自転車トラック競技日本ナショナルチームを支え、かつ次世代選手の育成にも力を入れるために日本自転車競技連盟が立ち上げたHPCJC(High Performance Center of Japan Cycling、以下「HPCJC」)。コーチ、メカニック、メディカル、トレーナー、科学分析班といった様々なスタッフが揃っている。選手を多角的な視点から分析し、支え、さらなる高みへと引き上げるためのプロフェッショナル集団だ。

短距離種目ヘッドコーチとして2016年に就任したブノワ・ベトゥ氏。フランス、ロシア、中国と3ヶ国のナショナルチームを知る彼にとって、日本のHPCJCはどう見えているのか?比較、問題点、そしてこれからの展望。このプロジェクトにかける想いを伺った。

充実してきたが、まだ発展途上

Q:2016年に就任してから5年が経とうとしています。振り返ってみていかがですか?

コーチとして就任した2016年当時、スタッフも全然いなくて、椅子しかないような状態でした。でも「人を集めていきたい、最終的にはトレーニングセンターを作りたい」というプロジェクトと認識しており、それは私とジェイソン(・ニブレット短距離コーチ)だけでできることではありませんでした。スタッフの採用や契約は、総務的な仕事ですからね。1年後にミゲル・トーレスがやって来て、彼のおかげで状況が整ってきました。

それがひと段落すると、次は機材を購入する必要が出てきました。プロフェッショナルな仕事、環境づくりに必要なものです。

そんな風にひとつずつ段階を踏んで、3年かけて環境が充実してきましたが、まだ発展途上です。

Q:日本チームの成長には目覚ましいものがあります。

ええ、とても速いスピードで形になったと思います。ある意味では驚きもありますが、様々な支援があったからこそです。

資金面ではJKA(競輪を統括する公益財団法人)に助力をいただいたおかげで、かなり時間を短縮することができました。競輪のおかげでトレーニングセンターがあるし、競輪のおかげで能力のある人材を得られたとも言えます。

ブリヂストンも、とても良いパフォーマンスをする機材を提供してくれました。これを利用し、さらにJKAとHPCJCが協力し、風洞実験も行うことができました。

Q:HPCJCの強みと弱みはどこだと考えますか?

強みは競輪、JKAとの協力体制ですね。資金面で大きな後ろ盾になってくれていますし、能力のある人材を発掘できています。それから、組織の仕組みが良い状態になっていることも強みです。

弱みは建物がないところ。物理的にHPCJCの入る建物がない、ということです。科学的、技術的なツールを置き、さらにチームを発展させるための場所が欲しいところですね。将来的には風洞実験やパワーテストができるような施設が欲しいです。

現状、風洞実験をするにはイギリスまで行かなければなりません。これではトップレベルの国とは言えません。本来機材は秘密にしておくものなのに、その実験が国内でできないのですから。ライバル国にみすみす情報提供してしまっているようなものです。

Q:今のHPCJCの完成度は何パーセントくらいだと考えますか?

50%です。やらなければならないことはまだたくさんあります。少しだけ基礎を作りましたが、まだ脆い。モチベーションの高い人材を集めたものの、施設面が不完全である以上、ここまで構築したものがいきなり全部なくなる可能性もあるでしょう。

もちろん資金面で壁があることはわかっています。ですが日本が現状で満足するのか、それともトップ国を目指すのか、その分岐点となる問題だと思っています。

日本とトップ国との違いとは

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