仕事をする環境が整ってきた

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日本と海外のメカニック

Q:2人から見て、メカニックの環境が良いと感じる海外のナショナルチームはどこですか?日本はどれくらいの位置にあると感じますか?

森:HPCJCができたことで、メカニックの待遇も海外に並ぶものに一足飛びに進化したと感じます。でもこれが世界のトップ3に入るか・・・というと、まだ足りないです。イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、アメリカなど、HPCJCのような仕組みを作っている国はメカニックの体制も良く整っていると感じます。設備面でも、施設内にメカニックルームのほか、ジムやサウナやジャグジー、宿泊施設を完備しているようです。

齊藤:イギリスの施設(マンチェスター)にはイギリス自転車競技連盟やBMXのインドア練習コースも一緒になっていますし、まさに自転車競技の拠点という感じがしますね。

マンチェスターベロドローム

ニュージーランドではメカルームを見せてもらったことがありますが・・・

Q:それはオープンに見学ができるようになっているのですか?

齊藤:いえ、あちらのメカニックメンバーと仲が良いので、特別に見せてもらえました。オランダでも倉庫をチラッと見せてもらったりしました。

Q:特別に見せてもらえたということは、メカニックルームは通常公開していないということですよね。機材の情報漏洩防止が主な理由なのでしょうか?

齊藤:そうですね。加えて盗難防止だと思います。ヨーロッパだと自転車はすぐに盗まれますし、昔は日本から遠征していたチームが、ロードの大会で2回ほど車の中身を盗まれたことがあるそうです。そういう場合は他のチームや主催者からスペアバイクを借りたりしてレースを続行するのですが・・・ご想像の通り大変です。

森:特にオリンピックとなると、何が起こるかわからない部分はあります。「ドーピングに引っかかるようなものを混入される」等ということは、今までも起こってきたことです。盗まれるのならば、目でわかるのでまだ良いのですが、もしオリンピックの当日にネジ1本緩められたりしたら、もうそれだけで”終わり”です。同じメカニック同士でも、用心しなければいけない側面があります。

日本も実力がついてきて、世界チャンピオンを有するまでになりました。だからこそ、「何か」が起こる可能性を出来る限り低くすることも私たちの仕事の一つなのです。

トレーニング時は何かあった場合の対応

2020ヌメア合宿

Q:トレーニングの時はどのような関わり方をしているのでしょうか。

森:トレーニングの時は大会時に比べてメカニックの人手が少ないこともあり、選手個人がそれぞれで自転車を組み立てることが多いです。ですが、ちょっとしたトラブル・・・タイヤに傷が入った、などということは頻繁に起こりますので、そういう時にスペアを用意したりします。なので、トレーニングでは「何かあった時」の対応がメインの仕事になります。トラブルがあれば練習が終わってから修理を始めますので、自然と帰りは遅くなってしまいますね。あとは選手の機材の管理、メンテナンス調整なども行っています。

日本のメカニックの現状

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