2025年7月5日よりスタートした『ツール・ド・フランス2025』。3週間にわたり全21ステージが行われる、世界最高峰のロードレースだ。

自転車競技、特にロードレース競技に勤しんできた学生が進路を考える際、「ロードで頑張り続けるか、稼ぐことを考えて競輪に行くか」という選択肢に悩むことはままある。「ロードで『食っていく』ことができるのはごく一握りの人間」と言われるが、まさにその「一握り」の、そのトップオブトップが走る晴れ舞台が、このツール・ド・フランスなのだ。

では、「世界最高峰のロードレース」と「競輪界最高峰のレース」を比べた時、賞金額が多いのはどちらなのか?
2025年の情報をもとに比較してみよう。

『KEIRINグランプリ』の賞金額

KEIRINグランプリは例年12月30日に行われる、競輪界最高峰のレース。その1年をトップで走り抜けた9選手のみが出場し、予選や勝ち上がりなどのない、1発勝負で行われる。

『KEIRINグランプリ2025』の賞金表は7月時点ではまだ公開されていないため参考値となるが、2024年の優勝賞金は1億3300万0000円。これは副賞を含まない金額で、2023年から300万円アップしている。競輪業界自体の売り上げも右肩上がりを続けているため、2025年も同等か多少の金額アップが見込まれるだろう。

古性優作, KEIRINグランプリ2024, 静岡競輪場

なお、そのほかのG1レース(グランプリに次いで格の高い、年間に6つ行われるレース)で優勝した場合、最高額は日本選手権競輪(競輪ダービー)の8700万円となる。

▼そのほかのレースの賞金額はこちら

【競輪】G1で完全優勝した時の賞金はいくら? ビッグレースで獲得可能な「最高賞金額」をまとめてみた(2025年版)

『ツール・ド・フランス2025』の賞金額

一方でツール・ド・フランスでは、賞金の考え方が少々ややこしい。

ツール・ド・フランスは3週間にわたって行われるレースである。大会全体の総合優勝(最終的に一番速かった人)のほか、各ステージ(各日)における優勝者や、その日時点でトップの人(レースリーダー)にも賞金が与えられる。

総合優勝者の賞金は50万ユーロ。日本円にして約8621万円だ。

これだけ見ると、額としてはKEIRINグランプリに負ける。しかし連日のレースで「その日の優勝(ステージ優勝)」をすると1万1000ユーロ、日本円にして約190万円が与えられることも考慮に入れるべきだろう。

ユーロ
総合順位 1位 50万 8621万5000
2位 20万 3448万6000
3位 10万 1724万3000
ステージごとの順位 1位 1万1000 189万6730
2位 55oo 94万8365
3位 2800 48万2804
レースリーダー 500 8万6215

※1ユーロ172.43円(7月13日)で換算

例えば2024年の総合優勝者であるタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)は総合優勝に加え、6ステージで優勝している。これだけを単純計算しても、合わせて9700万円ほどの賞金額だ(※2025年の賞金額で計算)。

NICE, FRANCE - JULY 21: (L-R) Remco Evenepoel of Belgium and Team Soudal Quick-Step - White Best Young Rider Jersey, Richard Carapaz of Ecuador and Team EF Education - EasyPost - Polka Dot Mountain Jersey, Biniam Girmay of Eritrea and Team Intermarche - Wanty - Green Sprint Jersey and Tadej Pogacar of Slovenia and UAE Team Emirates - Yellow Leader Jersey with the presence of : Christian Prudhomme of France (R) Director of Le Tour de France celebrate at final podium during the 111th Tour de France 2024, Stage 21 a 33.7km individual time trial from Monaco to Nice / #UCIWT / on July 21, 2024 in Nice, France.

また、ツール・ド・フランスでは「総合優勝」以外の選手にも賞金が与えられる。山岳賞、ポイント賞、ヤングライダー賞などだ。これらも総合優勝者と同じく「最終的な順位」のほか、「ステージごとの順位」の応じた賞金授与が行われる。

そのほかにもチームの成績上位3選手の所要時間が最も少ないチームに与えられる「チーム賞」、果敢に走った選手を讃える「敢闘賞」など、多様な成績・活躍を賞賛する仕組みがある。スーパースター以外の選手も、賞金を得ることができるようになっている。

チーム競技のロード、個人競技の競輪

優勝すれば1億円に届きそうな賞金額ということで、G1優勝とKEIRINグランプリの間くらいの賞金レンジとなるツール・ド・フランス。しかしロードレースでは、選手の賞金を「チームとして均等に配分」する慣例がある。つまり、1人で1億近く稼いでも、それを総取りすることはできないということ。

ロードレースは「エース」と「アシスト」が存在する競技だ。アシスト選手はエースの選手を支え、障害を排除するが、その役割が故に順位に絡めないことも多々ある。アシスト選手あってこその成績ということもあり、このような慣わしがあるようだ。

競輪のように「1人で1億」とはいかないが、その一方で「チームとしての努力が報われる」競技と言えるツール・ド・フランス。賞金の対象が多岐にわたる点も合わせ、「より多くの選手が輝ける」競技とも言えるのかもしれない。

同じ「自転車」だが、両者それぞれの特性・魅力がある。それぞれの「違い」を楽しみつつ観戦していただきたい。

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参考:ツール・ド・フランスとは | J Sports
Sporting stakes | Tour de France
Tour de France prize money explained: How much money will the 2025 yellow jersey winner take home? | Cycling News
Tour de France 2025 prize money: Full breakdown and key figures | domestique
How much is the Tour de France 2025 prize money? | Cyclist
How much prize money does the winner of the 2025 Tour de France get? | Cycling WEEKLY