下の世代を育てていきたい
Q:オリンピックの後は競技を続けていくのでしょうか。
今は「東京オリンピックで最後にしよう」と思っていますけど、その時になってみないとわからないですね。東京オリンピックの後、中長距離の女子が一気に減ってしまう可能性があるんです。
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現在一緒にトレーニングをしている中で、カジと稀絵(古山稀絵選手)より下の世代がいません。唯一は、現在競輪選手養成所にいる(内野)艶和ちゃんのみです。
※内野艶和:2019ジュニア世界選手権のポイントレース世界チャンピオン
チームパシュートを走るなら出場するのは4人ですが、強い国は最低6人くらいのメンバーを保持していて、交代させながら戦っています。それを考えると、引退は迷ってしまいます。
でも競技人生を終えたら、下の世代の強化に携わっていきたいという想いがあります。千葉に250バンクができるので、そこで高校生の強化に携わっていきたい。そしていつかはナショナルチームに携わりたいとも思っています。
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伊豆のバンクはナショナルチームメンバーじゃないと練習できないんですよね。千葉の250バンクで、千葉の子たちをはじめとした高校生をもっと走らせて、育成していければと思うんです。そこからナショナルに送り出すような環境を作りたいな、と。せっかくここまでの環境が出来上がってきているのに、選手がいないんじゃどうしようもないです。
ニュージーランドとかは、ポイントに余裕のある大会では下の世代の子達をレースに出場させたりしていました。それくらいのことができるようにしたいです。
Q:そのためにも、オリンピックで活躍しなきゃですね。
そうです。注目してもらうことで様々なことが変わりますし、下の世代を育てていかないと・・・・です。
ナショナルコーチ陣は指導者としてのお手本
Q:指導者の道を考えているとのことですが、教えるのは好きなんですか?
高校生の頃から思ってることなんですが、自分が走るよりマネージャーのような「選手を支える側」をやる方が好きなんです(笑)
高校、大学って人数が足りなかったので自分も走っていましたが、同じ学校のチームメイトのサポートをすることも多かったんです。それが結構好きでしたね。会社でもイベントなどで子どもや一般の方に教えることがあるのですが、楽しく取り組めました。
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Q:そんな教師タイプの中村選手から見て、クレイグコーチ、や短距離のコーチたちはどう見えますか?
皆さんすごいと思います。特にブノワコーチは有言実行できるところがすごいと思いますし、なんと言うか・・・「強い」じゃないですか(笑)?「私についてくれば全てが大丈夫」と思わせる感じがありますよね。その自信が持てるほどの指導力があるのがすごいと思います。
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ブノワ・ベトゥ短距離ヘッドコーチ
クレイグコーチは監督を長くやっていることも影響していると思いますが、選手の細かな変化によく気づいてくれます。全ての選手の話を聞いてくれることで、「みんな」をちゃんと気にかけていると思わせてくれます。
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クレイグ・グリフィン中長距離ヘッドコーチ
ジェイソン(・ニブレット短距離コーチ)先生は・・・面白いですね(笑)
ブノワコーチがいるから、その下でコーチを行なっていますけど、彼単独で十分コーチングができる人ですよね。だけどアシスタントコーチとして、自分の立場に合わせた指導をしているのがすごいなと。
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ジェイソン・ニブレット短距離アシスタントコーチ
高校、大学と様々な指導者と関わってきましたけど、そのトップが今のナショナルチームのコーチ陣ですし、世界を見回してもトップレベルだと感じます。目の前にそんな指導者たちがいるのはすごく勉強になりますね。もっと学びたいと思うんですが、自分のトレーニングもありますし、短距離とはトレーニングも別なので・・・勿体ない気持ちもあります。
Q:ちなみにガールズケイリンは考えてないのでしょうか?
まったく考えてないです。すごく誘われるし、会社としても関わりが深いんですけど・・・自分がガールズで走ってるイメージも、そこで勝つ姿もイメージが湧かないです。250バンクで育成に携わる自分の方がしっくりきます。
自転車競技の魅力とは
Q:中村選手は自転車をずっと続けていますが、どんなところに魅力を感じるんでしょうか?持久系とかって、まさに辛い練習だと思います。
そうですね、心身ともに辛いです(笑)続けるモチベーションになっているのは「満足感」でしょうか。本番のレースも練習でのタイムもです。
自転車競技の魅力として「スピード」とかもありますけど、もうスピードには慣れてしまいましたし・・・表彰台に上った時の満足感、タイムが出た時の満足感ですね。負け続けてたら嫌になっちゃいますし。
Q:これまでで一番「満足感」があったレースは?
まだまだ満足感は足りないですが・・・イアン(・メルビン前中長距離コーチ)が来て最初のワールドカップで3位を獲った時。あれは本当に嬉しかったです。あの日はすごく良い気持ちで布団に入りました。興奮して寝られなかったですけど(笑)
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チームパシュートは4人での競技ですから、複合的な喜びになりますよね。「チームが噛み合った感じ」とか「タイムの一定感」とか。オリンピックでメダルを獲れたら、あの時を超える満足感が得られると思っています。