だれもいない検車場に佇む、自転車の美しさ

それは、開催式が始まるとのことで私も一旦検車場を離れ、戻ってきたときでした。組まれた自転車が並んだ、だれもいない検車場。

私はこれまで自転車と選手はほぼセットでみていました。戦士と武器のようなイメージです。しかしこのとき初めて、自転車そのものの美しさ、魅力に心を鷲掴みされたような感覚でした。等間隔に並んだ自転車やその車輪、スポーク、フレームの円や線や三角形で組み合わされたフォルムの持つ幾何学模様の美しさというのでしょうか。

並んでいる自転車が本当に綺麗で、いつまでも眺めていたいような気持ちになりました。

競輪選手の乗る自転車というのは、世界に一台しかないもの。セッティングはそれぞれ、本当に細かなレベルで調整しています。特に、フレームはオーダーメイドで、半年待つようなものもあります。よくみると、名前も入っていたり、色やデザインのこだわりもそれぞれ個性がありますよね。

仲の良い選手やリスペクトしている選手からもらったりすることもあるようです。

今回の寛仁親王牌、初日1R1番車だった宮本隼輔選手(山口・113期)のフレームの色が素敵だったので、お話を聞いてみると、実は渡邉一成選手にもらったものでした!しっかりと名前が刻まれていました。

競輪という競技は、公営競技のなかで唯一、人の力によるものです。そのような競技で、おそらく体力では劣ってしまうであろうベテラン選手が若い選手に勝つことができるのは、自転車という非常に奥深く無限の可能性を持つ「相棒」がいるから。武器というよりも相棒なのだと思いました。選手のみなさんは日々「相棒」と対話を繰り返し、その絆を深めているのです。

選手と「相棒」・・・その絆から生まれる法則を超えた「美しさ」

私が検車場で偶然出会った光景。それを美しいと感じたのはおそらく、なにかを美しいと感じる基準や法則、そういった理論的な部分を超えていました。「相棒」達は日々パートナーから愛情を込められ磨かれたものだからこそ、それに応えるようにあの輝きを放つことができ、それを私は肌で感じたのではないかと思います。

これから、競輪を通してこれらの「相棒」たちの魅力に、さらにぐぐっと迫ることができるようなコラムをかいていけたらいいなと思っています。

桜井奈津 Twitter:@natsu2636