沖縄合宿に行けず芽生えた反骨精神
Q:冒頭のお話に戻りますが、三神選手が語っていたように、この大会が中石選手にとっても「分岐点」となる?
はい。次のオリンピックのことを考えると、今年の世界選手権に出られるかどうかで、大きな差が生まれると思っています。
Q:去年は怪我に苦しみ、今年の1月はナショナルチームの沖縄合宿に参加できませんでした。そこから世界選手権出場を実現できたら、美しいストーリーになりそうですね。
そうですね。今思えば、沖縄合宿に行けなかったことが、今に繋がっているかもしれないです。伊豆に残って、新田さんと小林優香さんに指導を受けながら、強くなることだけを考えて良い環境で練習できました。反骨精神というか、次の沖縄合宿には呼んでもらえるような実績を残してやろうという想いが生まれました。その結果、香港(4月に実施)での大会も含めて、気持ちの面で負けることなく走れたような気がします。
渇望する1kmTT初優勝
Q:まもなく始まる『全日本選手権』にて、自分のどんな走りに注目してほしいですか?
気持ちと本能で走る姿を見てほしいです。
Q:たしかに、中石選手は本能型っぽいですね。漫画『キングダム』に登場する麃公(ひょうこう)みたいな感じがします(笑)。
そうかもしれないです(笑)。頭が良い方ではないので、気持ちで走らないと。覚悟を決めて頑張ります。
Q:こだわりのある1kmTTは、特に負けられないですか?
2位のメダルばっかり家にあって、自分にはちょっとずつ金色に見え始めてるくらい優勝を欲しています(笑)。初優勝、狙っています。

Q:最終日ということで、体もキツいとは思いますが。
そのくらいがちょうど良いですよ。頭もボロボロになって、体もバキバキになった状態が1番タイムが出ます。
Q:恐ろしい話ですね(笑)。今回、レース後にフォーカスした「最も苦しんだでしょうアワード」があるという噂です。
走り終わった後はオーバーヒート状態で最強にキツいので。そっちも制して、完全優勝したいです。

無音の境地、新田祐大との対決
Q:1㎞TT、好きですよね。
好きですね。最近、ブラット・ピット主演の『F1/エフワン』という映画を観に行ったんです。そのなかで、最高に集中している時は無音の時間が流れる、みたいな描写があって。1㎞TTでも同じだなと思ったんですよね。
Q:実際にそういう体験があった?
2023年の全日本は、ベストタイムを2秒更新(1分1秒307)しての2位だったんです。その時はずっと無音で、ラインも外すことなく走れて、すごく気持ち良かったです。フィニッシュして音が戻って、タイムを見てビックリしました。良いタイムが出ない時は音も聞こえるし、ただただ苦しいだけですが、ベストが出る時って驚くくらい無音なんです。
Q:その無音の状態で走った後は、キツさはどうなるんですか?
走ったあとのキツさは毎回変わらないですね(笑)。まぁ、そこが好きな部分でもあります。他の選手の1㎞TTを見るのも好きで、いちばんキツいであろう3周目で速い選手とかを見るとめちゃくちゃアガる。気持ちで走る選手が多いのも良いですよね。
Q:ナショナルチームのコーチである新田祐大選手との対決にも注目ですね。
新田さん出るんですか?初めて聞きました!めっちゃアツいですね。新田さんが全日本で1㎞TT走る姿を沢山見ていたので、いつか全日本で勝負したいと思っていました。もう出場しないと言っていたのに、まさか戦える日が来るとは!ゾーン入った時の新田さんは誰にも止められないですから。めちゃくちゃ楽しみです。
ケイリン、スプリントは世界選手権の枠の取り合い、そして拘りの1㎞TTは新田祐大選手との対決&初のタイトル奪取と見どころが盛り沢山な2025全日本選手権トラック。果たして中石は世界への挑戦権を得ることが出来るのか。
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