背中に隠したビール

全てを捧げてきたからこそ味わえる一瞬のご褒美、そんな一瞬が大好きだ。周囲からはスーパーアスリートとして見られる彼女にも実は、ありふれた人々と変わりない一面がある。2014年に初めて個人種目で金メダルを獲った時、筆者はフォーゲルが表彰台へ上がる直前で背中にビールを隠していた光景をよく覚えている。

2014世界選手権(コロンビア・カリ)

「自転車の片付けをしている際にビールを飲んでいましたね(笑)大会最後の日には必ずビールを飲んでいましたよ。勝ち続けたといっても、何かが変わるわけじゃないんです。どの大会も、どのメダルも本当に重要で、本当に勝ち獲った時は嬉しいし、全てのメダルを獲った時は泣いていました。そしてビールでしたね(笑)」

虹色のジャージは魔法

勝ち続け、数多のメダルを手にしたフォーゲルにとっても、全ての勝利は初めて手にしたモノの様に特別なのだ。そして世界チャンピオンジャージは彼女にとっても格別な物だった。

決勝、クリスティーナ・フォーゲル vs ロリーヌ・ファンリーセン

「虹色のアルカンシェルを着ると“これから負けられない”と思うだけです。アルカンシェルを着ることは素晴らしいことですが、同時に多大なプレッシャーを選手に与えます。誰もがそのジャージを見て、誰もが気づき、誰もがその人の動きを気にします。だからいつも私は誰かから目を向けられていたと思います。でもそれらを除けば、虹色のジャージを身に纏うのは“魔法”に掛かったような最高の気分なんです。

・・・Vol.3「トラック競技は生活の全てであり、人生」へ続く