東京オリンピックに向けた対策
Q:最近レースの前後で選手が見慣れないグッズを使っているのを見かけますが、あれもメディカルスタッフで管理しているのでしょうか?オリンピックシミュレーションの時などはオムニアムの選手たちは体温を測っていたりと独特なことをしていましたが?
中山:・・・HPCJCのトレーニングの一貫として実施したシミュレーションの時、オムニアムの選手たちはレース後に体温を測っていましたね。あれは「レースでの体温の上昇具合を知りたい」というコーチの意向があって実施していました。体重も測っていましたが、水分の減り具合を測るためです。オリンピック当日はすごく暑くなるでしょうし、当日の対策の下準備ですね。
オムニアムの2人は4種目を走るので、特に対策が必要です。中長距離メンバーは飲み物に氷を入れて、キンキンに冷やしたものを飲んでもらっていました。
井上:短距離メンバーにはそこまでの対策はしてませんでしたね。中長距離に比べると身体が暑くはなりませんので。
Q:もしこの記事を読んだ短距離メンバーが「自分にもやってくれ」と言ったら、やるんですか?
井上:そこは、栄養士の判断ですね。
中山:ピット内における動きの半分くらいは、栄養士の仕事なんですよね。僕らも補給食を準備したり、ジェル系を準備したりといったことはしますけど、すべて栄養士の指示通りに行っています。
マッサーの仕事が多いのは自転車競技の伝統?
Q:レースの時のお2人の仕事は、終わってからの選手のケアがメインなんですね。では会場ではどのようなことを行うのでしょうか。
中山:さっき言ったような口に入れる物の準備だったり、足にオイルを塗ったりもします。あと選手によっては、鼻の通りをよくするためにハッカを塗ったりもします。あとはしっかりと選手とコーチを見ておいて、必要な時に必要なサポートをするという感じです。長く一緒にいるので、どのタイミングで何を求められるかは大体わかります。
井上:他の競技を経験した上で思うことですが、自転車はマッサーの仕事が幅広いですよね。マッサージ以外にも、ドリンク作りとか、他の仕事・・・雑務と言うと言葉は悪いかもしれませんが、買い出しとか、選手の送迎なども行っています。それが長年の「当たり前」だったから、今もそういうことが当たり前にマッサーに求められるのだろうなと思います。レース時の仕事ですが、僕の場合は落車時の対応が大きな仕事でしょうか。ドクターがいない場合は、僕が脳震盪や骨折があるかを確かめるテストをして、レースを続行させるか、病院に送るかなどの判断をします。ですからマディソンなどはビクビクしながら観ていますよ(笑)
メディカルって、その場の選手の成績だけじゃなくて、その大会以降の成績とか、競技生活を終わってからの人生なども考えなきゃダメなんです。後遺症の危険性があるのにレースには出させられないですし、答えが有るようで無い場面での判断も多いです。すごく緊張感を持って仕事をしています。そして自分の持つ医療知識が古くないか、常に情報更新を行うようにしています。