今回入所する候補生のうち、5月12日から15日まで開催された『2023全日本選手権トラック』に出場した3人に、個別で話を伺った。いずれもジュニア時代にトラック競技で成績を残してきた3人で、全日本トラックには即席の「18 years old」のチーム名で出場していた。
中石湊
Q:入所式はどうでしたか?
自分が何をするわけでもないんですが、ちょっと緊張しました。前日にリハーサルみたいなのがあって、伊豆には全日本選手権が終わった5月16日から入っています。その1ヶ月前から山崎と阿部と日本大学の伊藤京介さんとで、伊豆で生活していました。
Q:それはどのような理由なんでしょう?
ナショナルの育成メンバーみたいなものに、自分たち4人が指名されました。4人中3人が養成所に入りましたが、伊藤さんは授業もあるので今は住んでたところからは離れてます。
Q:養成所っぽい質問に移ります。在所中に伸ばしたいのはどのような部分ですか?
インターバルトレーニングが多いと思うので、持久力系や心拍などを伸ばしていきたいです。自分にとって、3kmとかは他の短距離に比べて苦手な分野です。
楽しみに思ってるのは鉄フレームで走ること。ずっとカーボンで走ってきたので、鉄フレームでどこまで伸びるのかを発見していきたいです。
Q:キツそうだなと思っていることは?
全般的に練習がキツいイメージはあります。でもメンタル強化になると思うので、ひとつずつ頑張っていきたいです。生活面も慣れていかなくてはいけない部分が多いかなと思います。
Q:目前に第1回記録会を控えていますが、そこでの目標を教えてください。
早期卒業の記録と、全種目ゴールデンキャップタイムが目標です。できるだけ第2回に持ち越したくなくて、第1回で早期卒業を狙いたいです。
Q:今後のトラック競技との付き合いはどうなる予定でしょう?
養成所の練習を通して見えてくるであろう、自分の実力次第で決めていきたいと思います。自分が「世界で戦える」という立場にいると思えたら、チャレンジしていきたいです。
Q:アジア選手権などで結果を残している中石選手ですから、自信を持ってもいいんじゃないかと思うんですが。
ジュニアとエリートでは力の差がすごいです。ジュニアで勝てても、エリートは何倍も違うので、見極める必要はあると思っています。
山崎歩夢
Q:入所式はどうでしたか?
緊張しました。たくさんの人が見ていると思ったので……失敗しないようにと思いました。
Q:山崎さんの場合、お父さまが有名という部分もちょっとプレッシャーなのかなと思いますが。
自分としては「お父さんはお父さん、自分は自分」と思っているので、そこまでプレッシャーに感じたことはないです。
Q:中石さんと同じく伊豆には結構前から入っているかと思いますが、親元を離れる時にはどのようなやりとりがあったんでしょう?
一度伊豆に来て、1週間くらい練習してから、免許を取りに福島に戻ったんです。それが1ヶ月くらい前だったんですが、「競輪学校で頑張ってこい」と言われました。
Q:在所中の目標を聞かせてください。
とりあえず第1回の記録会で自分の力を見極めて、そこから在所中に伸ばしていきたい部分を考えていきたいと思います。第1回の記録会では全種目ゴールデンタイムが目標です。早期卒業タイムを1回で切れればいいなと思っています。
Q:それは「まあできるかな」と思うラインなのか、「ちょっと難しいかも」と思うラインなのか、どのくらいなんでしょう?
ゴールデンは多分大丈夫なんですが……早期卒業タイムはいけるかいけないか微妙なところです。
Q:過去に早期卒業した太田海也選手、中野慎詞選手などは、山崎さんから見てもやっぱりすごい?
すごいです。なかなか出せるタイムではないので。
Q:養成所生活での楽しみなこと、キツそうだなと思ってることを教えてください。
漢字の競輪を走るのが初めてですから、養成所で走ることが楽しみです。キツそうだなと思ってることは共同生活。早起きとかはいいんですが、決まり事が多いのがちょっと大変だなと思います。
Q:目指したい選手像を教えてください。
お父さんのように、お客さんに「魅せる」走りができる競輪選手を目指したいです。
Q:今は強化指定としても名前が入っていますが、今後のトラック競技との付き合い方はどのようになる予定ですか?
まだはっきりとは決めてなくて、在所中にタイムや実力を確認して、卒業するまでに見極めたいと思っています。タイム的な判断ラインがあるわけではなくて、気持ちの面の問題です。
阿部英斗
Q:髪型が可愛いですね。
切りすぎました(笑)
養成所で先輩に切ってもらったんです。「全体的に短く」とお願いしたらガタガタになっちゃって、「ガタガタなのを直しましょう」ってなったら直らないままここまで短くなりました(笑)でもこのまま行こうと思います。
Q:入所式はどうでしたか?
少し緊張しました。もう2週間前くらいからここにいるんですが、ちょっと気持ちが入ってないような、うわついたところがありました。でも瀧澤所長や中野さんを見て、「やっぱりちゃんとやらなきゃいけないな」と気持ちが引き締まりました。
Q:今名前が挙がったお2人はもちろんレジェンド的な方ですが、阿部さんにとっては生まれる前に活躍したくらいの方々かと思うんですが。
僕は昔の競輪が大好きなんです!仮面ライダーより競輪を見てきたくらいで、お2人は憧れのヒーローです。
親が仮面ライダーやゲームが嫌いで、あまり見せたがらなかったんです。「だったらスポーツを見ろ」という感じで、そんな中で自分が夢中になったのが競輪でした。何千本レースを見たかわからないです。
Q:好きな選手を1人挙げると、誰でしょう?
村上義弘さんです。ラインを大切にするレースをしますし、どんなレースでも手を抜きません。大好きでした。目指したい選手像も村上さんです。
Q:親元を離れる際にはどのようなことを言われましたか?
母に「自分の決めた道だから、投げ出さず、しっかりやり切って帰ってきなさい」と言われました。
Q:自転車以前は何かスポーツをしていましたか?
4歳くらいの頃からトライアスロンをやっていました。本当は小学生からなんですけど、混ぜてもらっていて。水泳で3番目で上がってきて、自転車で一番になって、でも最後のランで順位を落とすような感じ。自転車が一番得意でした。
トライアスロンのコーチに「競輪選手を目指してみたら」と言われて、それで初めて見た競輪のレースが『競輪祭』でした。白熱のレースだったことを覚えています。
Q:在所中に強化したいと思っていることは?
自分は昔からレースを見てきて、展開を読むことや駆け引きが得意。でもそれに足がついてきていない感じです。この1年で足をしっかりつけて、先行もできるような選手になりたいと思っています。
Q:自分の中にいろんな作戦が蓄積されてる感じですね。
そうですね、競技でもクジを引いて「◯番か、どうしよう」とはあまりなりません。「じゃあこうしようか」とすぐに出てくるタイプです。
Q:楽しみなこと、キツそうだなと思ってることを教えてください。
同じ目標を持つ仲間たちがたくさんいるので、その中で切磋琢磨できるのがすごく嬉しいです。特に楽しみなのが競走訓練。養成所はずっと憧れてた舞台で、競技ではできないことがたくさんあります。駆け引きを学んでいきたいです。ワクワクしてます。
一方、回転力が弱いので、ローラー練習はキツそうだなと思ってます。
Q:第1回記録会の目標は?
ゴールデンキャップを取ること、これ一択です。タイムがどうのというより、ゴールデンキャップを狙っていきたいと思います。
Q:今後競技とはどのように付き合っていくつもりでしょうか?
競技でここまできたからには、「できればやりたい」という思いはあります。でもオリンピックでメダルが取れないようなレベルだと競輪も疎かになると思うし、「どちらもやれる」という自信がつくまでは競技は難しいかなと思っています。
Q:中途半端になるのが嫌、ってことですね。
はい、ずっと競輪選手を目標にしてきました。競輪を疎かにしたくないとは思っています。