4年連続で出場していたKEIRINグランプリを観戦側として見守った2022年。迎えた2023年、清水裕友は食生活の改善や出稽古での練習を取り入れ、苦手な夏も克服。KEIRINグランプリの舞台に舞い戻ることとなった。

2023年に模索したあれこれや、競輪祭に「去年の自分と同じ状況」で入った新山響平とのエピソードなど。大舞台にカムバックした清水へのロングインタビュー。

プロフィール

1994年生まれ、山口105期。2018年から2021年まで4年連続でKEIRINグランプリに出場していたが、2022年は出場を逃した。迎えた2023年は賞金を積み上げ、ふたたびKERINグランプリの舞台に舞い戻った。

観戦する側だった「KEIRINグランプリ2022」

新山響平, 新田祐大, KEIRINグランプリ2022, 平塚競輪場

Q:KEIRINグランプリ2022はどのように見ましたか?

練習後に競輪場で観戦しました。自分がグランプリを走る前に観ていたような感覚でした。やっぱり同地区として松浦(悠士)さんを応援しつつ、自分がいないのがどうこうという感覚はなくて、いちファン目線で観ていました。

Q:優勝は脇本雄太選手でしたね。

めちゃめちゃ強かったですね。仕掛けも長かった中、古性(優作)さんを押し切っての1着でした。「レベルが違うな」と思いながら見ていましたね。

残り2周のタイムがもうおかしい

Q:昨今の競輪はスピード競輪と言われますが、スピード&ロング競輪だなとも感じます。

そうですね。全員の仕掛けが早くなっていると思います。去年も早いと感じていましたが、今年に入って新山(響平)さんが2周突っ張るようになって、輪をかけて早くなった感じです。

上がりタイムを見ればそこまででもないと思いますが、赤板(残り2周)のタイムがもうおかしい。「ようこれで2周も保つなあ」ですよね。そこの違いが大きいなと思います。駆け引きの要素はちょっと少なくなっていますね。

Q:清水選手としての対策などはありますか?

自分に2周いける脚があれば話が早いのですが、そういう脚力はないので……位置取りとかで対抗を考えないと、という感じですね。

Q:清水選手は小学校の頃から競輪に憧れていたそうですが、当時の「憧れの競輪」とはまた違った姿になっているかと思います。

でも、それを寂しく思う気持ちなどはないです。現状で自分がどうやるかだなと思っています。

新山響平に茶々を入れる

清水裕友 新山響平, 高松宮記念競輪, 岸和田競輪場

Q:新山選手のことは高校時代から知っているとか?

はい、1学年上ですね。(高校時代は)先輩の中では「近い人」で、タメ口でも大丈夫なくらいでした。地区は全然違いますが、今も開催で話をすることはよくあります。

今年の競輪祭では控え室がすぐそこだったんです。去年は僕が同じ立場でしたが、新山さんは「この結果によって乗れるか乗れないかのライン」で開催に入りました。「俺は去年ダメやったから、あんま期待せんほうが良いんじゃないですか〜」っておちょくりました(笑)

新山響平, 競輪祭 前検日, 小倉競輪場

新山響平

その時の反応はあまり覚えてないのですが、いつもよりキツそうだったなとは思います。そりゃ当然プレッシャーはあるでしょうし、グランプリには乗りたいものですから。

自分も去年は6日間をすごく長く感じました。「気持ちわかりますよ〜」って茶々を入れて……

Q:おちょくるんですね(笑)一方清水選手は、今年の競輪祭はグランプリ出場に関しては安心モードでしたか?

いえ、抜かれる可能性は全然あったので、安心はしていませんでした。

2次予選で負けた時、正直「自分の自力じゃ無理」と思いました。人に茶々を入れてたけれど、僕自身も気持ちの良い競輪祭だとは思ってなかったです。気を紛らわすために茶々を入れていた部分もありましたね。

Q:新山選手は帰りの新幹線の中で決勝戦を見ていたそうです。

僕も去年は決勝を見ず、すぐ競輪場を出ちゃいました。中四国から決勝進出した人もいませんでしたしね。小倉には泊まったので、レースはホテルで見たかな。その「僕がグランプリを逃した決勝」で、新山さんが優勝したんですけどね(笑)

桑原(大志)さんがグランプリに出た時も競輪祭時点でギリギリだったのですが、残って決勝戦を見たんだそうです。だから残った方がグランプリには良いんじゃないか、僕は去年決勝見ずに帰ってダメだったから……と新山さんにも言いました。でも(結果としてグランプリ出場を勝ち取ったので)、そういうところも実力だと思います。

自分は決勝前の時点でほぼ確定になってたので、今年はだいぶ気楽でした。

清水裕友, サマーナイトフェスティバル(G2), 函館競輪場

桑原T

苦手な夏を克服した

清水裕友, 決勝, オールスター競輪, 西武園競輪場

Q:2023年はG1やG2の決勝進出、防府記念の6連覇などいろいろあったかと思いますが、印象的なレースはありますか?

オールスターの決勝ですかね。毎年夏場が全然ダメで、オールスターはいつも踏んだり蹴ったりの成績だったんです。でも今年は後輩のおかげでなんとか決勝まで進出。決勝は自力でしたが、しっかり仕掛けるところで仕掛けられて、自分としては良いレースだったと思います。苦手な夏を克服したような感じがありましたね。賞金も上積みできました。

賞金面でグランプリを意識し始めたのも、オールスターからでした。あれは2023年のハイライトだったかなと思います。

犬伏湧也, 清水裕友, 香川雄介, 日本選手権競輪, 平塚競輪場

5月のダービー(日本選手権競輪)は良かったんです。その後、6月7月がちょっと振るわない感じがあり、「また夏、ダメか……」と思いました。もともと気温などで夏が苦手だったのですが、今年はアップの仕方や食べるものなどを試行錯誤したんです。それが良かったんでしょうね。

「これでちょっとでも変わるなら」という気持ちで、例えばアップ中のドリンクにシークヮーサーの原液を入れたりしていました。夏に合わせて自転車を重くしたりもしましたね。

Q:軽くではなく、重く?

はい。夏はバンクが軽くなるし、レースのスピードも上がるので。他にもアイシングとか、指定練習をスキップするとか、いろいろ試したことでちょっと噛み合ったのかなと思います。

Q:指定練習をしてなかったんですね。

今年の夏はしなかったですね。あれで結構バテちゃうんです。

例年5月のダービーは毎年決勝にも乗れるんですが、その後くらいから怪しくなってくる……6月なんかは湿気で溺れるんじゃないかと思っちゃうくらいで、自分にとっては一番厳しい季節です。そして夏を越え、寒くなっていくにつれて調子が上がっていく。神経質ではなく、どちらかといえばガサツな方なのですが、夏の湿気だけは苦手です。

「朝食、食べた方がいいっすよ」

Q:朝食を食べるようになった、というのも拝見しました。

もともと痩せようと思って朝食を抜いてたんです。5年前くらいに朝食抜きを始めて、昔よりは絞れてきて……でも結局朝飯を食べないと動きが悪いですね。

今年に入って体重が思うように増えなくなったこともあって、面倒だけど朝食食べるか……とやってみたら、体調も良くなったし体重も増えるようになり、朝からちゃんと練習もできるようになりました。

人間として「ちゃんと食べないといけないな」と思いましたね(笑)

朝はエネルギーを摂らないと。競輪選手以前の問題でした。気づくのに5年かかりました。トレーナーの人にも「朝飯食わないのはありえん」と言われましたね。

でも、以前にもヒントをくれる人はいたんです。新型コロナが始まる前に佐賀の山田英明さんと小倉で練習した際、午前はダメなのですが、昼飯以降一気に動きが良くなったんです。その時にヒデさんが「朝飯食べた方が良くない?昼を食べてから人が変わったようになったよ」と言っていて。それでも変えてなかったんですよね。

Q:そういった変化によって、1日の質が上がるというか。

それは感じます、全然違いますね。仕方がないから寝る時間を削って朝飯を食べます(笑)

Q:練習する日は、どのようなスケジュールですか?

7時半くらいに朝飯を食べ、コーヒーを飲みながらちょっとゆっくりして、9時から練習スタートという感じです。もがきすぎて吐く、ということはこれまで1回もないです。練習でリバースしたことって本当に1度もないんですよね。

Q:それはすごいですね。

アマチュアの時に1000mを3本とかもやってたのですが、吐くところまでいけないみたいです。胃液が上がってくるまではあるのですが……内臓が強いということにしておいてください(笑)

深谷グループでの練習で得たもの

深谷知広, 第39回共同通信社杯, 青森競輪場

深谷知広

Q:2023年の新しい試みといえば、静岡記念(2月)の前に深谷知広選手と練習されていましたね。

僕ら山口県って練習グループというものがあまりないんです。競輪場に来た人が一緒に練習する、という感じ。

静岡では深谷さんを中心とした練習グループがあって、あらかじめ組まれた練習メニューをこなしていきます。僕らは集まった人たちで「今日はこれやるか〜」って感じなんです。ちゃんと計画して練習している、そういうところに新しい発見がありました。

「楽しく練習してる」というと言葉が変かもしれませんが……いきいき練習してる感じがありました。自分も「自転車って楽しいものだったな」と思い出したような気がします。

Q:というと、楽しめてない時があったということでしょうか?

去年はなあなあなところがあったなと思います。練習をしていないわけじゃないのですが、目的があってしているわけでもない。2022年は気持ちが切れてる時間が多かったなと思います。出稽古先では迷惑をかけられませんから、気持ちを入れてしっかり練習できて、充実感がすごかったです。

Q:その出稽古から持ち帰ったものはありますか?

はい。取鳥雄吾や久保田(泰弘)と練習する際は、3人でメニューを決めながらやっています。「計画する」までは出来ていないですが、レースに向けて課題を見つけ、それに合わせた練習をできているのかなと思います。

Q:明確な目標、モチベーションがないと質も上がらないと思います。清水選手の今のモチベーションはなんですか?

基本は「G1で勝ちたい」です。去年も口では言っていたのですが……気持ちが薄い部分があったと思います。今年は改めてG1を目標に練習できてたと思うので、それが結果的にグランプリに繋がったのかなと感じます。

モチベーションは「勝った時の嬉しさ」

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