自転車トラック競技日本ナショナルチームを支え、かつ次世代選手の育成にも力を入れるために日本自転車競技連盟が立ち上げたHPCJC(High Performance Center of Japan Cycling、以下「HPCJC」)。コーチ、メカニック、ドクター、トレーナー、科学分析班といった様々なスタッフが揃っており、選手を多角的な視点から分析し、支え、さらなる高みへと引き上げるためのプロフェッショナル集団だ。
自転車競技は「機材スポーツ」とも言われている。もちろんアスリートたちの身体無しには語れない競技なのだが、自転車無しには競技は成立しない。そしてその自転車の良し悪しで勝負が左右されるスポーツでもある。
今回はその自転車の組み立て、細部に亘る調整、メンテナンスなど、チームの自転車について全てを担うチーフメカニックとして活躍する森昭雄氏と、アシスタントメカニックの齊藤健吾氏にインタビューを行った。メカニックの仕事や、世界の中での日本の立ち位置とは?「縁の下の力持ち」たちが語る、知られざる世界をお伝えする。
HPCJC設立から2年、仕事をする環境が整ってきた
Q:HPCJCができて2年ほど経ちました。環境の変化は感じますか?
森:メカニックからの視点で物事を語るとすれば、組織としてしっかりしてきましたし、システマチックに物事が動くようになったと感じます。昔はメカニック、コーチ、マネージメントする人たちがそれぞれ得意なものを持ち寄って、そして出来ることを探して何とかやっていましたが、今はそれらを組み合わせ、きちんとシステムとして成立させているように感じます。
設備面でいうと、例えば工具類など、以前は僕らが私物を持ち込んで仕事をしていました。今は専用の部屋もいただき、大型のものを含めた工具類を準備してもらえるようになりました。HPCJCの設立前と比べると相当環境面が整ったと感じています。
そもそも話ですが、以前は単発の依頼で仕事をしていましたから、長期的な設備はありませんでした。今はメカニックの仕事は年単位で契約をしていただいているので、伊豆にアパートを借りて単身赴任の形で暮らしています。雇用形態、暮らしの面でもHPCJCが出来て大きく変わりました。
齊藤:僕は森さんとは業務形態が異なり、週の5日は練馬、2日は伊豆にいるといった生活です。先日のHPCJCのトレーニングの一貫として実施されたオリンピックシミュレーションの時は、前後の準備・片付けを含めて2週間くらい伊豆に滞在していました。
※齊藤メカは練馬の自転車ショップのクラブチーム「スミタ・エイダイ・パールイズミ・ラバネロ」のメカニックも兼任している
HPCJCが出来て環境は大きく変わったと感じます。より専門的なことが的確にできるようになりました。以前と比べると全く違いますね。
森:とはいえ、まだまだ揃えきれてない部分はあります。ゆくゆくHPCJCではロードやBMXの選手やスタッフも集めようとしています。ですが、そうなれば各種目の専門性を持ったメカニックたちも集まってこなければいけません。時期的にいつになるかはまだわかりませんが、そうした体制を作っていくことで、オリンピック以降もこの流れが続いていくことを願っています。
そうしなければいけないと思っています。