観戦する側だった「KEIRINグランプリ2022」

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モチベーションは「勝った時の嬉しさ」

清水裕友, 決勝, オールスター競輪, 西武園競輪場

Q:競輪選手になる前に「何歳までにタイトルを……」など、色々思い描いていたと思います。順調ですか?

順調でしょ(笑)!かなり順調だと思います。

競輪学校(現:競輪選手養成所)の時に書かされたんです。○年にこれになって、○年にグランプリに乗って……みたいなもの。それで書いたよりも早いんじゃないでしょうか。それこそグランプリに乗れる選手になれるとは思っていませんでしたから。順調すぎて怖いくらいです。

Q:2年前にインタビューさせていただいた際には「40歳までに燃え尽きたい」と話していました。

それは今でも変わっていません。40歳でやり切って辞めるのは一つの理想ではあります。でも今、40歳超えて強い人なんていっぱいいます。「プロスポーツ選手は30半ばが旬」という先入観で40歳と言っていましたが、その時になってまだバリバリ戦えるようなら「もっと走りたい」と思うでしょうね。

この仕事を20年やると思った時は「20年って長いな」と思ったのですが、もう半分が経過しています。「あと半分」と思ったらちょっと短いかな?って思っちゃいます。でもここ2・3年燻っていたので、40歳で「やり切る」には間に合わないかな(笑)

Q:順調すぎるほどに順調にやってきて、金銭面でも気持ちの面でも満たされているかと思います。モチベーションが見つけづらくなったのがここ2・3年でしょうか?

お金が欲しくてタイトルが欲しいというわけでなく、お金がモチベーションにはならないんですよね。今年のグランプリの優勝賞金は1億3000万円ですが、それが欲しいから獲りたい、というわけでもないです。物に対するモチベーションもそこまでではないし……車とかも買いますが、「そこに向かって」ではなく「欲望のままに買う」って感じで。

Q:それができちゃう経済力ががすごいですが……(笑)

だから車もモチベーションにはならないんです。お金も物もモチベーションにならないなら、じゃあなんのために走るか?と思ったら、仕事だから。勝った時の嬉しい気持ちを味わいたくてやっているのかもしれません。負けたら面白くないですからね。

清水裕友, 第39回共同通信社杯, 青森競輪場

去年気持ちが切れていた時も、負けたら気持ちが面白くありませんでした。タイトルを獲った時はすごく嬉しくて、それをもう一度味わいたい。どちらかといえばそっちなのかなと思います。

Q:「勝ちたい欲求」なのか「負けたくない欲求」なのか、でいうと?

どっちだろう〜?難しいですね。勝ちたい気持ちが大きいので、勝ちたい欲求なのかな。「負けたくない」は守りに入ってると思いますが、守るものもないし、負けたくないという立場でもないですし。そういう気持ちの時もあったと思いますが、でも「勝ちたい」でやれているのかなと思います。

地元記念6連覇

Q:それこそ地元(防府)記念6連覇は勝ちたいという感情が大きいでしょうか?

防府記念に関しては「勝ちたい」とかではなく「優勝しかない」と思って挑んでいます。全部それで走れと言われたらぐうの音も出ないですけど……7連覇までは頑張りたいなと思ってます。そこから先はわからないかな(笑)

防府記念って4日制なんですが、1週間くらいに感じるんですよね。自分で自分に「絶対獲る」とプレッシャーをかけているので疲れるんです(笑)

Q:「勝つしかない」レースで勝つのと「勝ちたい」レースで勝つのとは気持ちも違いますよね。

そうですね。防府記念での勝利は「安堵」って感じです。初めてタイトルを獲った時は「よっしゃー!」がありますが、防府は「ふう……」ってなりますから。それだけ自分自身にプレッシャーをかけている開催です。

Q:それでちゃんと勝てていることが実力を示しているなと思います。

今年はずっと人の後ろで、ラインに助けられたと思います。でも防府記念を走る時って……何か違いますね。

Q:今回は玉野競輪場で開催されましたが、それでも?

そうです。普段玉野で走ってる時とは別の感覚でした。捉え方が違うんでしょうね。

でも、玉野はナイターでしか走ったことがなかったからかも?新しくなってからはナイターしか経験がなかったんですよね。そのせいかも(笑)

カムバック、グランプリ

Q:KEIRINグランプリ2023出場がほぼ確定となった時、どのような感情でしたか?

嬉しい気持ちはすごくありました。でもまだ開催中だったので、あまり気持ちを悟られないようにしていましたね。それこそボーダーの選手がいますから。でもやっぱり、内心は嬉しかったです。ホッとした方が大きかったかもしれません。

Q:今年の中盤以降、調子が安定してきた印象です。

オールスター(8月)と共同通信社杯(9月)は勝ち上がりを全部人の後ろで走らせてもらいました。後輩が強く、そこに乗っていけた感じだと思います。後輩のおかげです。

Q:犬伏湧也選手や太田海也選手など、若手が出てきていますね。

地区全体が盛り上がりますね。勝ち上がる人数が多くなればラインの厚みも変わります。準決勝までくれば2車と3車でだいぶ違うし……そういった部分で力強さ、盛り上がりを感じています。そして自分もそう思ってもらえる自力になりたいという思いもあります。

Q:現在29歳。ご自身の戦法についてはどのように考えていますか?

後輩がいれば、実際自分より強い自力選手なので前を任せていることが多いです。でも後々は自分が前を走れるようになりたいなと思っています。お世話になりっぱなしじゃなくて、それくらいの力をつけていかなければいけないという気持ちはあります。

今のところ、戦法チェンジを考えてはいません。前を任せることが増えたからそのまま自力はフェードアウト……ということはなく、どちらかといえば自力が好きですから。

グランプリに出た人だけの特権

清水裕友, KEIRINグランプリ2021 静岡競輪場

Q:KEIRINグランプリ2023は楽しみですか?

楽しみです!グランプリに向け、良い感じに練習ができているところです。不安要素は今のところなく、楽しみの方が大きいですね。今は緊張より楽しみが大きくて、早く走りたいです。

新型コロナの規制も撤廃されるようになって、お客さんもたくさんいらっしゃると思います。そういう中で走ることが楽しみです。

Q:順当にいけば松浦選手と組むかと思います。

まだ前後については話せていません。遅くても前夜祭(19日)では会えるので、そこで自分がどうしたいかを話していくかなと思います。

松浦悠士, 競輪祭 特別選手紹介, 小倉競輪場

松浦悠士

↓前夜祭にて並びが発表された

【前夜祭】KEIRINグランプリ2023 出場選手のコメント・並び予想

Q:そういうのって、結構じっくりディスカッションするものなんでしょうか?

いえ、「俺はこうしたい」「俺はこうしたい」「そんならこうしよう」「オッケー」みたいな感じで、そんなにじっくりにはならないです。じっくり話した時もありましたが、基本的にはパッと決まります。

Q:グランプリの発走機、いざその場に来ると緊張するものでしょうか?

緊張はします。「すごいお客さんいるわ〜」みたいな……緊張ではありますが、グランプリでしか味わえない、独特の緊張感です。これは出ないとわからないものだと思います。

これは本当に、出た人の特権だなと思っています。初めてグランプリに出た時は体がゾワっとしました。

Q:アドレナリン?ですかね?ゾーンに入る?

ゾーンに入る、ではないですね。とにかくすごくて、お客さんに圧倒されるんです。なんて言えばいいかわからないですが……アドレナリンが近いのかな、ゾワっときて、ビビる感じではないです。グランプリでしか味わえない感情で、それを毎回味わっています。楽しみです。

Q:そんな中で勝ってしまったあかつきには……

もうヤバいでしょうね!どうせ走るんなら、笑いたいですね。

立川競輪場 KEIRINグランプリ2019 前検日

Q:ライバル選手は気になりますか?

今のところは相手が云々より、とにかく自分のことで精一杯です。脚力が劣っていますから、自分の力の底上げがまず第一です。1ヶ月で埋まるものでもないとは思っていますし、今は相手が云々ではないです。

Q:改めて、グランプリに向けての気持ちを聞かせて下さい。

前後は分かりませんが、松浦さんと連携することにはなると思います。ラインでどっちかが優勝したいです。ラインの勝利が自分の勝利と思えるように頑張りたいですね。

これまでのグランプリでは出渋ったりすることもありました。今年はそういうことがないようにしたいです。ラインで優勝を狙います。

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