日常会話で使わない言葉が多い

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HPCJCは目標が同じ、だから伝わる

ジェイソン・ニブレット アリス・ボナミ

Q:HPCJCにはたくさんスタッフがいるので、引っ張りだこになってしまうのでは?

そこまでではありません。ある程度英語でコミュニケーションが取れる人もいれば、勉強中の人もいます。みなさん自分でコミュニケーションを取ろうとするので、本当に大事な場面で私が出ていくことが多いです。

本当に心から伝えようとする人たちが多いので、なんとなくではありますが、ボディランゲージも含め言いたいことは伝わっている・・・と私は思います。誰もがチームのために働いていて、一体感もある。だから上手くいっていると感じています。

Q:言葉の選び方に工夫はありますか?

「その人が発した意味と気持ちを、そのまま相手に届けること」が通訳の仕事です。さらにビジネスと違い、スポーツの世界になると「感情」が混ざってきますね。その「感情」はブノワコーチにとって重要な部分となります。

「コーチの仕事はただ成績を残すだけでなく、人と気持ちを共有し、共に歩む冒険だ」とよく言います。

日本語では気持ちが含まれる表現や文法・・・「~してくれる」「~てしまう」のようなもの、あるいは擬音語が多いですが、フランス語には直訳できません。同じ意味の言葉を頭にストックし、選手の気持ちが正しくコーチに伝わるよう心がけます。

また選手によっては、よく使う言い回しや言葉がありますね。私がそういったキーワードを使うことで、コーチの言葉がより響き、選手にストンと理解してもらえるようになります。

2019 Track Cycling World Championships Pruszków, Poland

Q:HPCJCが出来て変わったことは?

ここ1年で形になってきたように思います。現場で特に感じるのは、空力テストの影響。選手をより速くするため、出来ることを全てやってくれていますね。予算や、諸々の手続きや・・・細かいこともたくさんあるとは思いますが、技術的に選手を速くすることが出来ている点が、一番大きいと思います。

選手が速くなるためには、機材、服装、健康管理等、オモテには見えないものがたくさんあります。HPCJCができたことによって、そのような要素が全てまとまり、最適化できるようになりつつあります。また細かい部分までしっかり調べたり、研究開発をしたりして、全体的にチームを強化してくれています。

Q:HPCJCには中長距離の通訳として柴みちるさん(2020年~現在)もいますが。

自分がやってきた中で、苦労した点はお伝えしています。「私がみちるさんに伝えていることを、あの頃の私が知っていればもっと楽だったのになぁ」と思います(笑)。

ただ短距離と中長距離では選手のキャラクターが違います。実際どうかはわかりませんが、中長距離の方が若い選手が多いので、やり方も変わってくるでしょう。

私が蓄積してきたことは出来る限り共有していますし、逆に日本語を相談することもあります。情報を共有しつつ、2人とも日々研鑽しています。

「存在を消すのが私の仕事」

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