勝利と挫折を経験した「サイモン・イェーツ」
3人目は今大会、華々しい活躍を見せてくれたサイモン・イェーツだ。
ジロの前から、エステバン・チャベスと並んでミッチェルトン・スコットのエース候補だと言われていた。過去には双子の兄弟アダム・イェーツと共に、ツール・ド・フランスの新人賞を手にしたこともある。
間違いなくフルームの次にくるイギリス人総合系ライダーは彼だろう。
しかし、まさかこんなにも早く、そして圧倒的な形で頂点に登り詰めるとは誰が予想しただろうか。まさに「覚醒」と呼んでも過言ではなかった。
怒涛の3ステージ優勝
もともと個人タイムトライアルは不得手とされてきたイェーツが、ジロ初日のTTで上位の結果を叩き出したことから驚きとなった。
さらには最初の本格山岳となった第6ステージ、エトナ山で他のライバルを突き放して2位でゴールし、マリア・ローザを着用する。
その後も第9ステージ、第11ステージ、第15ステージと怒涛の3勝。いずれも、山頂フィニッシュでライバルたちを力でねじ伏せた実力による勝利であった。
勝利と敗北を一気に味わう
総合トップを走っていたイェーツは、第16ステージ個人タイムトライアルを終えた段階で、総合2位のトム・デュムランとは56秒差。デュムラン以外の選手たちとは3分以上のタイム差があった。
これまでの走りから、残りのステージでデュムランがイェーツを抜き去ることはほぼないだろうと予想されていた。
しかし、クリス・フルームとチーム・スカイが大逆転劇を起こした第19ステージ、ジロの中で最も厳しいフィネストーレ峠の登りでグランツールの厳しさが突如彼に襲いかかる。
スカイのトレインが集団の先頭にたち、加速しながら次々と選手たちをふるいおとす中、イェーツもまたフィニッシュまで87kmを残して集団から脱落してしまった。
スタート時点では「何も悪い兆候は出ていなかった」とコメントしていたイェーツだが、連日の疲労と「グランツールにおける総合リーダージャージを着続けること」の重圧に、圧し潰されてしまったのかもしれない。
トム・デュムランも同じような敗北を経験
実はかのトム・デュムランも同じような敗北を経験している。彼はそこから焦ることなく立て直し、今着実に結果を残している。サイモン・イェーツも、また、デュムラン同様にやがて来る機会に備えることが重要だろう。
幸いにも、彼が所属するミッチェルトン・スコットというチームは、仲間想いのメンバーが揃う恵まれた環境だ。再び頂点を目指す走りを見せてくれることを楽しみにしたい。
以上、3名の若手選手を中心に今大会を振り返ってみた。
例年、1年を通して最も熱いレースであると言われることも多いジロ・デ・イタリア。今年も期待通りの盛り上がりを見せてくれた。
次のグランツール「ツール・ド・フランス」の開催はすぐそこだ。
まだ見ぬニューヒーローたちが活躍してくれることだろう。
Text:Tamaki Suzu