約2000人の競輪選手の頂点、S級S班。年間に6つあるG1レースの優勝者と獲得賞金上位者、合わせて9人が選出される。2000人の中のたった9人、トップオブトップの選手たちだ。

競輪レースの多くは3日〜6日の勝ち上がりで行われるが、1日に走るのは1本のみ。この1本のレースも、実際に走る時間は5分程度。このたった5分のために選手たちは日々研鑽し、己を痛めつけ続けているわけだが……

では、S級S班の選手たちは「1本のレース」でいくらの賞金を稼いでいるのだろう?2024年のS級S班となる選手たちの「1走あたりの賞金額」を計算してみた。

9人のうち、一番出走本数が少ないのは脇本雄太

2024年にS級S班となる9選手のうち、最も年間出走本数が少ないのは脇本雄太。自転車トラック競技で東京2020オリンピックに出場した元日本代表で、その実力は皆が認めるところ。しかし2023年8月のオールスター競輪で落車し「キャリア史上最悪」の怪我を負っ影響もあり、2023年の出走本数は全部で59本。次期S級S班で最も多く走った深谷知広は95本走っており、30本以上の差がある。

「出走本数」の面で大きなハンデがあった脇本だが、最終的には賞金ランキング8位まで上り詰め、次期S級S班の座を獲得。かなり「効率よく稼いだ」ということとなる。

そんな脇本の1走あたりの獲得賞金は……

153万1317円

た、確かに効率よく稼いでいる……

しかし驚くべきことに、脇本の「1走で153万」はS級S班の中でも4番目。脇本以上に「効率よく稼いでいる」選手がさらに3人いる。

3位:山口拳矢

5月の日本選手権競輪(ダービー)を制し、自身初のG1タイトルを獲得した山口拳矢。ダービーは6つあるG1レースの中でも最も優勝賞金が高い7900万円で、そのブーストもあってか1走あたりの獲得賞金は170万7370。なお年間の出走本数は79走で、9人の中では平均的な本数である。

2位:眞杉匠

眞杉匠も2023年に自身初のG1タイトルを獲得した若手選手。しかも彼は1年で2本のタイトルを獲得している。8月のオールスター競輪・11月の競輪祭それぞれの優勝賞金だけでも1億円を突破しており、それ以外のレースの賞金もあわせ、年間の獲得賞金は1億5757万円。そして1走あたりの獲得賞金は181万1239円となった。

1位:古性優作

ここまで挙げてきた3選手を引き離す勢いで「効率よく稼いだ」のが、今年3つのG1タイトルを獲得した古性優作だ。年間の獲得賞金は2億2230万円、1走あたりの獲得賞金は328万537円

そろそろお読みいただいてる皆さまの感覚もおかしくなっていると思うのでもう一度お伝えするが、

自転車で5分走って、328万537円

である。ちなみに国税庁によると令和3年度の20〜24歳の年間平均給与は269万円なので、5分で若者の年収分稼いでいることとなる。もちろん日頃のトレーニングがあるからこそ、そして共に走る仲間に恵まれているからこそこのような結果が出せるわけだが、改めて数字にしてみると凄まじい世界である。

参照:令和3年分 民間給与実態統計調査 国税庁(p.19)

1走あたりの賞金ランキング

選手名 1走あたりの賞金 年間獲得賞金 出走本数
1位 古性優作 3,280,537 223,076,500 68
2位 眞杉匠 1,811,239 157,577,800 87
3位 山口拳矢 1,707,370 134,882,200 79
4位 脇本雄太 1,531,317 90,347,700 59
5位 佐藤慎太郎 1,424,266 133,881,000 94
6位 松浦悠士 1,360,658 115,655,900 85
7位 清水裕友 1,273,881 91,719,400 72
8位 深谷知広 966,137 91,783,000 95
9位 新山響平 857,181 80,575,000 94

※2023年12月15日時点の情報で作成

トップオブトップが集うKEIRINグランプリ2023

ここまで2024年のS級S班の凄まじい世界をお伝えしてきたが、この9人が一堂に会するレースが『KEIRINグランプリ2023』だ。

2023年をトップで戦い抜いた9人による最高峰のレースで、優勝者の賞金は1億3000万円。このレースに出場した選手たちは翌年の「S級S班」となり、1年間彼らにしか許されない赤のレーサーパンツを履くこととなる。

KEIRINグランプリ2023は12月30日に立川競輪場で実施、インターネット視聴なども可能だ。「自転車に5分乗って○○○万円」の凄まじい競輪の世界を、この機会に覗いてみてはいかがだろうか。

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