本当に“今”が大切

渡邉一成

新シーズン、新たな目標はありますか?

オリンピック出場へのポイント取りが始まるシーズンだし、世界と戦わなければならないけど、その前に日本のチーム内でも戦わなければいけないですよね。もちろん今年の世界選手権ではメダリストを目指します。自分はもっと挑戦できる位置にいるし、脚力的に他の選手に劣る部分は無いという手応えを掴んだので、もっと勝負しなくてはいけないと思っています。

本当に“今”が大切で。シーズンインするまで1つ1つのトレーニングが大切なんです。トレーニングっていうのは、練習だけじゃなく全ての事が大切だと思っています。

選手育成のシステム化

男子ケイリン決勝

渡邉選手は現在34歳、トラック競技の選手はピークが人によって大きく違うような気がしますが?

それはありますね。でも違いは環境によってもあると思います。下の世代がどんどん突き上げてくるような人材が豊富な国は、トレーニング方法が確立されていて若い選手が走っても強いと思っています。

日本はまだトレーニング方法が成熟していないので、ナショナルチームの現行メンバーが強い。ナショナルチームのメンバーではない若手は、自己流のトレーニングをしています。ですので現行メンバーを脅かす存在になりきれていません。まあだからこそ僕の年代でも頑張れるんだと思います。

ナショナルチームのメンバーは今が最高の状態ということでしょうか?

そういうことになりますね。

現在ナショナルチームの男子短距離で若手だと、板倉玄京、森川康輔選手の2人ですね。海外のチームと比べると少ないでしょうか?また海外と比較し、2人の育成には時間が掛かりそうなのでしょうか?

若手の人数は少ないと思います。育成に関しては短期登録で競輪に来ているジョセフ・トルーマンなんて去年くらいからポッと出てきて、今やイギリスの代表チームで中心選手になっているじゃないですか。去年初めて名前を見て、今年は中心になってしまう。日本にはない形なので、日本はまだ選手育成がシステム化してない状況なのかなって思いますね。

Joseph Truman (GBR)

Joseph Truman (GBR)

渡邉選手がナショナルチーム入りしたのは2004年だから、もう14年。そういうシステムが無い中でも、個人で積み上げて来た訳ですよね。そういう中で、しっかりとしたシステムがある所から上がってくる選手を見ると、歯がゆい思いはありますか?

ありますね。でもキャリアが長いからこそ、一緒に走っていた選手がコーチになって、その人から目をかけてもらったり、アドバイスもらったりしてきましたから。ジェイソン(ジェイソン・ニブレット:短距離アシスタントコーチ)なんかそうですね。

Jason Niblett

Jason Niblett

ジェイソンコーチとは同じ34歳ですね。お互いの、今の立場に不思議な感覚はありますか?

不思議というよりも、そういう土壌だからまだ頑張れているって感じです。ただ、もっと若い頃に良いコーチの元で良質なトレーニングが出来ていれば現状は違ったかもしれない、というのは痛感しています。

マイアミ合宿ではジェイソンコーチが「一成は凄い」って言っていました。ゲラゲラ笑いながら「この歳であそこまで追い込まれたくない」って。お二人は仲が良いのでしょうか?

デニス・ドミトリエフ 新田祐大

彼との関係は長いので(笑)ジェイソンが現役時代に国際競輪(現在の短期登録制度の前身)で日本に来た時、凄く良くしてくれました。リオオリンピックに行った時も、すごい気にかけてくれてアドバイスをくれたり。今もチームの選手に気を遣ってくれるし、ブノワコーチと選手との関係を取り持ったりとか、バランスを取ってくれています。

海外に勝つには、日本の良い所を出すしかない