コンタドール、バルベルデなどが台頭した年代

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予想外の自分の未来 日本の可能性

Q:当初は現在の立場になる自分のことを想像出来なかったですか?

全然想像していませんでした(笑)

ただ、初めて日本へ来た時に潜在能力の高さを感じて驚きました。選手・リソース・東京オリンピック・競輪・学校の部活動などです。しかしながら、日本の潜在能力を感じると同時に、それを活かすことが出来ていない事が残念だとも感じました。そこから私が何か出来るのではないかと考え始めたのです。

Q:他国と比較してという事とは思いますが、具体的にどういった部分が残念だったのでしょうか?

まず、当時の日本はトラック競技で戦える国ではなかったと認識しています。トラック競技の短距離では興味深い結果を残すこともありましたが、安定して結果を出すという訳ではありませんでした。

当時も才能のある選手はいたのだと思いますが、システムや考え方が良くなかったのだと思います。だから現在行っているようなこと、他の国がやっているようなことを実施していなかったので、世界のトップに立つ事は不可能でした。

当時は合宿をベースに選手の強化が行われていました。毎月のように合宿があったようですが、それは4~5日の合宿が行われていた程度です。いくら強くなりたくても、月に4~5日のトレーニングを行うだけでは足りません。

一方で他国の選手たちは毎日激しいトレーニング・リカバリー・科学的な分析などに励んでいるのです。日本はそれに対し月に4~5日の合宿で対抗しようとしていたのですから、勝ち目が薄いことは明白ですよね。

ですから今の体制になり、毎日強くなるための環境が整っている。これこそが大きく変わったことです。我々がハイパフォーマンスを発揮するためのシステムを導入しました。能力のあるトップレベルの選手たちには、能力向上へ適した環境が必要です。日本に才能のある選手はたくさんいますが、以前はその才能を開花させる環境が無かったのです。

Q:それは来日以前から分かっていましたか?それとも来て初めて分かったことですか?

来てからですね。実際に来てみて様々な物事に対して改善の余地があることが分かりました。国際大会などでは、どのチームも慌ただしいのでチームや国の状況はよく分かりませんし、特に日本はヨーロッパから遠く、情報がありませんでした。

私が日本へ来た頃、選手たちは自分たちで自分たちの居場所を探さなければならず、トレーニングもほぼ自分たちでやらなければならない状態でしたし、機材も自分で用意と・・・そのような環境で世界のトップを獲ることは期待できませんし、期待してはいけませんよね。

日本に材料は揃っている、問題はどう“料理”して美味しく仕上げるか

Q:一方で、そのような状況でも日本にたくさんプロ競輪選手が居るということは魅力的に映りましたか?

もちろんです。それが潜在的な可能性の大部分だと思いました。2000人以上の自転車プロ選手がいる国は地球上に唯一、日本のみです。そしてロードに対しても日本は特別な国だと思います。私が来た時、高校の自転車部や自転車クラブの数は200以上あると聞きました。これは世界的に考えて、とてつもない数なんです!

スペインは部活動ではなく、地域のクラブが主な自転車競技の場所となっています。私が子供の頃にお世話になったサイクルショップが経営するようなクラブばかりで、お金も無ければコーチも居ない。

一方で高校の部活動であれば、限度はあるにせよ部活動としての資金は出ますし、先生もコーチの代わりになってくれます。機材も新しくはないにせよ用意されていますし、大会なども行事の一つとして行われます。

そしてロードのプロチームも沢山あります。ですから他の国に比べてこれは凄い事なのです。ロード競技でも日本は大きな可能性を秘めていると言って良いでしょう。

ですから「どう質を上げていくか」それを考えるだけで良いのが日本です。日本の自転車に携わる人数はとてつもない数で、自転車産業は世界的に見ても大きいです。我々が挑戦しなければならない事はシステムの構築と、それに伴う質の向上です。

個人的に、素材は全て揃っているのが日本だと思います。素材をどう料理するのか。そこさえ上手く出来れば、アメリカが野球やバスケットボールで強いように、日本は自転車大国になれます。そしてそれを行うのがHPCJCの至上命題でもあります。

日本を自転車競技最強の国にすること、それが私、そしてHPCJCが在る理由です。

他国のハイパフォーマンス事情

Q:イギリスなど自転車のハイパフォーマンスの最先端を行くような国だとどういった形で運営しているのでしょうか?

イギリス、フランス、スペイン等、どの国も同じような形ですが、資金の出どころが異なります。

イギリスならば宝くじが資金調達の場となり、調達した資金はイギリスの自転車連盟がコントロールします。イギリスのハイパフォーマンスセンターは我々と同じように連盟に属しています。

一方でスペインは政府がハイパフォーマンスセンターを作っています。ただし政府が作るハイパフォーマンスセンターは全スポーツに対しての施設なので、自転車だけに特化した施設ではないこと、リソースの取り合いが発生することがありますね。

Q:様々な国のハイパフォーマンスセンターを知るトーレスさんですが、理想的なモデルケースはありますか?

スイスのWCCのようなモデルも頭の中にはあります。CSC(日本サイクルスポーツセンター)がWCCのような形で機能するということです。設備はトレーニングセンターに属し、それらを使うのはHPCJCといった形ですね。

最終的にはイギリス、スペイン、スイス…この3ついずれかのモデルを踏襲する形になるでしょう。

Q:いずれが日本に合っていると考えますか?

スペインモデルは難しいと思います。私の考え方としてはイギリスとスイスの中間位かと。

これから競輪選手たちの能力向上にも関わっていきたいですし、新しく始まる『250競輪』で存在感を示していきたいとも思っています。そうなれば日本のトラック競技レベルは飛躍的に向上するでしょう。

イメージとしてはバスケットボールにおけるNBAのような形です。NBAはアメリカの国内リーグですが、並ぶような他国のリーグはありません。そのリーグから排出される選手たちは世界でも無敵です。

私はそのようなことが日本でも起こり得るのではないかと思っています。250競輪が始まり、我々と競輪選手が力を合わせれば驚異的にレベルを高める事が出来ます。

そしてその鍵を握るのはコーチの育成です。中学や高校時代からハイレベルな指導を行う事が出来れば、国全体として強くなることが出来ますからね。

決定スピード、日本の組織に大事なこと

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