自の競技ルールで実施されていたが、ここにも「競技者は、ゴール時およびゴール後安全に停車するまで片手・両手放しをしてはならない。違反者は失格とする」というルールが明記されている。

大磯クリテリウム 競技規則

より安全なレースのために

UCIルール下のレースか否かの違いはあるものの、いずれも「より安全なレースのため」のルールであること、そして「より安全なレースのため」に自転車界全体として取り組みが行われていることがわかる。例年必ずと言って良いほど痛ましい事故が起こる自転車競技だからこそ、ルールを定めていくことは大切だ。

一方で、「どこまでセーフなの?」「この程度なのに罰則対象になるの?」という判断基準の問題や、「勝利を喜べないなんて気分が下がる」といったモチベーション、気持ちの部分での障害もあるだろう。これからもルールが改善・最適化されていくことを前提として、より良くしていくための議論に参加しつつ、過渡期の「今」を上手に楽しんでいただきたい。