前編はこちら【独占】前編:散った夢、新たなスタート…雨谷一樹インタビュー

ナショナルチームから離れて

雨谷一樹

Q:ナショナルチームの練習から離れて、どうですか?

毎日の練習メニュー自体は決めてるんですけど、何時からやるかとかは決めてないんです。子どももいるからなかなか時間通りにならないことも多く、そういう時にも柔軟に対応できるのでストレスは少ないですね。

Q:監督者がいないことで甘さが出ちゃう・・・なんてことは?

今のところはないですね。苦しいメニューをやると決めたらその通りやりますし、SNSでナショナルチームのみんなが苦しんで練習してるのを見ると「俺もやらなきゃ」となります。

「元ナショナルチーム」が競輪で活きる

JKA250落成式

Q:競輪選手として自転車競技を行ってきて、その中で何を得ましたか?

大雑把な言い方ですが、ナショナルチームはどちらかというと科学的なトレーニングで、競輪はまだ根性論が強い部分があります。科学的な最先端のトレーニング経験があるからこそ、競輪へフォーカスするようになっても、両者の練習方法の良い部分をうまく取り入れ、さらに強くなっていくことができると思います。

自分は1走なので、短いダッシュしか行ってきませんでした。でも脇本さん、新田さん、河端さんの練習メニューも全部知っています。その辺を取り入れられることは強みだと思っています。

Men Keirin 1st Round / GRAND PRIX OF TULA 2019

競輪は選手人生が長いと言われていて、30代からでもやろうと思えばできます。でも競技は、若いうちしかできません。若い頃から競輪選手だけをやっていたら、こんな経験はできませんでした。競技で今までやってきたことはすべて無駄じゃなかったと思いますし、競輪に繋げていけると思います。

Q:「競輪選手としてオリンピックを目指す」という生き方はお勧めできますか?精神的な面で変化がある、とか。

自分はブノワコーチに全部教えてもらいました。世界選手権の前は「戦場に行くと思え、死ぬ覚悟でいけ」と。だから競輪にも、そういう気持ちで臨むことが出来ています。

東京オリンピック トラック競技代表内定発表 ブノワ ベトゥ

世界選手権の直前ミーティングでは、ブノワコーチは1人1人に違うことを言っていました。「お前はこういう選手だから、こう行け」といった感じで。気持ちを上げさせることが上手い人だと思います。気持ちの面ってすごく大きいです。

Q:ナショナルチームを離れるのは辛くはありませんか?

悲しい気持ちがないわけではないですが、もともと決めてたことですし、競輪をやるって決めたらまたやることも多くて。先輩から「ダッシュだけじゃなく、地脚やメンタル、いろんな面を鍛えていくほうがいい」と言われて「確かに」と思ったんです。一つ一つを広げる練習をして、強くなるために話を聞いて。まだまだやることはたくさんあります。

1st Round / Men's Team Sprint / Track Cycling World Cup V / Cambridge, New Zealand

雨谷一樹

「総合力」で競輪を戦っていく

何でもできる選手になりたいと思っています。先行、捲り、粘り・・・すべてをやって勝てるようになりたいです。

Q:素朴な疑問ですが、そうやって満遍なく力をつけると、雨谷選手の尖った部分、強みが無くなる事はありませんか?

尖った部分を残しつつ、満遍なく力をつけていくイメージです。(競輪の想定)番組が発表されて、そのメンバーを見て柔軟に戦法を決める。それが競輪力だと思っています。また、横の動きはまだあまり得意ではありませんが、それも含めて強くなっていきたいです。本当は脇本さんや新田さんみたいな圧倒的なパワーで気持ちよく勝つのが理想ですが、なかなか厳しいですよね。自分は自分に合った戦法で、総合力で勝てるようにと考えています。

Q:雨谷選手はダッシュ力があるから、それに持久力がつけばすごく強そうな感じがしますが、そこには焦点は当てないのですか?

実はダッシュで高い能力を持つ人が持久力を付けることは極めて困難なのですが、一方で持久力のある人がダッシュ力を鍛えることは不可能ではありません。ナショナルBチームでいうと寺崎浩平くんや高橋晋也くんがそうで、地脚がしっかりあった上でダッシュ力をつけたことでメキメキ頭角を現したタイプです。でも逆のパターンって、今まで見たことないんですよね(笑)

寺崎浩平

寺崎浩平

ただダッシュ力があると、追走が楽ですね。過去に1走をしていた人で競輪のビッグタイトルを獲った例はあります。自分もそこを目指したいです。

Q:因みにダッシュ中に限界が来る時はどんな感じなんですか?力が抜けていく感じ?

「まったく動かない」って感じです。残り半周から自分の脚じゃないみたいな感覚。実際乳酸もたくさん溜まります。深谷にはこの感覚をまったく理解してもらえなかったので、これが「脚質の違い」ってことなんでしょうね(笑)

深谷はナショナルで、自分は競輪で「一花咲かせる」

日本からの応援団へのファンサービス!

Q:競輪人生よりナショナル人生の方が長いんですよね。今後は競輪選手として雨谷選手にとっては「新たな一歩」となりますが、ワクワクと不安はどっちが強いですか?

ワクワクですね。レースで強い人と走れるし、それをどうやってやっつけようかって考えてワクワクします。今までナショナルでやってきたこととは違うし、別の楽しさがあります。

深谷はGIのタイトルも獲っていますが自分は競輪で何もできていない状態です。だから一足先に引退して競輪で一花咲かせたいなと思っています。

今だから言える、ナショナルチームでの日々

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