厳しい山岳の連続
最初に目に付くのが、他のグランツールと比べて山岳が厳しいことと、“山頂フィニッシュ”の多さである。
山頂フィニッシュとは、その名の通り、頂上にゴールが据えられたステージレイアウトのことだ。クライマーと呼ばれる登りが得意な選手たちによる激しい争いが展開され、その様子は自転車ロードレースの最も重要な見どころに挙げられる。
2016年のブエルタ・ア・エスパーニャ第20ステージでは、ステージ優勝を狙うピエール・ラトゥール(フランス/AG2Rラモンディアル)とダルウィン・アタプマ(コロンビア/UAEチーム・エミレーツ)が熾烈な山頂フィニッシュ争いを繰り広げた。
この山頂フィニッシュは、ツール・ド・フランスでは思いのほか少ない。今年は21ステージ中で、本格的な山頂フィニッシュが設定されたのは3ステージのみである。
一方、今年のブエルタでは、21ステージ中、実に9ステージが山頂フィニッシュなのだ。クライマーによる熾烈な山岳バトルを思う存分楽しみたいという人にとっては、このブエルタこそが最も楽しめるグランツールと言えるだろう。
さらに言えば、ただ山頂フィニッシュの数が多いだけではない。その厳しさにも定評がある。 特に第2週目の最後の3日間、第13ステージから第15ステージにかけては、スペイン北部のカンタブリア山脈を舞台とする、“激坂”の山頂フィニッシュ3連続で待ち受けている。
このうち、第13ステージのカンペローナ、そして第15ステージのコバドンガは、2年前のブエルタにも登場し、いずれもナイロ・キンタナ(コロンビア/モビスター・チーム)がライバルたちに差を付ける走りを見せている。
しかしながら、このカンタブリア3連戦で、総合優勝者が生まれるとは限らない。第3週のラスト、総合優勝争いにおける実質的な最終日となる第20ステージでは、選手たちが最も厳しいステージを迎えることになるからだ。