自転車競技の常識は、一般の非常識・・・かも知れない。自転車競技の世界へどっぷりと浸かっている選手や家族にとっては当たり前だが、外から見ている人たちや他の競技を取材しているメディアにとっては驚きな事がある。この企画ではそんな自転車競技の不思議について迫り、答えを求めていく。

自転車競技の「なぜ?」

どうしてなの?何故そんなことをやっているの~?第2回も自転車トラック競技について。

なぜ固定ギアなの?

なぜなぜ?の経緯

以前の記事でも記載したが、固定ギア「ピストレーサー」と呼ばれるトラック競技の自転車には、ブレーキも無ければ走行中はギアも変えられない(ギアは交換式)。

Final / Men's Team Pursuit / 2020 Track Cycling World Championships

世の中にはギアチェンジが出来る自転車がたくさん出回っているが、走行中にギアを変えられる自転車を使うことは、これまで一度も考えられなかったのだろうか?

UCIの回答:効率性・安全性・そしてコストの問題。過去に変速機使用もあった

この件についてUCIに問い合わせてみた。ブレーキがなく、固定ギアの自転車を使うことには3つの利点があるとのこと。それは効率性・安全性・コストだ。

まず効率性。固定ギアでチェーンをきっちりと必要な長さで繋ぐことにより、より力が効率的に自転車に伝わる(力の伝達のロスが少なく、伝達速度も速い)。

Final / Men's Keirin / TISSOT UCI TRACK CYCLING WORLD CUP V, Brisbane, Australia, Matthew GLAETZER マシュー・グレーツァー Kevin Santiago QUINTERO CHAVARRO ケビン・キンテロ

ギアチェンジが可能であると、超絶パワーのスプリンターがパワーを存分に発揮できない・・・というか壊れてしまう可能性がある。もちろん他にも理由はたくさんあるが、まず挙げるべき答えとなるそうだ。

2点目は安全性。もしロードバイクの様にブレーキが付いていると、レース中に選手が注意不足となり、レースが危険になる可能性があるという。さらに、バンクの傾斜があるベロドロームで急ブレーキをかけると転倒リスクが高まる。一方で固定ギアはスピードの調整が緩やかなため、トラック競技を行う上では安全性が高いと考えているとのことだ。

Women's Scratch Race / TISSOT UCI TRACK CYCLING WORLD CUP IV, Cambridge, New Zealand

3点目はコスト。ディレイラーなどギアチェンジに必要なパーツは、自転車の右側についている。選手が転倒する際も右側へ転ぶことが多く、ギア変更に必要な機材がトラックの表面を傷つけてしまい、板張りのトラック表面がどんどん劣化していく。これはベロドロームの維持コストを考えると得策とは言えないとのことだ。

伊豆ベロドローム

他にも理由はたくさんあるが・・・との事だが、大まかなUCIによる回答は以上だ。

そして独自の調査により、90年代初期にはギアチェンジが行えるバイクでトラック競技が行われていた事も判明した。1kmタイムトライアルで使用されていたが、ギアをチェンジする際にチェーンが外れたり、最初のギアを軽くし過ぎてバランスを崩したり・・・・・等といった問題が発生していたようだ。

何故こんなに種目が多いの?

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