KEIRINは競輪から生まれた
競輪は日本の公営ギャンブルであり、ケイリン(KEIRIN)は競輪が基になってできた自転車競技トラックレースの種目のひとつ。ケイリンは2000年のシドニー五輪にてオリンピック種目正式種目として採用され、2008年の北京五輪では日本の競輪選手である永井清史が銅メダルを獲得している。
そんな競輪とケイリンだが、「ギャンブル」と「スポーツ」という大きな違いがあるため、もちろんルールや見どころにも違いがある。
代表的なものとしては
・競技場の違い
・ライン戦(チーム戦)と個人戦の違い
・使用機材の違い
順に詳しく見ていこう。
競技場の違い
競輪場のバンク(走路)がコンクリートなのに対し、ケイリンは板張り。1周の距離に関しても、競輪は333m〜500mとバリエーションがあるが、ケイリンは250mに固定されている。
またカーブには、スピードを落とさずに曲がれるように「カント」と呼ばれる傾斜がつけられており、その角度にも違いがある。競輪の場合は約30度なのに対し、ケイリンでは約45度。ほとんど壁のような角度だ。
さらに、競輪場は多くが屋外だが、ケイリンは室内で行われる。
ライン戦と個人戦の違い
競輪では「ライン戦」と呼ばれるチーム戦をすることがあるが、ケイリンは個人戦が絶対。
自転車レースでは「風圧をいかに軽減するか」がとても重要。先頭を走る選手には大きな風の抵抗がかかるので、先行する(先頭を走る)ことは決して有利ではない。そのため、レースの途中まで誘導員(ペーサー)が先頭を走り、選手たちを引っ張っていくが、その後ろのポジション取りが「ライン戦か個人戦か」で大きく違いが出る。
競輪で見られる「ライン戦」では、主に同じ地方支部に所属する選手たちが協力しあい、ラインと呼ばれる隊列を組んで進んでいく。
前を走る選手は時速70キロの風を切り、後ろを走る選手は前に出ていこうとする別の選手の動きをブロックし、前の選手の走りを守る。しかしゴール線が近づくと個人の戦いとなり、力と力がぶつかり合うこととなる。
「この選手とこの選手は同じ地方出身だからラインを組んで、その中でもこの選手が先行していくハズ。だから、こういう展開になるだろう……」といった、ストーリーを考えて予想することも競輪の楽しみ方のひとつだ。
対するケイリンは、ラインという共同戦線を組むことはなく、各選手がお互いの出方を牽制しながらレースを展開していく。ひたすらに個人同士での心理戦とチカラのぶつかり合う様を楽しめるのがケイリンだ。
使用機材の違い
競輪もケイリンも、ブレーキや変速機がついていない「極限までシンプルな自転車」であることは共通している。そんな中で大きな違いとなるのは「材質」と「ギア」だ。
競輪では鉄のフレームを使用する。「ビルダー」と呼ばれる職人の手によってひとつひとつ手作りされ、それぞれの選手に合うように全てのパーツがチューニングされている。
鉄フレームは高校の自転車競技を含め、競技の世界では現在ほぼ使われていない「レトロ」な部類の素材。しかし「自分が乗ってる感触というか、(フレームが)曲がるから、自分の力がどこに伝わっているかわかる」とその独特の乗り心地を評価する選手もいる。
一方、ケイリンで使用されるのは主にカーボン製の自転車。
カーボンは軽く、剛性が高いことが特徴で、鉄では難しい平べったい形のフレームを作成することができる。これによって空気抵抗を少なくする効果があり、より速く走ることができる。
また「競輪場の違い」の項目でも説明したように、ケイリンが行われるのは屋内競技場。横風を考慮する必要がないため、より空気抵抗の低いディスクホイール(タイヤの円盤部分が覆われているもの)を使用することが可能だ。
さらに、使用されるギア(ギヤ)にも違いがある。競輪では使用できるギア倍数が制限されており、あまり重いギアはかけられない。
一方、ケイリンでは(公表されてないものの)競輪より大きなギアを使用。これによって「踏み出しが重くて大変だが、一気にハイスピードを出すこと」が可能となる。
上の2つの写真は両方とも脇本雄太選手だが、ペダルの近くの歯車(大ギア)の大きさの違いは一目瞭然だ。