アスリートにとっての語学の壁
世界で活躍するアスリートが必ずと言っていいほど直面するのは「語学の壁」。スイスに拠点を置く長迫選手、フィリピンで活動している月井選手、韓国で武者修行をした徳南選手、フランス人コーチの指導のもとで日々トレーニングをする新田選手がそれぞれの「語学」について語った。
BMX 長迫選手:ノートに書く勉強は嫌い
高校に通わず、16歳でアメリカに渡った経歴を持つ長迫選手。学生時代は英語は苦手だったものの、アメリカでは英語に不自由はしなかったという。
「日本である程度英語を勉強してからアメリカに行ったんです。と言ってもノートとかに書く勉強が嫌いなので、face bookで海外のBMX選手とチャットで連絡をとりあうことで英語を学びました。もちろんGoogle翻訳とかで意味を調べるんですけど、1回調べたことは忘れないようにしていました。タイマンですね(笑)」
空手 月井選手:「イエス」しか言えなかった
月井選手は現在フィリピンで活動しているが、彼女も英語ができない状態でフィリピンに飛び込んだ。
「高校も大学も空手の特待生として進学したので『授業よりも練習』という環境でした。一念発起してフィリピンに飛び込んでみたものの、案の定言葉に苦労しました。
日本人ということで珍しかったのか、フィリピンでインタビューを受けたことがあったのですが『イエス』しか言えなくて・・・放送を見たら全部カットされていて『これじゃいけない』と思い、そこから必死に1日2、3時間、会話でわからないことあったらすぐ携帯でメモして、後で家で全部調べる方法で勉強しました。あとは間違えてもいいから、とりあえず話しかけてましたね。
それをを繰り返して1年半くらいしたら『英語上手だね』って言ってもらえるくらいになりました。根性でやりました(笑)」
フェンシング 徳南選手:フェンシング協会の取り組み
韓国に武者修行に行った経験から韓国語は流暢に話せるものの、英語は「ギリギリレベル」と言う徳南選手。フェンシング協会の英語への取り組みを紹介した。
「フェンシング協会のスポンサーに、学習教材などのビジネスを展開するベネッセさんに入っていただいているんですが、スポンサーとして提供していただいているのはお金じゃないんです。オンラインの英語講座や、試験などを提供していただいています。
フェンシング協会では、その英語試験のボーダーラインをクリアしないと日本代表に選出しないという取り組みを行なっています。僕はボーダーラインの一個上でギリギリだったんですけどね。
選手として成功する人はほんの一握りで、そうでない人の方が多いです。フェンシングに人生のほとんどを掛けてきて、でも選手として成功できないまま引退ということになった時、アスリートだからこそ持てるスキルがあるべきだ、という思惑から来ています」
トラック競技 新田選手:言語への姿勢は競技への姿勢に通じる
新田選手は「僕の英語は幼稚園レベルだけど」と前置きしつつ「言葉の壁にぶち当たった時、大体メンタルで1回やられちゃうのかなと思う」とアスリートだからこそ直面する「語学とメンタル」を絡めて語った。
「コミュニケーションの場をもらった時、言葉が通じないせいで『あいつやる気ないのかな』と思わせるよりは『やろうとしてるけど伝わってないね、でも頑張ってるのはわかる』と思わせるのも戦術ですよね。
言語を『絶対マスターしてやろう』と思うことと、競技で『絶対強くなってやろう』と思うことは、同じメンタルの話だと思うんです」
と四者四様の経験や意見交換が成された。