慎詞の律儀さが運を掴んだ

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最初の2回で打ちのめされた マディソン

Q:窪木選手がスクラッチでメダルを獲り、今村選手がオムニアムでメダルを獲り、メダリストペアで迎えたマディソンでした。

「2人は絶頂期!テンションアゲアゲ!自分も周りも『いけるぞ!』」って感じでしたね。

Q:実際走ってみて、いかがでしたか?

オリンピック前ということもあり、過去にないレベルだったと思います。1回目のスプリント周回から獲りに行くと意気込んでいましたが、1回目も2回目もポイントが獲れなかった。あそこで獲れていたら、自信がついて全然違う結果になっていたと思います。他国チームが持っているような「よし行ける!」という感じを、僕らも持てていたと思います。

2022ネーションズカップ

過去に良い結果に終わったレースでは「序盤は休み休み、後半で脚を使って行く」という戦略でした。「もうそれはできるようになったから、次からはスプリントを獲ってからラップ勝負」とレベルを変えて挑んだのが、今シーズンのネーションズカップ。5位とか7位とかに終わりながらも、交代の失敗がなくなればもっと良いところに行けた、という手応えもありました。

しかし今回は最初の2回のスプリントで打ちのめされ、体力も削られました。実力が足りていません。

Q:改めてですが、マディソンは楽しいですか?

楽しいです。でも勝負ができているから楽しい、というのはあると思います。短距離で言うなら、ハロン(スプリント予選の200mFTT)で敗退してしまうと何にも楽しくないでしょうが、太田海也みたいに快進撃を繰り広げていたら絶対に楽しいですよ。

勝った後の楽しそうな顔の太田海也

マディソンは2人で戦う種目であり、ロードレースのトップ選手も出場する、ヨーロッパでは花形の種目です。そこでちょっとでも活躍できた過去があるし、「もう1回あの時を」という思いもある。

今回の平均時速は(ネーションズカップで)銀メダルを獲った時とあまり変わらなかったので、組み立ての問題もあったと思います。でもあのキツさ、スピード感を体が覚えていますね。今この瞬間も、会場のざわめきや周りの選手の荒い呼吸も含め、思い出せます。「もう苦しい、今村、交代!」みたいな。

Q:どのあたりからもうキツかったのでしょう?

100周前くらいかな……半分行く時には既にキツかったです。中途半端に強いチームの後ろが1番脚を使います。もう1個前なら全然違うのですけれど、体力がなくて、そこに入り込むことが難しいですね。

まず、交代のところで前に上がれない。僕自身スプリントに自信がありますし「残り1周半(今村から僕への交代)のところで前にいてくれたら絶対5点(1着通過ポイント)獲れる自信がある」と言っていましたが、なかなか難しい。キツかったですね。

前半を潜んでから後半勝負というやり方ならば、もうちょっとポイントが獲れたとは思います。でもメダルを狙いに行くなら、他のチームがやっているような戦い方をしなければならない。前で攻めていく、という走りをしたかったです。

「あいつらに負けたことが悔しい!」

Q:1段階上のレース&結果を狙った結果、というわけですね。とはいえ良い種まきにはなったのではないでしょうか。

そう思います。今回のレースでの悔しさが刻み込まれています。ただ、意外にもオリンピックに向けた”焦り”はあまりありません。世界選手権が終わってから、すごく練習に身が入っています。「あいつらに負けたことが悔しい!」という気持ちでいっぱいですね。

Q:どこをどう直せば、ということは見つかっていますか?

まだしっかりとした振り返りができていないのですが、まずは体力を上げること。そして数少ない残りレースで技術を磨くことです。映像を見てレースを振り返って、次に活かします。

冬の取り組み方が大事になると思います。1月の沖縄合宿などのトレーニングにしっかり励んでいきたいです。

Q:パリオリンピックに向けて、狙っている種目はマディソンとチームパシュートということで良いですか?

はい、でもオムニアムも狙いたいと感じました。今村が銅メダルを獲れたことで「日本人にもチャンスがあるじゃん!」と思っちゃったんです。マディソンは思うような結果にならず、チームパシュートも現在地はわかっている。「そうなると、メダルを獲るならオムニアムじゃん?」って。ネーションズカップでの成績も僕が一番良かったですし……

僕が野心を持っていることで今村にも対抗意識が生まれるだろうし、オムニアムを狙っていくことで、マディソンの成績にもつながると思います。改めて「パリに出たい」と思うようになりましたね。

野心家、窪木

Q:チーム最年長がこの野心。

でも3種目全部に出るのは、体力的にもちょっとキツいかも……今回の世界選手権では、マディソンオンリーの選手も多かったんですよね。とはいえオリンピックでは4人までしか出られないから、どうしても複数種目に出る選手が出てきます。どうなるのか分かりませんね。

とはいえ、これからの国内選考のためにアピールしていかなくてはいけません。まだまだ安心できないです!

Q:次のオリンピックで区切りにするなど、そういった部分は決めていますか?

う〜ん、まだわからないですね……ロードの入部正太朗選手は同級生で高校から一緒にやってきた仲間なんですが、彼のお父さんは競輪のフレームビルダーなんです。だから彼自身も競輪をよく知っていて、競輪をギャンブルとして楽しむ人でもあり、その一方で海外レースにも出場するロードレース選手でもあります。

そんな彼が「窪木が競輪選手としてどこまでやれるのか、俺たちロードの人間は注目してる」と言ってくれたんです。「お前、残すはG1やKEIRINグランプリしかないやろ」「そうか、じゃああとは頼むな」みたいな話をしたこともあり、競輪選手に専念する道もありかなと思いつつ……

でも頑張れば、次のロサンゼルスオリンピックも出場できるんじゃないかなと思う自分もいます。

2019全日本ロードで優勝した入部正太郎

Q:ロスの頃にはもうアラフォーでしょう(38歳)!

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