「マレーシアトラック競技の父」と称される、世界的な名コーチをご存知だろうか。
その名はジョーン・ビーズリー(John Beasley)。
アジアの英雄アジズルハスニ・アワンを育て、リオ五輪ではマレーシア初となるオリンピックトラック競技でのメダルを獲得。2017年にはアワンをケイリンで世界一にし、東京五輪では、そのアワンがケイリンで銀メダルを得た。
![アジズルハスニ・アワン Azizulhasni Awang (MAS), Men's Sprint Qualifying AUGUST 4, 2021 - Cycling : during the Tokyo 2020 Olympic Games at the Izu Velodrome in Shizuoka, Japan. (Photo by Shutaro Mochizuki/AFLO)](https://i0.wp.com/morecadence.jp/wp-content/uploads/2021/08/20210804-AL101084.jpg?resize=1960%2C1307&ssl=1)
アジズルハスニ・アワン(Azizulhasni Awang)
今回食事情を話してくれた際に、マレーシアのトラック種目事情、そして日本への期待を語ってくれた。
インタビュー形式にて、世界的名将の言葉をお届けする。
ジョーン・ビーズリー(John Beasley)
Q:いろいろとお話を聞かせていただきます。今回はアワン選手は出場せずですね。
はい。体調が良くないことに加えて、来月にはネーションズカップが控えているためです。今回アジア選手権で必要なポイントは出場中の選手たちが獲得してくれますから、アワンはネーションズカップ第2戦に集中する予定です。
Q:アワン選手とビーズリーコーチ、お2人のコンビは既に長期間組まれていますが、どこまで続くのでしょうか?
私もアワンもパリ五輪で今の役目は終わる予定ですよ。その後は、今の日本でいうブノワテクニカルディレクターのような役割に就任する予定です。これからはマレーシアのコーチを育てていき、自国のコーチたちに跡を任せるつもりです。
![ブノワ・ベトゥ, 2024アジア選手権トラック, 2024 ASIAN TRACK CYCLING CHAMPIONSHIPS, New Delhi, India](https://i0.wp.com/morecadence.jp/wp-content/uploads/2024/02/061_AL100307.jpg?resize=1960%2C1307&ssl=1)
ブノワ・ベトゥ テクニカルディレクター
日本チームは今は外国からのコーチたちを招へいして結果を出していますが、彼らがずっと居るわけではないと思うので、自国のコーチを育てることに力を入れるべきだと思いますよ。
Q:確かにそれは日本チームの課題ですね。現在はブノワTDを始め、皆が上野みなみジュニアコーチを育てようとしてくれています。
そうですね。上野さんがチームに入って頑張っているのは我々も知っています。とても良いことですね。
![丸山留依, MARUYAMA Rui, 上野みなみ, JPN, 男子ジュニア ケイリン 1回戦, MEN'S Junior Keirin 1st Round, 2024アジア選手権トラック, 2024 ASIAN TRACK CYCLING CHAMPIONSHIPS, New Delhi, India](https://i0.wp.com/morecadence.jp/wp-content/uploads/2024/02/020_STR00461.jpg?resize=1960%2C1307&ssl=1)
上野みなみ ジュニアコーチ
近年の日本チームの力強さ、発展は目覚ましいですが、培った基礎を更に発展させてアジア全体を引っ張っていってもらいたいです。日本が強ければ、周りのチームが日本を倒そうと強くなっていきます。
そして皆で切磋琢磨することによってアジア全体のレベルが上がっていきます。そのためにも日本チームには強くあり続けてもらわなければならないと思っています。
![酒井亜樹, SAKAI Aki, JPN, ニューラル・モフダスリ, MOHD ASRI Nurul Izzah Izzati, MAS, 女子スプリント 3位決定戦, WOMEN'S Sprint Final for Bronze, 2024アジア選手権トラック, 2024 ASIAN TRACK CYCLING CHAMPIONSHIPS, New Delhi, India](https://i0.wp.com/morecadence.jp/wp-content/uploads/2024/02/054_AL100593.jpg?resize=1960%2C1307&ssl=1)
ただ、チームの強化は力を抜くと構築してきた物が一瞬で崩れていきます。そうならないためにも日本の強化チームだけでなく、周囲のサポートチームも一丸となって今の成長を止めることなく走り続けて欲しいです。
Q:マレーシアがアジアをけん引していくというのは難しいでしょうか?
そうですね……マレーシアのトラック競技選手は、プロアマ含めて100人程度でしょうか。日本と違って人数が少なすぎて難しいと思います。トラックは国内に2つしかありませんし、教える人もいない。そのような状況なので難しいですね。
![アジズルハスニ・アワン, AWANG Mohd Azizulhasni(MAS) ,Men Elite Sprint, 1/8 Finals, 2023 Track World Championships, Glasgow, Great Britain](https://i0.wp.com/morecadence.jp/wp-content/uploads/2023/08/063-20230805-STR01767.jpg?resize=1960%2C1307&ssl=1)
いかにアワンが活躍して、トラック競技をやりたいと思って興味を持っても、やる場所が無いのです。こういった状況を変えるには多大な時間と労力が必要になるため、難しいと言わざるを得ません。
しかし、政府の補助などを受けてロードレースの数を多くしたり、トラック競技の大会を行ったりと努力をしていることは加えておきます。
![中野慎詞, アジズルハスニ・アワン, AWANG Mohd Azizulhasni, MAS, ムハマド・シャローム, SAHROM Muhammad Shah Firdaus, MAS, 男子ケイリン, MEN'S Keirin, 2023アジア選手権トラック, 2023 Asian Track Championships Nilai, Malaysia](https://i0.wp.com/morecadence.jp/wp-content/uploads/2023/06/249-20230618-AL102083.jpg?resize=1960%2C1307&ssl=1)
食事情を聞こうと思ったら、思わぬ話になってしまった。
アジアの強国から見た日本は、もはや「自転車トラック競技の大国」。周囲の注目を集めている日本なだけに、アジアのリーダーとしてトラック競技をけん引する役目を担い始めている。世界を目指す上で成長してことが周囲の成長にも繋がることを実感したビーズリーコーチの言葉だった。