デビュー3年以内の若手選手しか出ることができない『ヤンググランプリ』。2023年のヤングランプリにはトラックナショナルチームから2人の怪物が出場する。
中野慎詞と太田海也。2人は同期で日本競輪選手養成所を卒業(2人とも早期卒業)し、2022年にプロデビューを飾った。この記事では2023世界選手権で銅メダルを獲得した中野慎詞のヤンググランプリ前の心境に迫る。
プロフィール
1999年生まれ、岩手121期。
自転車を遊び道具とし、小学生の頃には「競輪選手になる」と心に決めていた元自転車少年。学生時代から競技で力を磨き、大学生のうちに自転車トラック競技日本ナショナルチームに加入。養成所では史上3人目タイの早期卒業適用者に選ばれ、2022年1月にデビューしている。早期卒業後は30連勝を達成しS級1班へ一気に駆け上がった。
2023年にはG1レースにも参加、8月に実施された世界選手権で銅メダルを獲得したことでヤンググランプリ出場を決める。
もうボロボロ、やりたいこともできてない
Q:競輪選手になってもうすぐ2年。ここまで振り返って順調ですか?
順調以上だったと思います。18連勝でS級特別昇級は昔からのからの目標でしたが、自分が夢を描いていた頃は「早期卒業」という制度がありませんでした。寺崎(浩平)さんたちが早期卒業したのを見て「俺も早期卒業したいなあ!」って思うようになって、そこから「目標」になって、そうして早期卒業を達成できて。
そういう部分を踏まえると順調ですし、早期卒業の部分に関しては目標以上だったなと思います。
Q:2023年を振り返っていかがですか?
競輪はボロボロだなと思います。やりたいこともできていないし、うまく走れていない。やるべきことをしっかりやって、それで負けていたなら良い1年だったと思うんです。でもやるべきことすらできていないで負けている。良い年ではなかったと感じます。
Q:出走本数も限られていますね。
そうですね、いきなりグレードレースなので、みなさん本当に強いです。ジェイソン(・ニブレット短距離ヘッドコーチ)は「お前の方が強いんだからこういう走りをしろ」と言うのですけれど、難しいです。
オリンピックへの”道”が開けたエジプトの金メダル
Q:では競技の方はいかがでしたか?
1年を通して良い結果を出せたと思います。自信にもなりました。やっぱり世界選手権が一番大きいですが、それに続くくらい印象に残ったのがエジプトのケイリン金メダル(ネーションズカップ第2戦)。ラストチャンス、「ここしかない」という状況の中でプレッシャーに打ち勝って優勝できました。めっちゃ嬉しかったですね。
世界選手権は嬉しさもあったけれど、「あそこでいけていたら……」という悔しさもありました。そう思うと、エジプトの金は本当に嬉しかったです。でも全レースを覚えていますし、印象に残っています。
「ですよね!」
Q:エジプトの金メダルによってオリンピックへの道が開けましたもんね。
終わってから、ジェイソンに「ここで獲らなければ後が無いということは、お前も分かっていたと思うけれど、スタッフもみんな分かってたことだよ。だからその中で成績を残した気持ちの強さはすごいことだ」と言ってもらえました。それで「ですよね!」って思って。
Q:(笑)
褒められたのが嬉しいとかじゃなくて、「ですよね!!」って感じでしたね。「みんな知ってたよね、それ!!」って。そういう目で見られていたし、そこで負ければ「そりゃもう何も言う権利ないよ」って目で見られる。言わないだけでみんなわかってたんですよね。
Q:太田海也選手も中野選手も、めちゃめちゃ濃い1年だったでしょうね。
そうですね、疲れたっす。でもこれからもっと疲れるんでしょうね。