講義「これからの生き方」

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①どうして人はアスリートの言葉に耳を傾けるのか?

この質問に対しては「アスリートは苦しいことを乗り越えているはずという前提があり、説得力がある」「一般の人よりも努力が可視化されている」「アスリートはヒーローインタビューなど『伝える場』が多い」などの意見が飛び交う。

これらはアスリートの持つ「物理的ではない”力”」と言えるだろう。今後、受講生らのセカンドキャリア、デュアルキャリアの模索の中でヒントになり得そうだ。一方で、引退後に裏方に回った時には苦労する要因になるかもしれない(必ずしも誰もが裏方になるわけではないが)。

➁ビジネスとスポーツの共通点・相違点とは?

共通点としては「努力して結果を出す」「トライアンドエラーを繰り返す」「プロジェクト・チーム性」、相違点としては「身体的限界による引退の有無」「生活必需か不必需か」「持続するのがビジネス、クライマックスとなる大会等があるのがスポーツ」などの意見が挙げられた。

講師の北野氏からは「これはあくまで私の目線ですが」という前置きの上、「役に立つこと、人を喜ばせることが根っこなのは同じ」「希少性で値がつく」という共通点と「完全実力社会であるスポーツと、そうでもない面もあるビジネス」「努力が必要なスポーツと、努力より工夫が大事なビジネス」といった相違点が挙げられた。

これらを経て、最後に「ビジネスのタネの探し方」のテーマを語り、講義も〆に。

「今回の講義のゴールは『ビジネスの楽しさ』を伝えること。何事もそうだと思いますが、突き詰めれば突き詰めるほど楽しいです。ビジネスをいろんな観点から、いろんな人と話しながら突き詰めるのは、とても楽しい。今日の話がみなさんにとって新たな観点になっていたら、とても嬉しいです」と北野氏は語った。

新田祐大「とても響く内容」

受講後の新田祐大選手に講義の感想を伺ってみた。

新田祐大, KEIRINグランプリ2020, 平塚競輪場

「北野さんの今回のお話は、参加者にとても響く内容だったと思います。僕らの過去の授業をチェックした上で、僕らのレベルに合った資料作成をしていたように感じました。

講義の中で、昨今の社会のキーワードとして「越境」「学び直し」「楽しむ力を持つ人」がありました。北野さん自身もこのキーワードに外れない、学びの姿勢を持ち続け、圧倒的な努力をしている人だと感じましたし、授業に参加しやすい雰囲気づくり、受け答えしやすい環境づくりを心がけているようにも感じます。

作家を生業とする人、そして部下を従える経営者としての、あるべき姿だと思いました」

元来「選手が競技以外のことを考えるとはけしからん」といった向きのあるスポーツ業界。本プログラム学長の大浦征也氏が「アスリートがキャリアを真剣に考えることは、必ずや競技レベル向上にも通ずるものだと思います」と語るように、それらは決して分断されるべきものではないだろう。「アスリートも社会人」。当然のことではあるが、それを改めて実感する2時間の講義だった。

アスリートキャリアアカデミー 公式サイト