競輪のレベルを押し上げる走り
郡司は審議の対象となったが、フォニッシュした順番のままに郡司が優勝、2着に和田、3着に守澤という決定が下った。
守澤は、3着という結果に対して「ついて行っただけですけどね」と話し、こう続けた。
「特別(競輪)の決勝は内容にこだわるようなところではないので、とにかく優勝目指して走ったんですけど、まあ南関のラインの隙が無かったですね。結果として3着は嬉しいですけど、結果特に何もしてないなと思って……。やっぱりラインがないと、楽しくないんで。(ラインを残して勝ちあがるのが)今後の課題ですね。みんなで頑張れるように」と話した。
2着の和田は、この開催前の落車の影響が後を引いており、万全とは言えない状態で開催中にも自転車を変えたりしながらも決勝ではしっかりと着に絡んだ。
「練習もここに来るまでほぼいつも通りにできていませんし、落ちた状態をどうやってこの全日本選抜に向けるかという感じでした。あとは当然、今日もそうですけど、深谷くんとか自力選手の頑張りがあってこその結果だったので」と和田は語る。
4日の開催中、3日間で深谷の後ろを走った郡司は、「本当に、3レースを見てもらえば分かると思うんですけど、後ろをついていてもすごく頼もしいし、これからどんどん一緒に盛り上げていきたいなっていう想いが一層強くなりました」と話す。
ラインの3番手に2020グランプリ王者を背負って走ることについても、「僕自身もそうでしたけど、深谷さん自身それを一番感じて多分前を引っ張ってくれたので、本当にこれから連携がもっと増えて、しっかりとラインで決められるようなレースに持っていけるといいなと思います」と語る。
郡司はこれまで、前を走る自力選手として南関を率いてきた。ここにきて深谷という超強力選手が加わり、今大会では全て深谷が前を引き受ける形となった。今後、ラインの中での前後位置を変えていくことを考えるか聞かれると、「今回はやっぱり僕の地元というのもあったので、(番手を)回らせてもらう部分が大きかったんですけど。でも今回の深谷さんの出来を見ると、僕的にはまだ前を回る資格が無いんじゃないかなっていうのも、ちょっと、感じられました」と、控えめに答えた。
2021年のKEIRINグランプリ出場者第一号となった郡司だが、今後についてこう話した。
「本当に僕だけじゃなくて、南関で盛り上げて1人でも多く、南関でグランプリに乗りたいなっていう想いが強いです。僕自身ももっともっと強くなって、1人でも多くGⅠの決勝戦を勝ち上がってチャンス作れるように、気を引き締めて一走一走はしっていきたいと思います」
多くの選手たちの口から名前が出た深谷だったが、南関地区移籍後、初のGⅠ開催を振り返る。
「後ろの2人がワンツーなので、最低限の走りはできたと思います。優勝争いできる手応えも今回掴めた気がするので、良い経験になったと思います。(今回は、)決勝9着という結果なので、次はもっと良い結果にできるように頑張りたいです」
初日に深谷が話していた南関ラインの信頼を築いていくという目標に関しては、おそらくこの開催で十分すぎるほどに達成したように思える。また、深谷の加入した南関東が他の地区にとって、大いなる脅威となったことを今回の大会で知らしめることにもなった。
もちろん競輪を中心に戦っているトップ選手たちの強さや実力は疑いようがない。さらに彼らの中に、競技の脚力や戦略が染み付いたナショナルのメンバーが入り、競輪での戦い方にフィットさせていくことで、平原の言っていた「競輪のレベル」は、爆発的に押し上げられているように思う。
東京オリンピックまで残り半年となり、いよいよ一つの集大成を迎えるナショナルチームのメンバーが競輪にもたらす”風”にも、今後注目していきたいところだ。
Text & Photo : 滝沢佳奈子(サイクルスポーツ)