速く走るには高い「ギア比」が必須?
ギア比を高くすれば、一漕ぎでより長い距離を進むことができる。しかしギア比を高めるほど、一漕ぎがより重たくなる。
6段変速の一般的な自転車(いわゆるママチャリ)でも1番大きいギアの6段目にするとスピードは速くなるが、漕ぐのが重たくなり、よりパワーを要することはご存知の通りだろう。
ギア比を高くしすぎて、漕ぐのが困難になってしまうと効率的にスピードが出しにくくなってしまうのだ。
ちなみに、ママチャリのギア比は2.21〜2.29ほど。
そしてシュテファン・ビッセガーが「ツール・ド・フランス2022」の第1ステージで使用したギアの組み合わせは、現地メディアによると、64T(大ギア)と10T(小ギア)*。ギア比は「6.4」という計算になる。
「4人乗ってもビクともしない」かどうかはさておき、一般人からすると凄まじい重さであることが想像できる。
※ロードレースに使用されるロードバイクには、「〜段」などの異なる歯数のギアが前後に複数枚付いている。64Tは大ギアの1番大きなギア、10Tは小ギアの1番小さなギア。
パワーがあれば「ギア比を上げる」の一択?
では、重いギアを漕ぐことができるパワーがあれば、ギア比を高めるべきなのだろうか。
自転車競技ではパワーを示す値として、「ワット数」という指標がある。
ニコラス・ポールやミリアム・ヴェチェなど、世界トップレベルのトラック選手らも所属する「WCC(UCI World Cycling Center)」にてコーチを務めるクレイグ・マクリーンは、
「ワット数が高いからといって、速く走れるという訳ではない。最小限の力でいかに効率良く漕ぐことができるか、そのバランス、そして戦術によってその能力やバランスを使い分けることができるか、というのがトラック競技において重要なのです」
と語っている。
また、自転車競技では重いギア比を漕ぐパワーと、そのギアをどれだけ速く漕ぐことができるかという「回転数」(Cadence・ケイデンス)、そして空気抵抗などもスピードに影響する重要な要素だ。
それらの要素を最適なバランスに保つには、パワーだけでなく、その他の能力や戦術を考慮して、自分にあったギア比を選ぶことが重要なのだろう。