大分県で実施された「ビーチノーマライゼーション」

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デフビーチバレーボール協会理事長 牛尾洋人さん インタビュー

地名度を上げるために、取材を利用

Q:すごく楽しい取り組みだと感じました。

単純に海に来られた方や、上で行われている自転車を体験している方、この取り組みを知らない方にも、我々スタッフがお声かけをして参加していただいています。

Q:どれくらいこの活動を続けられているのでしょうか?

2022年度から積極的に「ノーマライゼーション」と謳って、この体験型での活動を行っています。

デフビーチバレー協会は2017年9月に設立しました。ただビーチバレーの教室や大会などはその5年前、2012年から行ってきています。

デフビーチバレーボール協会理事長 牛尾洋人さん

Q:自治体や学校との連携はどのように実現しているのでしょうか?(※今回は地元の中学生が多く参加していた)

単純に「会いに行くこと」ですね。連絡して会いに行き、自分たちを知ってもらうことです。ただ団体設立当初、大分県で関係各所を回っていたときは、私の見た目もあってか、「お前は何者だ?」という雰囲気がすごくありました(笑)

Q:もともと牛尾理事長はビーチバレーボールの選手だったと伺っていますが……。

はい。でも「髭をはやして、何かイカついヤツが来たな」みたいな感じで思われていたのでしょう(笑)

「大分で協会を立ち上げます!」と言っても、反応は薄かったです。ビーチバレーが大分ではメジャーではありませんでしたから。少しマズいなと思いまして、地元の大分合同新聞に取材をお願いしました。「大分で根を張って活動していきたい」と言って、活動内容や経緯などを説明して、無理やり取材していただいた過去があります(笑)

その記事を持って、「私は大分合同新聞にも載っている、こういう人間です」と名刺代わりにさせていただいていました。大分合同新聞様には感謝しかありません。

Q:これはオフレコでしょうか?(笑)

いえ全然。これは皆さんに言っていることですから。

そういった経緯で始まった取り組みですが、3月には『国際親善大会』を開催する予定です。

※取材は2月。大会の様子はこちら

仰々しい大会名ですが、デフビーチバレーのナショナルチームが3・4チームほど参加する大会で、2023年で5回目となります。この大会は毎年、大分県の田ノ浦での開催を目指しているものです。その他にも大分県内での活動として、ビーチバレー教室や聾学校訪問なども行っています。

選手は増加している訳ではないのですが、そういった形で知ってくださる方や「一緒にやりましょう」と協力してくださる方々は増えている実感があります。

互いに思いやる

Q:実際に皆さんが活動しているところを見ていると、聴覚に問題がないようにも見えますね。

そうなんですよね。外で開放的にできるこのスポーツがそうさせるのか、集まってくる方々が皆良い人だからなのか……根本的な理由は明確ではありませんが、双方が「楽しくやろう」と協力して努力している結果、あまりハードルを感じさせないのかもしれません。

でもやはり見えにくいところでは、コミュニケーションがうまく取れていなかったり、話していても深い理解にはつながらないことがあったりします。ですので、見て楽しそうだからだけではなく、完全に理解していただけるような努力を心がけています。

今日も通訳の方をつけたりだとか、できるだけ配慮しながら行っています。逆に、聴覚障害者以外の方でも、手話を覚えようとする方や、簡単な挨拶だけでも手話を学んで交流してくれる方がいらっしゃいます。お互いがお互いを思いやる、という機運は生まれていると思います。

Q:今回の取り組みやイベントにも、そうした目的があるのでしょうか?

はい。ただビーチバレーをしたり、ただ強化を行うのではなく、「お互いに理解すること」を意識しています。

単純に障害者のためだけにやるのではありません。障害者は守られるだけの存在ではないと私は思いますし、障害者の方が健常者の方を助けることもあると思います。ですからお互いを知って、お互いの足りないところや求めていることをビーチバレーやビーチスポーツを通じて分かり合えれば、より良い活動になるのではないかと思っています。

晴れると最高、でも雨だと大変

Q:ビーチでスポーツを行うのもすごく気持ち良さそうですよね?

はい。でも雨だとそうも言っていられないんです(笑)

※3月の大会時は残念ながら雨でした

Q:雨でも中止にはしないのでしょうか?

はい。雨天決行なんですが、結局誰も来ないんですよ(笑)

でも事前申し込み制ではないので、誰か来るかもしれないじゃないですか。だからいつも待っています(笑)

雨の中、ネットを設営するのは結構寂しいんですよ。でも雨天決行なのに、もし誰か来てやっていなかったら嘘つきになってしまいますし、もちろん1人でも来ていただけたらマンツーマンで教えます(笑)野外のスポーツなので、これは仕方がないことですね。

Q:今日来ている方にも先ほど伺ったのですが、地元の学校でバレー部・クラブに入っている方々もいらっしゃいました。そうした方にはどのようにお声掛けをしているのですか?

ビーチバレーを何度か体験したことのある方々ですね。メインは室内のバレーですが「ビーチバレーをすることで室内のバレーにも活きることがある」と、選手や指導者の方々には思っていただいています。

監督さんにも直接お伺いしましたが、選手たちを無理やり参加させているのではなく、選手自身がビーチに行きたがっていると仰っていました。今日来ている選手たちは、雨の日でも「やりまーす!」と言って来てくれるんですよ。この後、午後になると室内バレーの方に行くそうです。「『バレー馬鹿』がいるなぁ」と思って見ています。私もそうなんですけどね(笑)

打ち込みたい!人にはお勧め

Q:素人の質問にはなりますが、ビーチバレーは室内バレーよりもプレーする人数が少ないのにコートは広いですよね。総合力が鍛えられそうだなと思ったんですが、どうでしょうか?

まさにその通りですね。ただ室内バレーは9m×9m(片方の陣地)のコートなんですが、ビーチバレーは8m×8mで少し小さいです。ネットの高さは室内と同じなので、その分高く跳んで打ち込む必要があります。

その他にも、ビーチバレーはチームで3回ボールにタッチして相手コートに打ち込むスポーツで、1チーム2人制なので、1人1回は必ずボールにタッチできるようになっています。6人制の室内バレーだと、特に下のカテゴリーになると、人数合わせで端っこにいさせられる選手もいたりします。なのでビーチバレーは、「私が僕がタッチしたい!打ち込みたい!」という方に向いているスポーツだと思います。

打ち込みたい!

Q:「私が僕がタッチしたい!打ち込みたい!」選手の集まりなんですね?(笑)

はい。でももちろん1人ではできません。相手を思いやれない選手がいるチームはなかなか勝てません。自我も協調性も必要という難しさはあるかもしれません。

より細いことを言えば、ビーチバレーには補欠がいません。1人でも怪我してしまうと、そのチームはプレーできなくなってしまします。そうした意味でも「お互いを思いやること」が重要です。奥深いスポーツだと思います。

Q:現在ではどれぐらいの頻度でこういった取り組みを行なっているのですか?

色々な助成事業様からのご支援もあり、2022年の10月や2023年の1月にも開催しました。月1ではないですが、2ヶ月に1回以上は行っています。

我々もデフの練習を行う時などは、色々な方に声を掛けて一緒に練習できるような取り組みも行っています。4月以降は月に1回など、徐々に頻度を上げていければと思っています。

2025デフリンピックが東京で開催

Q:デフビーチバレーに限らず、ビーチバレーボール自体を広めることが1つの目的なのでしょうか?

はい。デフビーチバレーも健常者が行うビーチバレーもルールは同じです。ビーチバレー選手が増えれば、デフビーチバレーの選手と一緒に練習することも可能です。私自身も元ビーチバレーの選手だったので、大阪や東京にいる元チームメイトたちに声を掛け、それぞれの地域でデフビーチバレーボールの普及にも協力してもらえるようになっています。

それに2025年にはデフリンピック(※聴覚障害者のオリンピック)の開催も決まりました。2017年にデフビーチバレー協会を立ち上げた頃から「日本でデフリンピックが開催されること」を信じていました。

どんな分野で、どんなサポートができるのか……我々団体としても学んでいくために、「国際大会の主催・運動」という取り組みを毎年実施してきました。

Q:どういったところに課題があるのでしょうか?

国際手話や英語を使いこなせる方など、通訳スタッフの配置が1番大変です。国際手話ができる方が日本には少ないですし、国際手話ができる方が聾者であれば、その方への通訳も必要になります。

説明の際に手話が必要

スタッフが十分にいる大会であれば、どんなことが起こっても対応できる体制を作り出せます。しかし限られた予算の中では、必要な人員を限定していく作業が必要になります。そうしたことが1つの大きな課題ですね。

ですので現状では、大会に参加していただく各国チームのスタッフにもお手伝いをお願いしています。第1回・2回大会ではマシューという健常者であるポーランドの監督に、開会式などの大会アナウンスの国際手話通訳をお願いしました。彼へはなんとか我々が英語で伝えて、その英語から彼に国際手話へ訳してもらいました。

よりきちんとした大会では、そうした体制ではいけないと思うのですが、2025年に向けた課題を把握していくことを目的の1つとして、今後も国際大会の実施は継続していきたいと思っています。

競輪の支援

Q:デフビーチバレーの助成団体のなかには競輪の補助事業も含まれています。実際どのように役立てられているのでしょうか?

主に「体制整備」や「物資の購入」に助成金を役立てています。以前までは自前で購入することも珍しくはなかったので、非常に助かっています。そうした支援で購入した物資等のおかげで、今後の活動にも繋げることができます。

一過性のイベントや事業ではなく、残るものへの支援をいただくことで、仮に今後助成金をいただくことが難しくなったとしても、いまあるノウハウなどを使って改善していくことができます。

今回はバランストレーニング器具の購入にも助成金をいただきました。デフビーチバレーの選手の場合、毎回集まって練習することが難しいこともありますので、自宅などでの自主練習も必要となります。我々団体だけでなく、各選手への配布用としても器具を購入させていただき、大変ありがたいです。

Q:バランストレーニング器具とはなんでしょうか?

ゲーム感覚でバランストレーニングが行える、「ボボ」という器具です。しんどいだけのトレーニングでなく、遊び感覚も取り入れることで、この先ジュニアの選手など、広い視野を持って選手数を増やしていきたいと思っています。

もちろんビーチバレーに来ていただきたいですが、広い目で見れば「デフの子どもたちの体を動かす機会を増やしたい」と思っています。この先別のスポーツに進んだとしても、その経験は本人や日本のスポーツのためになると考えています。低年齢から運動を始めてもらうきっかけとしても、今回購入を認めていただいた器具は色々な場所に持っていきやすいです。

デフの方でも健常者の方でも、バランス能力には個人差があります。元々三半規管に障害がある方もいらっしゃいますし、ビーチボールを扱うテクニックは上手だけどバランスを取るのが苦手という選手も多くいます。もちろん片足立ちができても、ビーチボールをする上でのバランス能力が高いとは必ずしも言えません。ですが、今回購入した器具を使用して、使用した選手たちからフィードバックをもらいながら、パフォーマンスが上がるような取り組みをしていこうと考えています。

ビーチバレーは砂浜なのでバランス能力は必要ですが、どのスポーツにおいてもベースになる能力です。さらに言えばスポーツをしない方にも全ての人に必要な能力だと思います。そうした意味でも、バランス能力という分野に今年度取り組もうとしていまして、色々助成事業にも申請を行っていました。そして今回競輪の補助事業として、その目的などに賛成をいただき、支援していただけることになりました。

バランストレーニングに使用しているイスラエル製の”BOBO PRO” 本来ならばモニターなどを利用して行うが、今回は特別に品物だけ見せていただいた。

日本代表 瀬井達也選手インタビュー

Q:2025年に日本でデフリンピックが開催されますが、どのように捉えていますか?

まだ代表に選ばれてもいないですが、2025年に向けてデフビーチバレーボールを知ってもらえたらと思っています。前回のデフリンピックでは、ブラジルまで行って、戦うことも出来ませんでした。今回は是非ともメダルを獲りたいです。

※前回大会はブラジル。現地で新型コロナ感染が急拡大し、日本選手団として「大会途中棄権」となった。ビーチバレー競技に関しては、予選通過を決めて決勝トーナメント直前での大会棄権となった背景がある

Q:ビーチバレーの魅力は?

この球技はメンバーが2人だけで、すごく運動量が必要です。ボールを拾っては打ち込んでいくので、ファインプレーに注目してみてもらいたいですね。

今後の大会や活動の予定はDVBF公式Facebookページにて公開されている。

皆さんにも是非参加していただきたい。