BMX日本代表としてリオ五輪出場、2020年はトラック競技との二刀流で東京五輪を狙う長迫吉拓の地元岡山は豪雨被害により甚大な被害を被った。被災した長年のBMX仲間を手伝うため、現地ボランディアへ参加した長迫吉拓が感じたものとは。
10年来のBMX仲間
現実を目の当たりにした。
東日本大震災、テレビで見たとき現実味を感じられなかった。そして、今回自分の目で見た光景は「本当の事なんだ」と驚きを隠せなかった。
7月7日に西日本を襲った記録的豪雨の影響で、いくつかの河川が決壊。倉敷市真備地区の一帯は冠水。BMX仲間の実家も被害にあった。
ちょうど、BMX全日本選手権へ遠征中だった僕の友達、野村君自身が被害に遭う事はなかったものの、家族が被害に遭った。
僕が状況を知ったのは野村君のTwitter。実家近くの写真と共に「家族と連絡が取れない」と。
僕は実家へ連絡し、家族の安全が確認できたものの、正直僕はどうして良いか分からなかった。
しかし翌日になると野村君の家族の無事が確認され、一安心した。
7月15日、BMX仲間の呼びかけもあり、僕が帰省するタイミングで家を失った野村君の手伝いに行かせてもらった。
野村君とはもう10年以上、中学生くらいからの付き合いになるBMX仲間。僕とは国内最高峰クラスで共に戦う1人。毎年、BMX全日本選手権へ一緒に車で遠征したり、地元岡山へ帰れば常に隣にいる様な存在。
手伝いには、野村君と野村君のお兄さんの友達らを合わせ、15人ほどが駆け付けた。
作業は朝8時前から行われた。荷物や家具を運び出したり、床を剥がし基礎に溜まったヘドロを取り除き乾かす。
床のベニヤを剥ぎ取り、ヘドロを掻き出し、石灰で消毒する。
基礎は使えるようなので、家を建て直すように作業を進めた。
35度を超える炎天下の中、水分を含んだ木材から出る湿気、そして感染病や怪我から身を守るために長靴、長袖長ズボンとホコリや異臭のためのマスクを着けて作業を行う。
まるでサウナの中で作業してるかのような蒸し暑さ。飲む水分より出る水分の方が多いぐらいだった。
厳しい環境の中、作業は少しやって、休憩して、の繰り返しで思うように進まない。辺りは熱中症で体調を崩す人が多く、救急車の音が鳴り止まなかった。