自転車トラック競技日本ナショナルチームを支えるHPCJC(High Performance Center of Japan Cycling、以下「HPCJC」)にはコーチ、メカニック、メディカル、トレーナー、科学分析班といった様々なスタッフが揃っている。選手を多角的な視点から分析し、支え、さらなる高みへと引き上げるためのプロフェッショナル集団だ。

短距離種目ヘッドコーチとして2016年に就任したブノワ・ベトゥコーチ。フランス、ロシア、中国と3ヶ国のナショナルチームを知る彼にとって、日本のHPCJCはどう見えているのか?比較、問題点、そしてこれからの展望。このプロジェクトにかける想いを伺った。

【前編】日本トラック競技の「未来」に続くプロジェクト トラック短距離ヘッドコーチ ブノワ・ベトゥ氏インタビュー/トラックナショナルチーム HPCJC

「競輪」がもたらす光と影

Q:前編では「監督の質」についての話がありました。日本のこのような状況は、どんな理由によって起きていることなのでしょうか?

先ほど「競輪のおかげで・・・」という話をしたのですが、一方でこの問題については競輪が大きな問題になっています。

海外では競技を引退したあと指導者の道に進む人が多いです。しかし日本の選手が競技を引退すると、競輪選手になる/戻るパターンが多い。

海外では引退した選手が指導者の道へ進むことで監督が育ちますが、日本ではそうなりません。競輪選手は魅力的です。競技人生が長いし、お金も多く稼げます。私が日本人だったら同じことをしていたかもしれません。しかしこれが監督が育たないことの一因になっていると思います。

Q:競輪選手の指導者としてのスキルについてはどう考えますか?

この4年間をナショナルチームやHPCJCで過ごした人たちの中で、私の仕事を引き継ぐことができる人はいると思います。実際やるなら、まずはジュニアから、といった形になるとは思いますが。

ただ、ここで押さえておきたいのは「日本の自転車競技はどこを目指すのか?」です。

松浦悠士

例えば松浦(悠士)さんは競輪の賞金でかなり稼いでいますよね。となると競技にいく必要はどこにあるんでしょう?競技の面で壁にぶつかり、競輪での成績も落ち、お金もロスしてしまう。そういうことを考えると、競技に行かないという選択はとても理解出来ます。オリンピックに行きたい、競技の世界で成績を残したいという競輪選手ももちろんいます。でもその気持ちがなかった場合、「なんで日本を出る必要があるの?」となってしまうわけです。

多くの競輪選手は「日本のトップになりたい」という意識はあれど、世界で戦うことまで考えることは、なかなかできないのではないかと思います。そしてそれは「日本をトラック競技でトップにする」という強い政治的意向がなければ、変わらないでしょう。

Q:その政治的意向がなければ競輪選手養成所にいる選手を引き抜く、そして興味を持たせるということが今のやり方でしょうか?

競輪選手養成所で人材を発掘して競技に興味を持たせる。これはとても良い機会となっていますし、養成所は才能の「蔵」のような場所でもありますね。

「競技と競輪の両立」は可能か?

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